「障害者を雇いたいが、車いす対応のトイレ改修や通路拡幅にかかるコストが心配…」「専用の機器や設備を導入したいけれど、初期費用が大きすぎて踏み出せない…」そんな悩みを持つ経営者・人事担当者の方はいませんか。
実は、障害者が安心して働ける職場環境を整えるために施設や設備を整備した場合、その費用の3分の2(2/3)を最大4,500万円まで助成してくれる制度があります。それが「障害者作業施設設置等助成金(第1種)」です。
本記事では、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が実施するこの助成金の概要から対象要件、支給額、申請の流れまで、西宮の社労士がわかりやすく解説します。
障害者作業施設設置等助成金(第1種)とは?
障害者作業施設設置等助成金(第1種)は、「障害者雇用納付金制度」に基づき、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が実施する助成金制度です。
障害者を常用労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主が、その障害者が障害を克服し作業を容易に行えるよう配慮した施設の設置・整備、または設備の設置・整備を行った場合に、費用の一部を助成します。
障害者雇用促進法では、一定規模以上の企業に障害者の法定雇用率達成が義務づけられています(令和8年度の民間企業の法定雇用率は2.5%)。しかし「職場環境の整備にコストがかかる」「どこに補助を求めればよいかわからない」という事業主も少なくありません。本助成金はそうした課題に応える重要な支援策です。
対象となる事業主の要件
以下のいずれかに該当する事業主が対象です。
- 障害者を新たに常用労働者として雇い入れ、その障害者のために施設・設備を設置・整備する事業主
- 既に常用労働者として雇用している障害者のために施設・設備を設置・整備する事業主
なお、雇用される障害者は雇用保険の被保険者(または被保険者となる予定の者)である必要があります。業種・規模を問わず申請できますが、詳しい要件はJEEDの都道府県支部へご確認ください。
対象となる障害者
本助成金の対象となる障害者は、以下のいずれかに該当する方です。
- 身体障害者(身体障害者手帳所持者)
- 知的障害者(療育手帳所持者等)
- 精神障害者(精神障害者保健福祉手帳所持者)
- 発達障害者
- 高次脳機能障害者
- 難治性疾患患者(特定疾患医療受給者証等所持者)
対象の障害者が常用雇用労働者(雇用期間の定めのない労働者、または1年以上の雇用が見込まれる労働者)として雇用されていることが要件となります。
助成対象となる施設・設備(具体例)
助成の対象は大きく「作業施設・附帯施設」と「作業設備」の2種類に分かれます。
【作業施設・附帯施設の具体例】
- スロープ・手すりの設置(段差解消)
- 通路・出入口・ドアの拡幅(車いす対応)
- 車いす対応トイレの設置・改修
- エレベーター・昇降機の設置・改修
- 視覚障害者用誘導ブロック(点字ブロック)の設置
- 聴覚障害者向けフラッシュライト・緊急通報装置の設置
- 障害者専用休憩室・更衣室・洗面所等の附帯施設整備
- 施設の防音工事(精神・発達障害者への配慮)
【作業設備の具体例】
- 専用コンピュータ(音声出力機能付きPC等)・周辺機器
- 業務用電動車いす・作業用車いす
- 拡大読書器・点字ディスプレイ(視覚障害者向け)
- 音声認識ソフトウェア・文字変換ソフト
- スクリーンリーダー(視覚障害者向け)
- コミュニケーション支援機器(重度障害者向け)
- 障害特性に配慮した専用機械・工具・器具
対象となる施設・設備は障害者の障害種別・程度に応じて異なりますので、事前にJEEDの担当窓口または社会保険労務士へご相談ください。
助成率と支給限度額
助成率は設置・整備費用の3分の2(2/3)です。支給の限度額は施設・設備の種類によって異なります。
【作業施設・附帯施設の場合】
- 支給対象障害者1人につき:最大450万円
- 1事業所あたりの上限:4,500万円
【作業設備の場合】
- 支給対象障害者1人につき:最大150万円
- 在職中に障害を負った中途障害者の場合:1人につき最大450万円
【計算例】車いすを使用する従業員のためにトイレ改修工事(費用600万円)を行った場合
→ 助成額 = 600万円 × 2/3 = 約400万円
なお、複数の障害者のために同時に施設を整備した場合は、人数分の限度額が適用されます(ただし1事業所あたり4,500万円が上限)。
申請の流れ
本助成金は事前申請制(着工前申請必須)です。施設・設備の設置・整備を始める前に認定申請を行わなければなりません。
- 認定申請(施設設置等の着工前)
施設・設備の設置等を開始する前に、管轄のJEED都道府県支部(高齢・障害者業務課)に認定申請書を提出します。
※障害者を新たに雇い入れる場合は、雇い入れ日の翌日から起算して6か月以内に申請 - 審査・認定
提出書類の内容が審査され、要件を満たす場合は認定されます(審査期間:約1〜2か月)。 - 施設・設備の設置・整備
認定を受けた後、認定日から1年以内に施設・設備の設置・整備を完了させます。 - 支給申請(設置完了後)
設置・整備完了後、費用の支払いが確認できた時点でJEED都道府県支部に支給申請書を提出します。 - 支給決定・支払い
審査後、要件を満たしていれば助成金が支給されます。
申請書類は管轄するJEED都道府県支部への持参・郵送のほか、e-Gov電子申請サービスによる電子申請にも対応しています。
申請にあたっての注意点
- 事前申請が必須:施設・設備の設置等を開始する前に認定申請が必要です。着工後の申請は認められません。
- 1年以内の完了期限:認定日から1年以内に施設の設置・整備を完了する必要があります。
- 見積書・設計図等の書類準備:申請には工事の見積書や施工図面等が必要です。施工業者との調整を早めに行いましょう。
- 雇用継続義務:助成金受給後も、一定期間(通常2〜3年)対象障害者の雇用継続が求められます。
- 維持・修繕費は対象外:本助成金は設置・整備費用のみが対象で、完成後の維持・修繕費は含まれません。
- 他の補助金との重複制限:他の補助金・助成金と同一設備・施設への重複適用には制限がある場合があります。事前に確認が必要です。
まとめ
第1種作業施設設置等助成金は、障害者が安心・安全に働ける職場環境を整備したい事業主にとって、非常に心強い支援制度です。設備・施設整備費用の2/3・最大4,500万円という高い助成水準は、障害者雇用に伴うコスト面での課題を大きく解消します。
ただし、着工前の事前申請が必須であり、書類の準備や審査に時間がかかるため、障害者雇用・施設整備を検討されている方は、なるべく早い段階から計画を立て、社会保険労務士やJEEDの都道府県支部へご相談されることをお勧めします。
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