「DXを推進したいが、社内に必要なITスキルを持つ人材がいない」「新規事業を始めたいが、従業員の育成コストが心配」——そんな悩みを抱える経営者の方に、ぜひ知っておいていただきたい助成金があります。
それが「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」です。この制度は、新事業展開・DX推進などに伴って従業員をリスキリング(学び直し)させる際の訓練経費・賃金の一部を国が助成してくれる制度です。中小企業なら訓練経費の最大75%が補助されます。
また、令和8年度(2026年度)が最終年度となっているため、活用を検討している方は早めに準備を始める必要があります。この記事では、西宮市・阪神エリアの中小企業の経営者・人事担当者向けに、制度の概要・支給額・申請の流れをわかりやすく解説します。
1. 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)とは?
人材開発支援助成金は、従業員のスキルアップを支援するための厚生労働省の助成金制度です。複数のコースがあり、その中の「事業展開等リスキリング支援コース」は、新規事業展開・DX推進・業態転換など、事業の方向性を変える際に必要なリスキリング訓練を支援するために設けられています。
「リスキリング」とは、従業員が現在の業務とは異なる新しいスキルを身につけることです。たとえば、以下のようなケースが対象になります。
- 製造業がEC事業に参入する際の、ECサイト運営・デジタルマーケティング研修
- 紙中心の業務からDXへの移行に伴う、ITリテラシー・クラウドツール活用研修
- 新規の介護・医療サービスを開始する際の専門資格取得支援
- 建設業がリフォームサービスを開始する際の技能習得訓練
令和8年3月の改正ポイント
令和8年3月2日からは、企業内の人事・人材育成計画に基づく訓練も助成対象に追加されました。また、長期にわたる訓練の場合に訓練途中段階での分割支給申請が可能になり、資金繰りの面でも使いやすくなりました。
2. どんな事業主が対象になる?
以下のいずれかの事業展開等に取り組む(または取り組む予定の)事業主が対象です。
- 新規事業の立ち上げ
- 既存事業の転換・多角化
- DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
- 新技術・新サービスへの対応
- 企業内の人事・人材育成計画に基づく戦略的な人材育成(令和8年3月〜)
なお、訓練を行う前に「職業訓練実施計画届」を管轄の労働局に提出する必要があります。訓練開始後に申請することはできないため、注意が必要です。
3. 支給額はいくら?
■ 経費助成(訓練費用の助成)
| 訓練時間 | 中小企業(助成率75%)限度額 | 大企業(助成率60%)限度額 |
|---|---|---|
| 10時間以上100時間未満 | 30万円 | 20万円 |
| 100時間以上200時間未満 | 40万円 | 25万円 |
| 200時間以上 | 50万円 | 30万円 |
■ 賃金助成(訓練中の賃金の一部助成)
| 区分 | 賃金助成額 |
|---|---|
| 中小企業 | 960円/1人1時間 |
| 大企業 | 480円/1人1時間 |
1事業所が1年度に受給できる助成額は最大1億円です。
計算例(中小企業・従業員5名・200時間の訓練の場合)
| 項目 | 金額(概算) |
|---|---|
| 訓練費用250万円(1人50万円×5名)×75% | 187.5万円(上限50万円×5名) |
| 賃金助成(960円×200時間×5名) | 96万円 |
| 合計助成額 | 約283万円 |
4. 申請の流れ・スケジュール
STEP 1:事業展開計画の策定
まず、どのような事業展開を行うのかを明確にします。訓練内容が事業展開と紐づいていることを示す書類が後で必要になります。
STEP 2:訓練計画の立案・計画届の提出(訓練開始1か月前まで)
訓練開始日の1か月前までに「職業訓練実施計画届」を管轄の都道府県労働局に提出します。電子申請(雇用関係助成金ポータル)での申請も可能です。
STEP 3:訓練の実施
計画に従ってOFF-JT(業務から離れて行う研修)を実施します。外部の研修機関への委託も可能です。最低10時間以上の訓練が必要です。
STEP 4:支給申請(訓練終了後2か月以内)
訓練終了日の翌日から2か月以内に支給申請書を提出します。長期訓練の場合は、訓練途中での分割申請も可能です(令和8年3月以降)。
STEP 5:審査・支給
労働局による審査後、助成金が支給されます。
5. 注意点・よくある間違い
① 訓練開始前に計画届の提出が必須
訓練開始後に申請することはできません。「研修が終わってから申請しよう」と思っていると受給できなくなりますので、必ず訓練開始の1か月前までに計画届を提出してください。
② 事業展開との関連性が必要
単なる能力向上訓練ではなく、新規事業・DX推進などとの関連性が求められます。訓練内容が事業展開と紐づいていることを示す書類の準備が必要です。
③ 令和8年度(2026年度)が最終年度
このコースは令和8年度(2026年度)をもって廃止される予定です。令和9年(2027年)以降は「人材育成支援コース」などへの移行が予定されています。2026年度中に取り組みを開始することが重要です。
④ 訓練時間は最低10時間以上
10時間未満の訓練は助成対象外となります。訓練カリキュラムを組む際は時間数に注意してください。
6. 他のコースとの違い
| コース名 | 特徴・対象 |
|---|---|
| 事業展開等リスキリング支援コース | 新規事業・DX推進に伴うリスキリング訓練。2026年度最終。 |
| 人への投資促進コース | デジタル人材・高度人材の育成、自発的な学習支援 |
| 人材育成支援コース | 職務関連の一般的な訓練(OJT付き訓練含む) |
| 教育訓練休暇等付与コース | 有給の教育訓練休暇制度を導入した事業主を支援 |
7. まとめ:2026年度が最終年度、今すぐ申請準備を!
「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」は、DX推進・新規事業展開を考えている中小企業にとって非常に活用しやすい助成金です。
- DXを推進したいが社内人材のITスキルが不足している
- 新事業に参入するため従業員を新分野の研修に送りたい
- 訓練費用が高くて躊躇している
- 社内の人材育成計画に基づいて戦略的に育成したい
令和8年度(2026年度)が最終年度のため、今年度中に取り組みを開始することが必要です。申請手続きには事前の計画届が必要で、研修機関の選定や書類準備に時間がかかります。早めに社会保険労務士や労働局に相談されることをおすすめします。
当事務所(西宮市)でも、助成金申請のサポートを承っています。お気軽にご相談ください。




