2026年4月1日から、健康保険の「扶養に入れるかどうか」の判断方法が変わりました。日本年金機構が5月1日に公式発表した新ルールを、社労士の立場からわかりやすく解説します。
この変更は、パートやアルバイトで働く配偶者・家族を扶養に入れている方、あるいは従業員の家族が扶養に入っている事業主にとって、とても重要な内容です。
健康保険の「扶養」とは?
健康保険には「被扶養者」という制度があります。会社員(被保険者)の配偶者や子、親などが、自分で健康保険に加入しなくても、会社員の健康保険に一緒に加入できる仕組みです。
扶養に入るためには、年間収入が一定額未満であることが条件で、一般的には年間130万円未満(60歳以上や障害者は180万円未満)が基準とされています。
何が変わったの?
【従来の判断方法】
これまでは、「今後1年間でどれくらい稼ぎそうか」という見込み収入を様々な方法で推計して判断していました。たとえば直近の給与明細や源泉徴収票などをもとに計算するため、繁忙期に残業が多かった月の給与が多いと、130万円を超えると判断されてしまうケースもありました。
【新しい判断方法(2026年4月1日以降)】
日本年金機構は、「労働条件通知書」や「雇用契約書」などに書かれた賃金から計算した年間収入を基準として扶養認定を行うと公式に明らかにしました。
つまり、雇用契約上の時給・月給から計算した年間収入が130万円未満であれば、一時的に残業が多い月があっても、原則として被扶養者として認定されます。
認定される具体的な要件(2026年4月1日以降)
以下のすべてを満たす場合に、被扶養者として認定されます。
- 労働条件通知書など労働契約内容がわかる書類に記載の賃金から見込まれる年間収入が130万円未満
- 他の収入(副業・パート掛け持ちなど)が見込まれないこと
- 下記①または②を満たすこと
| 区分 | 条件 |
|---|---|
| ①扶養される方が 被保険者と同居の場合 |
被保険者(会社員)の年間収入の2分の1未満であること |
| ②扶養される方が 被保険者と別居の場合 |
被保険者からの仕送り(援助)額より少ない収入であること |
具体例でわかりやすく解説
例1:時給制パートで働く配偶者のケース
時給1,050円・週20時間のパート勤務の場合
- 月の所定労働時間:20時間 × 4週 = 約80時間
- 月収:1,050円 × 80時間 = 84,000円
- 年収換算:84,000円 × 12ヶ月 = 1,008,000円(約101万円)
→ 労働条件通知書の年収は130万円未満なので、扶養に入れます。たとえ繁忙期に残業が増えて実際の収入が多い月があっても、雇用契約上の収入が基準となるので扶養から外れる必要はありません。
例2:月給制で働く配偶者のケース
月給105,000円(固定残業なし)のパート勤務の場合
- 年収換算:105,000円 × 12ヶ月 = 1,260,000円(約126万円)
→ 労働条件通知書の年収は130万円未満なので扶養に入れます。
事業主・人事担当者への影響
従業員から「家族を扶養に入れたい」という申請があった際、協会けんぽ(全国健康保険協会)や健康保険組合から労働条件通知書の提出を求められる場合があります。
事業主の方は、従業員に対して適切な労働条件通知書を発行・保管しておくことが重要です。労働条件通知書は、そもそも雇用時に必ず交付が義務付けられている書類(労働基準法第15条)ですので、未発行の場合は早急に対応しましょう。
任意継続被扶養者(退職後も任意継続している方の扶養家族)の取り扱いは、全国健康保険協会(協会けんぽ)のホームページで確認してください。また、健康保険組合に加入している会社の場合は、各組合のルールに従います。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 変更開始 | 令和8年(2026年)4月1日以降 |
| 変更内容 | 被扶養者認定の年間収入を「労働条件通知書等の記載収入」で判断 |
| 収入基準 | 年間130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満) |
| ポイント | 雇用契約上の収入が基準なので一時的な残業増でも扶養を外れにくい |
| 注意事項 | 副業収入など他の収入がある場合は別途確認が必要 |
| 発表元 | 日本年金機構(2026年5月1日公表) |
今回の変更は、パートで働く配偶者や家族を扶養に入れたい方にとって、手続きや判断がしやすくなる内容です。「うちの場合はどうなるの?」という疑問がある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
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