建設業を営む中小企業の経営者・総務担当者の方から、「社内の技能者を計画的に育成したいが、長期間の訓練は費用がかかりすぎる」「組合や協会が実施する職業訓練を活用したいが、助成金があるか知りたい」というご相談をいただくことがあります。
そのような建設事業主の方にぜひ活用していただきたいのが、「人材開発支援助成金(建設労働者認定訓練コース)」です。この助成金は、職業能力開発促進法(能開法)に基づく「認定訓練」を従業員に受講させた中小建設事業主に対して、経費の一部と受講中の賃金の一部を助成する制度です。
賃金助成は1人1日あたり3,800円(要件を満たす場合は4,800円)、年間支給上限は1,000万円と手厚い内容です。
この記事では、西宮市の社会保険労務士が、令和8年度の人材開発支援助成金(建設労働者認定訓練コース)について、対象要件・助成内容・申請の流れをわかりやすく解説します。
人材開発支援助成金(建設労働者認定訓練コース)とは
人材開発支援助成金(建設労働者認定訓練コース)は、中小建設事業主が雇用する建設労働者に「能開法による認定訓練」を有給で受講させた場合に、訓練経費と受講中の賃金の一部が助成される制度です。
「認定訓練」とは、職業能力開発促進法に基づき都道府県知事の認定を受けた職業訓練のことです。業界団体や建設業協会等が実施する体系的・長期的な訓練が主な対象となります。個々の資格取得を目的とした短期の安全講習等を対象とする「建設労働者技能実習コース」とは別の制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 人材開発支援助成金(建設労働者認定訓練コース) |
| 対象者 | 中小建設事業主・中小建設事業主団体 |
| 賃金助成額 | 1人1日あたり3,800円(要件を満たす場合4,800円) |
| 年間支給上限 | 1,000万円 |
| 所管 | 厚生労働省(都道府県労働局・ハローワーク) |
認定職業訓練とは何か
このコースで対象となる「認定訓練」(正式名称:認定職業訓練)とは、職業能力開発促進法に基づき都道府県知事の認定を受けた職業訓練のことです。
建設業においては、主に以下のような訓練が認定訓練に該当します。
- 建設業協会・業界団体が実施する技能者育成訓練(鳶・型枠大工・左官・配管工等)
- 建設業の組合等が行う計画的な技術者育成プログラム
- 都道府県の認定を受けた職業能力開発校等での訓練
個々の資格取得(玉掛け技能講習、フルハーネス特別教育等)を対象とする「建設労働者技能実習コース」と異なり、認定訓練コースはより体系的・長期的な職業訓練を対象としています。
対象となる事業主の要件
建設労働者認定訓練コースを利用するためには、次の要件をすべて満たす必要があります。
- 中小建設事業主であること(資本金3億円以下または常時雇用労働者数300人以下の建設業者)
- 都道府県から認定訓練助成事業費補助金または広域団体認定訓練助成金の交付を受けていること
- 雇用保険の適用事業主であること
- 建設労働者に有給で認定訓練を受講させ、通常の賃金を支払っていること
- 雇用管理責任者を選任していること
なお、中小建設事業主団体(建設業の事業協同組合等)は経費助成のみ対象となり、賃金助成は受けられません。
助成の内容
① 経費助成
助成額の計算方法は次のいずれかです。
- 広域団体認定訓練助成金の支給額相当
- 認定訓練助成事業費補助金の助成対象経費の1/6相当額
これは、建設業が既存の都道府県補助制度(認定訓練助成事業費補助金等)を利用することが前提となっているためです。当該補助制度の支給を受けることで、同時に厚生労働省の経費助成も受けることができます。
② 賃金助成
認定訓練を受講した建設労働者1人1日あたり3,800円が支給されます。さらに、賃金向上要件等を満たす場合は1,000円が加算され、合計4,800円となります。
| 区分 | 助成額(1人1日あたり) |
|---|---|
| 基本助成 | 3,800円 |
| 賃金向上等要件を満たす場合(加算) | +1,000円 |
| 合計(加算あり) | 4,800円 |
年間支給上限額は1,000万円です(同じ制度の「建設労働者技能実習コース」の上限500万円の2倍)。長期・体系的な訓練を多くの従業員に実施する場合でも、手厚い助成を受けることができます。
申請の流れ
- 訓練実施計画届の提出:訓練開始日の1か月前までに、管轄の都道府県労働局へ「訓練実施計画届」を提出します。
- 認定訓練の実施:建設労働者を有給で認定訓練に参加させます。受講中は通常の賃金を支払います。
- 支給申請:訓練終了日の翌日から2か月以内に、必要書類を管轄労働局へ提出して支給申請を行います。
- 割増分申請(該当する場合):賃金向上等の要件を満たす場合は、支払日の翌日から5か月以内に割増分(1,000円加算分)の申請を行います。
申請先は事業所の所在地を管轄する都道府県労働局(人材開発担当部署)です。ハローワークではなく労働局への申請となる点にご注意ください。
建設労働者技能実習コースとの違い
同じ人材開発支援助成金の「建設労働者技能実習コース」と混同されることがありますが、対象となる訓練や助成額に大きな違いがあります。
| 比較項目 | 認定訓練コース | 技能実習コース |
|---|---|---|
| 対象訓練 | 能開法による認定訓練(体系的・長期的な訓練) | 技能講習・特別教育・技能検定等(個別の資格取得) |
| 都道府県補助 | 受けていることが要件 | 不要 |
| 年間上限額 | 1,000万円 | 500万円 |
| 経費助成率 | 対象経費の1/6相当 | 対象経費の最大3/4(75%) |
| 賃金助成 | 1人1日3,800円(最大4,800円) | 1人1日3,800円(最大4,800円) |
個別の安全講習や資格取得講習(玉掛け・フルハーネス等)を受講させる場合は「技能実習コース」、業界団体等が実施する体系的な職業訓練に参加させる場合は「認定訓練コース」が適しています。
まとめ
人材開発支援助成金(建設労働者認定訓練コース)は、能開法に基づく認定職業訓練を活用して建設技能者を計画的に育成する中小建設事業主にとって、非常に有効な助成金制度です。
- 都道府県の認定訓練補助金と組み合わせることで、二重の公的支援を受けられる
- 賃金助成が1人1日3,800円~4,800円と手厚い
- 年間上限1,000万円と、技能実習コースより高い上限額
「認定訓練助成金」「広域団体認定訓練助成金」等の都道府県の補助制度との関係が複雑なため、申請にあたっては専門家への相談をお勧めします。
たけだリフテック社労士事務所(西宮市)では、建設業の助成金活用についてのご相談を承っております。「自社で使える助成金があるか知りたい」「申請の手続きを代行してほしい」という方は、お気軽にお問い合わせください。




