「従業員が仕事中にケガをしたり、長年の業務で病気になったりしたとき、労災保険はどこまで補償してくれるのか?」——会社を経営していると、そんな不安を感じることがあるかもしれません。
今回、厚生労働省が労災保険法の改正法案を国会に提出する予定であることが明らかになりました。2027年4月1日(一部を除く)の施行を目指しており、中小企業の経営者・人事担当者にも直接影響があります。ポイントをわかりやすく解説します。
労災保険法の改正ってどんな内容?
今回の改正は、大きく分けて次の2つが柱です。
- ①一部の保険給付請求権の消滅時効期間を2年から5年に延長
- ②遺族補償年金の支給要件の男女差を解消
また、労働基準法も同時に改正され、災害補償請求権の消滅時効期間が同様に延長されます。
①消滅時効の延長とは?(2年→5年)
消滅時効(しょうめつじこう)とは、「一定の期間が過ぎると権利が消えてしまうルール」のことです。たとえば、労災保険では「給付を受ける権利は2年で消滅する」とされていましたが、今回の改正で一部のケースについて5年に延長されます。
延長の対象となるケース
すべての労災に適用されるわけではありません。対象となるのは、「その疾病が業務上(仕事が原因)かどうか、すぐには判断できない場合」です。
具体的には、休業補償給付・介護補償給付・葬祭料などの受給権が発生する疾病のうち、業務との因果関係の判定が難しい疾病(いわゆる「判断困難疾病」)が対象です。
| 給付の種類 | 改正前の時効 | 改正後の時効 |
|---|---|---|
| 休業補償給付(判断困難疾病の場合) | 2年 | 5年 |
| 介護補償給付(同上) | 2年 | 5年 |
| 葬祭料(同上) | 2年 | 5年 |
職業病や長期にわたる業務起因性の疾病(例:石綿による肺疾患、化学物質による中毒症など)は、発症から診断まで時間がかかることが多いため、このような措置が取られました。
②遺族補償年金の男女差の解消
遺族補償年金(いぞくほしょうねんきん)は、労働者が仕事中に死亡した場合に遺族に支払われる年金です。現行制度では、妻は年齢に関係なく受給できる一方、夫は60歳以上でないと受給できない、といった男女差が存在していました。
今回の改正では、こうした支給要件の男女差が解消されます。共働き世帯の増加や、家族形態の多様化に対応した見直しです。
いつから変わる?施行スケジュール
改正法の施行日は2027年4月1日(一部を除く)です。今国会(特別国会)に法案が提出される予定で、成立すれば約1年後に施行されます。
事業主・人事担当者として何をすべきか
今回の改正を踏まえ、会社側でも次のような対応を検討しておくことをお勧めします。
- 労災事故・疾病の記録を長期間保管する:時効が5年になることで、過去の事案について後から請求が来る可能性が高まります。労災に関する書類・記録は少なくとも5年以上保管しましょう。
- 職場の健康管理を強化する:特に、職業病リスクのある職場では、定期健康診断の徹底や作業環境の改善が重要です。
- 遺族補償の仕組みを従業員に周知する:改正により受給要件が変わります。従業員やその家族が安心して働ける環境づくりのためにも、制度の周知を行いましょう。
まとめ
今回の労災保険法改正は、「職業病など判断が難しい疾病」に限った時効延長が中心ですが、記録管理の観点から事業主にとっても重要な変更です。
2027年4月1日の施行に向けて、今から対応を始めておくことが大切です。「うちの会社は大丈夫?」とご不安な方は、ぜひ社会保険労務士にご相談ください。




