「毎年最低賃金が上がって人件費が重くなるが、価格に転嫁しきれない」「設備を更新したいが、コストが心配だ」
そんな経営者・人事担当者の方へ。業務改善助成金は、事業場内最低賃金を引き上げたうえで生産性向上のための設備投資を行った中小企業・小規模事業者に対し、その費用の最大4/5・上限600万円を助成する制度です。
令和8年度は9月1日から申請受付が始まります。最低賃金の大幅引き上げが実施される前に申請準備を進めることが重要です。本記事では令和8年度の変更点・コース別支給額・申請の流れを、西宮の社会保険労務士がわかりやすく解説します。
業務改善助成金とは
業務改善助成金は、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げ、あわせて生産性を高める設備投資を実施した中小企業・小規模事業者に対して、その設備投資費用の一部を助成する制度です。
最低賃金が毎年引き上げられる中、設備投資で業務を効率化・自動化することで「賃上げをしながら利益を確保する」好循環を後押しすることを目的としています。
対象は中小企業・小規模事業者(資本金3億円以下または労働者数300人以下)で、製造業・サービス業・飲食業・建設業など業種を問いません。
令和8年度の主な変更点
令和7年度(2025年度)から令和8年度(2026年度)にかけて、以下の変更が行われました。
- 30円コースが廃止:令和8年度は50円・70円・90円の3コースに整理されました
- 申請受付期間の変更:9月1日から11月30日(または地域別最低賃金の発効日前日)の早い方までに短縮されました
- 対象労働者の要件追加:賃上げの対象となる労働者に「雇用保険被保険者」であることが必要になりました
- 自動車が対象設備から除外:特殊用途自動車を除く自動車は助成対象から除外されました
- 物価高騰等要件の算定方法変更:物価高騰等の申出における売上高利益率の比較が「申請前6か月平均」に変更されました
3つのコースと支給上限額
業務改善助成金は、事業場内最低賃金の引上げ額に応じて3つのコースがあります。引き上げる人数が多いほど助成上限額が大きくなります。
| コース(引上げ額) | 1人 | 2〜3人 | 4〜6人 | 7人以上 | 10人以上※ |
|---|---|---|---|---|---|
| 90円コース | 90万円 | 150万円 | 270万円 | 450万円 | 600万円 |
| 70円コース | 70万円 | 110万円 | 180万円 | 260万円 | 340万円 |
| 50円コース | 50万円 | 80万円 | 110万円 | 160万円 | 190万円 |
※10人以上の区分は「特例事業者」のみ対象です
特例事業者とは
以下のいずれかに該当する場合、10人以上の区分が適用され助成上限額が大きくなります。
- 賃金要件:事業場内最低賃金が1,000円未満
- 物価高騰等要件:申請前3か月のうちいずれか1か月の売上高利益率が前年同期比で3ポイント以上低下している
助成率
助成率は申請時点の「事業場内最低賃金」によって異なります。
| 事業場内最低賃金 | 助成率 |
|---|---|
| 1,050円未満 | 4/5(80%) |
| 1,050円以上 | 3/4(75%) |
実際の助成額は「助成対象経費 × 助成率」と「コース別上限額」のいずれか低い方となります。
令和8年度に兵庫県の最低賃金が約56円引き上げられ1,107円程度になる見込みですが、事業場内最低賃金は地域別最低賃金とは別に設定されるため、自社の実際の時給を確認することが重要です。
助成の対象となる設備・経費
生産性の向上に資する以下のような設備投資が助成対象となります。
- POSレジ・販売管理システム:小売業・飲食業での業務効率化
- 予約管理・顧客管理システム:美容業・宿泊業・医療・介護など
- 生産用機械・加工機器・溶接ロボット:製造業での自動化
- 施工管理アプリ・測量機器:建設業での働き方改善
- 電子カルテ・介護記録システム:医療・介護の業務効率化
- クラウド会計・労務管理ソフト:バックオフィスの省力化
注意点:自動車(特殊用途車両を除く)は令和8年度から助成対象外となりました。また、交付決定前に購入・契約した設備は対象外のため、必ず交付決定後に発注してください。
申請要件
事業主の要件
- 中小企業・小規模事業者(資本金3億円以下または労働者数300人以下)であること
- 事業場内最低賃金を引き上げること(50円以上・70円以上・90円以上のいずれかのコース)
- 生産性向上のための設備投資等を実施すること
- 過去6か月以内に事業場内最低賃金を下回る賃金を支払っていないこと
- 解雇・懲戒解雇・雇い止めなど、労働者の責に帰すべき理由以外による離職がないこと(交付申請前6か月以内)
賃上げ対象労働者の要件(令和8年度から追加)
- 雇用保険被保険者であること(令和8年度から要件追加)
- 事業場内最低賃金の労働者(引上げ後の最低賃金が適用される者)
申請の流れ
ステップ① 交付申請(9月1日〜11月30日)
管轄の都道府県労働局に交付申請書を提出します。兵庫県の場合は兵庫労働局(または各ハローワーク)が窓口です。オンライン申請も可能です。
申請書には設備投資の内容・賃金引上げ計画・対象労働者数などを記載します。
ステップ② 交付決定の通知
申請内容が審査され、交付決定通知が届きます。この通知が届いた後でなければ設備の発注・契約はできません。
ステップ③ 事業の実施(〜2027年1月31日)
交付決定後に設備の導入・賃金の引き上げを実施します。事業完了期限は2027年1月31日です。
ステップ④ 実績報告・助成金の受給
事業完了から1か月以内(または2027年4月10日のいずれか早い方)に実績報告書を提出します。審査完了後に助成金が振り込まれます。
申請時の注意点
- 先着順・予算枠がある:申請件数が予算枠を超えた場合は受付が終了することがあります。受付開始直後の早めの申請をお勧めします
- 交付決定前の発注はNG:交付決定前に設備を発注・購入した場合は一切助成されません。必ず順番を守ってください
- 賃金台帳の整備:申請・実績報告時に賃金台帳・出勤簿・雇用保険被保険者証の提示が必要です。日頃から整備しておきましょう
- 最低賃金との関係:地域別最低賃金の発効日(兵庫県は通常10月)前日が申請締切になる場合があります。10月よりも前に申請することが重要です
業務改善助成金の活用例(西宮市・兵庫県の事業主向け)
| 業種 | 導入設備例 | コース | 助成上限額例 |
|---|---|---|---|
| 飲食業(5人) | セルフオーダーシステム・POSレジ | 70円コース・3人引上げ | 110万円 |
| 製造業(20人) | 溶接ロボット・検査装置 | 90円コース・7人引上げ | 450万円 |
| 介護事業所(10人) | 介護記録ICTシステム | 70円コース・4人引上げ | 180万円 |
| 建設業(8人) | 施工管理アプリ・ICT測量機器 | 90円コース・4人引上げ | 270万円 |
まとめ
業務改善助成金は、最低賃金の引き上げと設備投資を同時に進める中小企業にとって非常に有効な制度です。令和8年度は以下のポイントを押さえてください。
- 申請受付は9月1日〜11月30日(または地域別最低賃金発効日前日)
- コースは50円・70円・90円の3コース(30円コースは廃止)
- 助成率は最大4/5、上限600万円
- 賃上げ対象者は雇用保険被保険者に限定(令和8年度から)
- 交付決定前の設備発注は不可
最低賃金の大幅引き上げが予定されている今こそ、設備投資で生産性を高め、賃上げしながら経営を安定させるチャンスです。申請手続きや要件の確認についてお気軽に当事務所(西宮市の社会保険労務士事務所)にご相談ください。




