はじめに:来週から最低賃金が変わります
令和8年(2026年)10月1日から、兵庫県の最低賃金が時給1,172円に引き上げられます。改定前(1,116円)から56円の引き上げとなり、50円を超える大幅な引き上げは3年連続です。
来週から施行される改正ですが、「もうパート・アルバイトの時給を見直しましたか?」「月給制の社員も最低賃金を下回っていないか確認しましたか?」西宮市の社会保険労務士・武田が、経営者・人事担当者向けにわかりやすく解説します。
令和8年度 兵庫県最低賃金の改定概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改定後の最低賃金 | 時給 1,172円 |
| 改定前(令和7年10月4日〜) | 時給 1,116円 |
| 引き上げ額 | 56円 |
| 引き上げ率 | 約5.0% |
| 適用開始日 | 令和8年(2026年)10月1日 |
| ランク区分 | Bランク(56円引き上げ目安通り) |
56円の引き上げは、目安制度が始まった昭和53年度以降で2番目の高さです。継続的な物価上昇への対応と、地域における人材確保・生活支援のバランスを考慮した決定となっています。
令和8年度 全国の最低賃金状況
全国47都道府県でも同様に最低賃金が引き上げられました。
| 区分 | 金額 | 前年比 |
|---|---|---|
| 全国加重平均 | 1,177円 | +56円 |
| 最高額(東京都) | 1,280円 | — |
| 最低額(宮崎県等) | 1,085円 | — |
引き上げ額は47都道府県で54〜65円の範囲となっています。政府は「遅くとも2030年代前半のできる限り早期に全国平均1,500円を達成する」という方針を掲げており、今後も賃上げの流れは続く見通しです。
近畿地方の最低賃金比較(令和8年度)
| 都道府県 | 最低賃金(時給) | 発効日 |
|---|---|---|
| 大阪府 | 1,231円(近畿最高) | 令和8年10月1日 |
| 京都府 | 1,180円 | 令和8年10月1日 |
| 兵庫県 | 1,172円 | 令和8年10月1日 |
兵庫県は近畿圏で3番目の水準です。西宮市・神戸市など阪神間の企業にとって、大阪と僅差の賃金水準への対応が求められます。近隣府県と人材を競争する立場からも、最低賃金を上回る賃金体系の整備が重要です。
最低賃金が適用される労働者の範囲
最低賃金は、雇用形態や職種に関わらず、兵庫県内で働くすべての労働者に適用されます。
- 正社員・契約社員・嘱託社員
- パートタイム・アルバイト
- 派遣労働者(派遣元・派遣先ともに責任あり)
- 日雇い労働者
- 試用期間中の労働者(原則として適用あり)
適用除外となるのは、精神または身体の障害により著しく労働能力が低い方(都道府県労働局長の許可が必要)など、ごく限られた場合のみです。「うちはバイトだから関係ない」は間違いです。
兵庫県特定(産業別)最低賃金との関係
兵庫県には製造業等の特定業種向けに「特定(産業別)最低賃金」が設定されています。しかし令和8年10月1日以降は、地域別最低賃金(1,172円)が特定最低賃金のほとんどを上回るため、対象業種の事業所であっても地域別最低賃金(1,172円)以上を支払えば問題ありません。
令和8年度の特定最低賃金は秋以降(10〜12月頃)に順次審議・改定・発効予定です。改定後は地域別最低賃金(1,172円)を上回る業種が出てくる可能性もありますので、鉄鋼業・輸送用機械器具製造業・電気機械器具製造業などに該当する事業所は、兵庫労働局の情報を随時ご確認ください。
月給・日給制の社員も要確認!時給換算の方法
最低賃金は時給制だけでなく、月給・日給・出来高払いの労働者にも適用されます。月給の場合は以下の計算式で時給換算して確認します。
時給換算額 = 月額賃金 ÷ 1ヶ月の平均所定労働時間
(例)月給200,000円、1日8時間・週5日・年間所定労働日数240日の場合
- 月平均所定労働時間:240日 × 8時間 ÷ 12ヶ月 = 160時間
- 時給換算:200,000円 ÷ 160時間 = 1,250円 → 1,172円以上なのでOK
最低賃金の計算から除外する賃金(算入しない賃金):精皆勤手当・通勤手当・家族手当、時間外・休日・深夜割増賃金、賞与等1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金、臨時の賃金(結婚祝い金等)。
これらを除いた「基本給+毎月支払われる固定手当」の合計が1,172円以上か確認してください。特に交通費込みで時給を設定しているパートは要注意です。
10月またぎの給与計算における注意点
給与計算期間が9月と10月にまたがる場合、適用される最低賃金が異なります。
| 労働日 | 適用最低賃金 |
|---|---|
| 令和8年9月30日以前の労働分 | 旧最低賃金:1,116円 |
| 令和8年10月1日以降の労働分 | 新最低賃金:1,172円 |
例えば「9月16日〜10月15日」が締め日の場合、9月分・10月分をそれぞれ分けて計算して確認します。給与計算ソフトを利用している場合は、最低賃金の設定を10月分計算から1,172円に変更してください。
最低賃金違反の罰則
最低賃金を下回る賃金を支払った場合は、最低賃金法違反として50万円以下の罰金が科せられます(最低賃金法第4条・第40条)。
また、最低賃金を下回る額の賃金を定めた労働契約は、その部分については無効となり、最低賃金額と同額の定めをしたものとみなされます(最低賃金法第4条第2項)。違反していた期間の差額を遡って支払う義務が生じ、元従業員からの差額請求(未払い賃金)につながるリスクがあります。
企業が今すぐ行うべき5つの対応
- 全従業員の時給・月給を確認:パート・アルバイトはもちろん、月給社員も換算して1,172円以上か確認する
- 10月1日以降の給与からすぐに反映:1,172円未満の方は、10月1日労働分から新しい賃金を適用する
- 給与計算ソフトの設定変更:最低賃金のチェック設定があれば1,172円に更新する
- 雇用契約書・労働条件通知書の更新:時給を改定した場合は変更後の賃金を明示した書面を交付する
- 就業規則・賃金規程の見直し:最低賃金を下回る規定がある場合は速やかに改定する
最低賃金引き上げを支援する「業務改善助成金」の活用を
最低賃金の引き上げに伴い人件費が増加する中小企業・小規模事業者には、業務改善助成金の活用をおすすめします。
業務改善助成金は、生産性を向上させる設備投資(機械・器具の購入、ICTシステム導入、コンサルティング受診等)を行い、事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げた場合に、設備投資費用の一部(最大9/10)が助成される制度です。引き上げ額・対象労働者数によって異なりますが、最大600万円の助成を受けることができます。
「賃上げしたいけれど原資が心配」という経営者の方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
まとめ
令和8年10月1日から兵庫県の最低賃金が1,172円(現行比+56円)になります。施行まで1週間を切っており、今すぐ対応が必要です。
- パート・アルバイトの時給が1,172円以上か確認する
- 月給制の社員も時給換算して確認する
- 10月1日以降の労働分から新賃金を適用する
- 給与計算ソフトの設定を更新する
- 雇用契約書・就業規則を必要に応じて改定する
「自社の賃金が最低賃金を下回っていないか不安」「業務改善助成金を活用して賃上げの原資を確保したい」という方は、西宮市の社会保険労務士・武田事務所にお気軽にご相談ください。




