「障害者を採用したいが、職場に溶け込めるか不安」「採用後の定着支援をどうすればいいかわからない」——そんな悩みを抱える事業主の方に活用してほしい助成金があります。
訪問型職場適応援助者助成金は、ジョブコーチ(職場適応援助者)が障害者の職場に直接出向き、障害者本人と事業主・上司の両方を支援した際に、その活動費用の一部を助成する制度です。高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が運営しており、障害者雇用を積極的に進める支援機関にとって有効な制度です。
- 対象:訪問型ジョブコーチ(職場適応援助者)を配置している社会福祉法人等
- 支給額:1回の支援が4時間未満→1日9,000円、4時間以上→1日18,000円(上限36,000円/日)
- 支給期間:最長1年8か月(精神障害者等は最長2年8か月)
- 申請先:高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の各都道府県支部
1. ジョブコーチ(職場適応援助者)とは?
ジョブコーチとは、障害者の雇用・職場定着を支援する専門家のことです。障害者が新しい職場にスムーズに適応できるよう、実際に職場へ出向いて障害者本人・事業主(上司や同僚)双方にきめ細かな支援を行います。
ジョブコーチが行う主な支援内容
- 障害者本人への支援:業務遂行のコツを個別指導、コミュニケーションの取り方をアドバイス
- 事業主・職場への支援:障害特性に合わせた業務の切り出し・割り振りの提案、合理的配慮の実施方法の助言
- 家族への支援:家族と連携し、生活面の安定と就業継続をサポート
- ケース会議への出席:地域障害者職業センターが主催するケース会議に参加し、支援の方向性を調整
2. 訪問型と企業在籍型の違い
ジョブコーチには「訪問型」と「企業在籍型」の2種類があります。本記事で解説する訪問型は、社会福祉法人や支援機関などの外部組織に所属するジョブコーチが事業主の職場に出向いて支援を行うタイプです。
| 種類 | ジョブコーチの所属 | 特徴 |
|---|---|---|
| 訪問型 | 社会福祉法人・支援機関等 | 外部の専門家が職場へ訪問して支援。事業主側の負担が少ない |
| 企業在籍型 | 雇用する企業内 | 企業内でジョブコーチを養成・配置。内部体制の構築に向く |
3. 助成金の対象となる法人の要件
訪問型職場適応援助者助成金は、ジョブコーチを派遣する支援法人が申請します(障害者を雇用する事業主ではなく、支援機関側が受け取る助成金です)。
対象となる支援法人の主な要件
- 社会福祉法人、NPO法人など法人格を有する組織であること
- JEEDが実施する訪問型ジョブコーチ養成研修の修了者を配置していること
- 障害者雇用促進事業(就労移行支援、就労定着支援等)を行っていること
- 障害者雇用の実績があること
ジョブコーチ(職場適応援助者)の要件
- JEEDまたは厚生労働大臣が指定する訓練機関が実施する訪問型職場適応援助者養成研修の修了者であること
- 支援法人に雇用されている(または役員・代表者である)こと
- 障害者の雇用支援業務に1年以上の従事経験があること
4. 支援を受けられる事業主・障害者の要件
ジョブコーチ支援を受ける側(障害者を雇用する事業主)と支援を受ける障害者についても、それぞれ要件があります。
支援対象事業主の要件
- 支援を実施する法人以外の事業主(支援法人が自社の障害者に使うことは不可)
- 支援対象の障害者を支援開始から2か月以内に雇用予定、または既に雇用中であること
- 雇用保険の適用事業主であること
支援対象障害者の要件
- 法人役員・学生を除く者
- 週所定労働時間10時間以上で就労予定・就労中であること
- 身体障害者・知的障害者・精神障害者・発達障害者・難病患者・高次脳機能障害者など、JEEDが認める障害のある方
- 地域障害者職業センターが作成した職業リハビリテーション計画において、訪問型ジョブコーチ支援が必要と判断された方
5. 支給額と支給期間
支給額は1日あたりの支援時間に応じて決まります。
| 1日の支援時間 | 支給額(1日あたり) |
|---|---|
| 4時間未満(精神障害者等は3時間未満) | 9,000円 |
| 4時間以上(精神障害者等は3時間以上) | 18,000円 |
| 1日あたりの上限 | 36,000円(複数訪問等の場合) |
支給期間
- 支援開始から最長1年8か月(身体障害者・知的障害者等)
- 精神障害者・発達障害者等は最長2年8か月
また、ジョブコーチを養成するための研修費用についても別途助成される場合があります。最新の支給額・上限については、JEEDの令和7年度パンフレットでご確認ください。
6. 申請手続きの流れ
訪問型職場適応援助者助成金の申請は、支援法人(ジョブコーチを派遣する側)が行います。大まかな流れは以下のとおりです。
- 受給資格認定申請:支援開始前に、管轄するJEED都道府県支部に受給資格認定申請書(様式第6号)を提出する
- 支援計画書の策定:対象障害者・事業主と協議し、訪問型支援計画書を作成する
- ジョブコーチ支援の実施:計画に基づき職場へ訪問し、障害者・事業主・家族への支援を実施。支援記録票を作成する
- フォローアップ計画書の策定:集中支援終了後、フォローアップ計画書を作成して継続支援に移行する
- 支給請求書の提出:支援終了後、必要書類(支給請求書・様式第8号等)をJEED都道府県支部に提出する
- 審査・支給決定:JEEDによる審査の後、助成金が支給される
申請書類はe-Gov電子申請サービスでも提出可能です。また、持参・郵送の場合は様式・添付書類各3部(その他は2部)が必要です。
7. 社労士からのアドバイス
訪問型職場適応援助者助成金は、障害者を雇用する事業主ではなく、支援法人(就労移行支援事業所等)が申請する珍しい構造の助成金です。そのため、障害者を雇用したい事業主の方は「この助成金を使いたい」と思っても、直接申請することはできません。
ただし、事業主として取るべきアクションはあります。
- 地域障害者職業センターやハローワークに相談する:支援が必要な障害者の採用を検討している場合、まずここへ相談することでジョブコーチ支援につながります
- 就労移行支援事業所・就労定着支援事業所と連携する:訪問型ジョブコーチを配置している支援機関と日頃から関係を構築しておくことで、スムーズに支援を受けられます
- 障害者雇用促進のための制度全体を把握する:この助成金のほかにも、事業主が直接申請できる障害者雇用関連の助成金(特定求職者雇用開発助成金・職場介助者配置助成金等)もあります。複数の制度を組み合わせて活用することが重要です
西宮市・阪神エリアで障害者雇用の推進を検討している事業主の方は、ぜひ当事務所へご相談ください。ジョブコーチ支援の活用を含め、自社に合った制度の活用方法をアドバイスします。
まとめ
- 訪問型職場適応援助者助成金は、ジョブコーチが職場へ出向き障害者・事業主を支援した際に、支援法人に支給される助成金
- 支給額は1日9,000円〜18,000円(上限36,000円)、期間は最長1年8か月〜2年8か月
- 支援を受けたい事業主は、地域障害者職業センターや就労移行支援事業所を通じてアクセスできる
- 事業主が直接申請できる助成金(特定求職者雇用開発助成金等)と組み合わせて活用することが効果的
- 詳細はJEED各都道府県支部または当事務所へご相談ください




