令和8年7月28日に発生した熊本地震の影響で、直接の被災地でなくても取引先の停止・観光客の激減・物流の乱れで売上が落ち込んでいるという経営者様はいらっしゃいませんか?
厚生労働省は令和8年8月25日より、「令和8年熊本地震に伴う雇用調整助成金の特例措置」を実施しています。この特例は、熊本県内の事業主だけでなく、全国の事業主を対象としている点が大きな特徴です。要件の緩和により、これまで雇用調整助成金を使いにくかった事業主でも活用できる可能性があります。
雇用調整助成金とは
雇用調整助成金とは、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、休業・教育訓練・出向などによって従業員の雇用を維持した場合に、その費用の一部を助成する制度です。
通常版の助成率と上限額は以下のとおりです(令和8年8月改定後)。
| 区分 | 助成率 | 1人1日の上限額 |
|---|---|---|
| 中小企業 | 2/3 | 9,110円 |
| 大企業 | 1/2 | 9,110円 |
1年間(保険年度)の支給上限日数は100日です。
令和8年熊本地震に伴う特例措置の概要
今回の特例は、令和8年7月28日に発生した熊本地震の影響により、経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用調整を行わざるを得ない事業主を支援するために設けられました。
ポイントは、「経済上の理由」には直接の被害だけでなく、間接的な経済的影響も含まれる点です。たとえば以下のような状況が該当する可能性があります。
- 熊本の取引先が被災して仕入れ・受注が止まった
- 熊本方面への観光・旅行・出張需要が激減した
- 熊本を経由する物流が停止・遅延し製造・販売が停止した
- 熊本からの部品調達が困難になり生産を縮小した
全国を対象とした特例措置の内容(4項目)
全国の事業主(熊本県外も含む)に適用される特例は以下の4項目です。
| 特例項目 | 通常の要件 | 特例後の要件 |
|---|---|---|
| ①生産指標の確認期間の短縮 | 最近3か月間の月平均値が前年同期比10%以上減少 | 最近1か月の値が前年同月比10%以上減少でよい |
| ②雇用量増加要件の撤廃 | 最近3か月間の雇用量が前年同期比で一定以上増加している場合は対象外 | 雇用量が増加していても助成対象 |
| ③設置後1年未満の事業所も対象 | 雇用保険適用事業所の設置後1年未満は対象外 | 令和8年7月28日時点で設置後1年未満でも対象 |
| ④計画届の事後提出を許可 | 休業等の開始前に計画届を提出 | 休業開始後の事後提出も可能 |
特に④の計画届の事後提出は実務上の大きな緩和です。通常は「休業の前に届け出なければ助成対象にならない」ため、突発的な売上減少には対応しにくい側面がありましたが、今回の特例では遡及して申請することが可能になります。
熊本県内の事業所のみに適用される追加特例(2項目)
熊本県内に事業所を置く事業主に対しては、上記4項目に加えてさらに2項目の要件が緩和されます。
| 追加特例項目 | 通常の取扱い | 特例後 |
|---|---|---|
| ⑤残業相殺ルールの撤廃 | 休業をさせる一方で所定外労働(残業)を行わせた場合、支給対象日数から残業時間分を控除する | 控除しない(残業があっても休業日数全日が対象) |
| ⑥教育訓練実施率による助成率引き下げの撤廃 | 支給日数が30日経過後、教育訓練実施率が10%未満の場合は助成率を引き下げ | 助成率の引き下げを行わない |
特例措置の適用期間
この特例が適用されるのは、休業等の初日が令和8年7月28日から令和9年1月27日までの間にある場合です。支給上限日数(1年度100日)に達した場合はそこまでが対象となります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特例適用期間 | 令和8年7月28日 ~ 令和9年1月27日 |
| 支給上限日数 | 1年(保険年度)あたり100日(通常の上限と同じ) |
| 助成率・上限額 | 通常と同じ(中小2/3、大企業1/2、1人1日9,110円上限) |
申請の流れ
雇用調整助成金(熊本地震特例)の申請手順は以下のとおりです。
- STEP1:生産指標(売上・生産量・販売量など)の状況を確認し、前年同月比10%以上の減少を確認する
- STEP2:「雇用調整助成金(令和8年熊本地震特例)」の計画届を管轄のハローワーク(公共職業安定所)または都道府県労働局に提出する(特例により事後提出も可)
- STEP3:休業・教育訓練・出向を実施する
- STEP4:支給申請書を所定の期限内に提出する(支給単位期間終了日の翌日から2か月以内)
申請は電子申請(雇用関係助成金ポータル)でも行えます。
申請に必要な主な書類
- 計画届(事業活動縮小状況を記載したもの)
- 生産指標が確認できる書類(売上台帳、生産記録など)
- 休業等の実績が確認できる書類(出勤簿、賃金台帳など)
- 熊本地震の影響を受けたことが確認できる書類(取引先からの通知文、注文のキャンセル通知など)
西宮・兵庫の事業主の皆様へ
「うちは熊本県外だから関係ない」と思われている経営者様も多いかもしれませんが、雇用調整助成金の特例は全国対象です。熊本との取引がある企業や、熊本からの観光・インバウンド需要を受けている業種(宿泊・飲食・運輸など)であれば、西宮・兵庫の事業主も適用対象となり得ます。
ただし、「経済上の理由に熊本地震の影響が含まれていること」を書類で証明できることが重要です。影響の因果関係を説明できる資料を早めに収集・整理しておくことをお勧めします。
まとめ
- 令和8年熊本地震(令和8年7月28日発生)に伴い、雇用調整助成金の特例措置が令和8年8月25日より実施中
- 全国の事業主を対象に4項目の要件緩和(生産指標確認期間の短縮、雇用量増加要件の撤廃、新規事業所も対象、計画届の事後提出可)
- 熊本県内の事業所にはさらに2項目の追加特例(残業相殺ルール廃止、教育訓練実施率による助成率引き下げ廃止)
- 特例適用期間:休業等の初日が令和8年7月28日 ~ 令和9年1月27日
- 助成率・上限額は通常と同じ(中小2/3、大企業1/2、1人1日9,110円)
- 申請は事後提出も可能(計画届を後から出すことができる)
申請の要件や手続きでご不明な点がございましたら、西宮市の社会保険労務士事務所(srtakeda.com)にお気軽にご相談ください。事業への影響状況の整理から申請書類の作成・提出まで、丁寧にサポートいたします。




