「社員を他社に出向させてスキルを磨かせたいけど、出向中の賃金コストが心配…」——そのお悩みを解決するのが産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)です。
本制度は、労働者のスキルアップを目的とした「在籍型出向」に対し、出向中の賃金の一部を国が助成する制度です。中小企業なら助成率2/3・1日最大9,110円が支給されます。
本記事では、産業雇用安定助成金スキルアップ支援コースの概要・支給要件・助成額・申請手続きの流れについて、西宮市の社会保険労務士がわかりやすく解説します。
1. 産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)とは?
産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)は、在籍型出向によって労働者のスキルアップを図る事業主を支援する制度です。
「在籍型出向」とは、出向元に雇用関係を維持したまま出向先でも雇用契約を結び、一定期間働く形態のことです。出向元・出向先の双方が助成対象となる点が特徴です。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 制度の目的 | 在籍型出向によって労働者のスキルアップを促進する |
| 対象となる出向の形態 | 在籍型出向(出向元に在籍したまま出向先で勤務) |
| 助成の対象 | 出向元事業主・出向先事業主(令和8年4月8日以降の計画届) |
| 企業グループ内出向 | 対象外 |
2. 助成の対象となる事業主・要件
(1)出向元事業主の主な要件
- 出向先でのスキルアップを目的として労働者を出向させること
- 出向期間終了後に出向労働者を元の事業所に戻すことを前提としていること
- 出向復帰後6か月間の各月の賃金が出向前と比較して5%以上上昇すること
- 雇用保険の適用事業主であること
(2)出向先事業主の主な要件
- 出向元事業主との間で出向協定を締結していること
- 出向期間中、出向元との連名で計画届を提出すること
- 企業グループ内(関連会社・子会社等)への出向でないこと
(3)出向労働者の要件
- 出向元事業主に雇用保険被保険者として雇用されていること
- 出向開始前に出向先事業主と雇用関係にないこと
3. 助成額(令和8年度)
助成額は、出向中に出向元または出向先事業主が負担する出向労働者の賃金の一部に対して支給されます。
| 企業規模 | 助成率 | 1人1日あたりの上限額 |
|---|---|---|
| 中小企業 | 2/3 | 9,110円 |
| 中小企業以外(大企業) | 1/2 |
1事業所・1年度あたりの上限は1,000万円です。
たとえば、中小企業が月30日(実働22日)出向させた場合の試算:
| 日数 | 1日あたり上限 | 助成率(中小) | 月間助成額概算 |
|---|---|---|---|
| 22日 | 9,110円 | 2/3 | 約13万3,613円 |
4. 申請の流れ
本助成金の申請は、以下のステップで行います。
- 出向協定の締結:出向元・出向先事業主間で出向協定書を締結する
- 計画届の提出:出向開始前に都道府県労働局またはハローワークへ連名で「在籍型出向実施計画届」を提出する
- 出向の実施:計画に基づき在籍型出向を実施する
- 支給申請:出向期間終了後、所定の支給申請書を提出する(電子申請も可)
電子申請は雇用関係助成金ポータル(esop.mhlw.go.jp)から行うことができます。
5. スキルアップ支援コースと他のコースの違い
産業雇用安定助成金には複数のコースがあります。スキルアップ支援コースは、他のコースと以下の点で異なります。
| コース名 | 出向の目的 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| スキルアップ支援コース | 労働者のスキルアップ | 出向復帰後の賃金5%上昇が要件。出向先も助成対象(令和8年4月8日以降) |
| 産業連携人材確保等支援コース | 産業間の人材移動・確保 | 特定の産業分野間での人材融通を支援 |
| 災害特例コース | 災害時の雇用維持 | 大規模災害の影響を受けた事業主向け特例措置 |
6. 注意点・よくある間違い
- 企業グループ内出向は対象外:親会社・子会社・関連会社への出向は対象になりません。グループ外への出向が対象です。
- 計画届は出向前に提出:出向開始後に計画届を提出しても、原則として助成の対象になりません。必ず出向前に提出してください。
- 出向復帰後の賃金確認:出向元に復帰した後6か月間の各月の賃金が、出向前と比べて5%以上上昇していることが要件です。事前に賃金計画を立てておく必要があります。
- 出向中の賃金負担の明確化:出向協定に出向中の賃金を誰が(出向元か出向先か)どの割合で負担するかを明記しておく必要があります。
7. まとめ
産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)のポイントをまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 在籍型出向でスキルアップを図る出向元・出向先事業主 |
| 助成率 | 中小企業2/3、大企業1/2 |
| 上限額 | 1人1日9,110円、1事業所年間1,000万円 |
| 主な要件 | スキルアップ目的・出向後賃金5%以上上昇・グループ外出向 |
| 申請窓口 | 都道府県労働局・ハローワーク、または雇用関係助成金ポータル |
社員に新たなスキルを習得させながら、国から賃金コストの一部を補填してもらえる本制度は、人材育成と採用コスト削減の両面で非常に有用です。
要件の確認・計画届の作成など、申請手続きに不安がある方は、西宮市の社会保険労務士・竹田社労士事務所にご相談ください。助成金の受給から申請サポートまで、貴社の状況に合わせてアドバイスします。




