「パートさんが106万円の壁を超えたくないと言って残業を断る」「社会保険に加入させると本人の手取りが減ってしまうので、なかなか労働時間を増やせない」——そんなお悩みを抱えていませんか?
そこで活用いただきたいのが、「キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース)」です。この制度は、週の所定労働時間を延長してパート・アルバイト等の短時間労働者を新たに社会保険(厚生年金・健康保険)に加入させた事業主に対し、最大1人あたり75万円が支給される助成金です。
この記事では、西宮市・阪神エリアの中小企業の経営者・人事担当者向けに、制度の概要・支給額・申請方法をわかりやすく解説します。
1. キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース)とは?
このコースは、いわゆる「年収の壁」(106万円・130万円の壁)による「働き控え」の解消を目的として、2025年(令和7年)7月に新設された助成金制度です。
短時間労働者が社会保険の適用基準を新たに満たすよう、週の所定労働時間を延長するか、時間延長と合わせて賃金を引き上げる取り組みを行った事業主に対し、国が費用を助成します。
「106万円の壁」の問題は、2026年10月からの社会保険の適用拡大(従業員51人以上の企業でも短時間労働者が社会保険加入対象に拡大)でさらに重要な経営課題となっています。このコースを活用することで、本人の手取り減少をカバーしながら正社員に近い働き方への移行を後押しすることができます。
2. 対象となる事業主の要件
以下の要件をすべて満たす雇用保険適用事業主が対象です。
- 対象労働者を各支給対象期間(6か月)継続して雇用し、賃金を支払っていること
- 社会保険適用の3か月前から適用日までの間に、労働時間の延長または賃金の引き上げを実施していること
- 雇用契約書に社会保険の加入状況と週所定労働時間を明記していること
- 基本給や定額的に支払われる手当を合理的な理由なく減額していないこと
- 雇用関係助成金の共通要件を満たすこと(未払い賃金・法令違反がないこと等)
3. 対象となる労働者の要件
助成の対象となる労働者は、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 有期雇用労働者であること(パート・アルバイトなど)
- 労働時間延長日の6か月前から、同一の事業主のもとで継続して雇用されていること
- 過去6か月間、社会保険(厚生年金・健康保険)の加入要件を満たしていなかったこと
- 週の所定労働時間を延長することで、新たに社会保険の加入要件(週20時間以上かつ月額賃金8.8万円以上等)を満たすようになったこと
- 支給申請日時点で離職していないこと
4. 支給額はいくら?
■ 1年目(第1期)の支給額
週の所定労働時間を延ばす「延長幅」と「賃金引き上げの有無」によって、以下のように支給額が変わります。
| 週所定労働時間の延長幅 | 賃金増額要件 | 小規模企業(30人以下) | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|---|---|
| 5時間以上延長 | 不要 | 50万円 | 40万円 | 30万円 |
| 4時間以上5時間未満延長 | 基本給5%以上引き上げ | 50万円 | 40万円 | 30万円 |
| 3時間以上4時間未満延長 | 基本給10%以上引き上げ | 50万円 | 40万円 | 30万円 |
| 2時間以上3時間未満延長 | 基本給15%以上引き上げ | 50万円 | 40万円 | 30万円 |
■ 2年目(第2期)の支給額(任意)
1年目の支給後、さらに以下いずれかの取り組みを行うと、追加で助成を受けることができます。
- 週所定労働時間をさらに2時間以上延長する
- 基本給をさらに5%以上引き上げる
- 賞与・退職金・昇給制度を新たに適用する
| 区分 | 小規模企業(30人以下) | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|---|
| 2年目の追加支給 | 25万円 | 20万円 | 15万円 |
1年目+2年目の合計で、小規模企業(従業員30人以下)なら最大75万円(50万円+25万円)が支給されます。
5. 申請の流れ
- キャリアアップ計画書を作成・提出する(社会保険加入の前に、管轄のハローワークへ提出が必要です)
- 社会保険適用の3か月前から適用日までに、労働時間延長または賃金引き上げを実施する
- 対象労働者が社会保険(厚生年金・健康保険)に新たに加入する
- 社会保険加入後、6か月間継続して雇用する(第1期支給対象期)
- 6か月経過後、賃金支払日の翌日から2か月以内に支給申請書を管轄の労働局またはハローワークへ提出する
- 審査を経て支給決定・振込
- (任意)2年目の取り組みを実施し、同様に第2期の申請を行う
申請は電子申請(雇用関係助成金ポータル)にも対応しています。
6. 注意点・よくある落とし穴
- キャリアアップ計画書は社会保険加入前に提出が必須です。事後申請は認められませんので、早めの準備が重要です。
- 基本給や固定手当を「社会保険の保険料負担増加を相殺するために減額する」ことは認められません。
- 対象労働者は「有期雇用労働者」である必要があります。無期雇用(無期転換後のパート・正社員)は対象外です。
- 社会保険に加入させた後、6か月以内に離職してしまうと助成金が受けられません。継続雇用が見込まれる方を対象に取り組むことが大切です。
- 過去に同一労働者について同コースの助成を受けている場合は対象外となります。
7. まとめ:パートの「106万円の壁」をこの助成金で乗り越えよう
キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース)のポイントをまとめます。
- パートなど有期雇用短時間労働者の週所定労働時間を延ばして社会保険に加入させた事業主に支給
- 1人あたり最大75万円(小規模企業:1年目50万円+2年目25万円)
- 「5時間以上延長」か「2〜4時間延長+賃金引き上げ」で対象になる
- 社会保険加入前にキャリアアップ計画書の提出が必要(これが最重要ポイント!)
- 2026年10月からの社会保険適用拡大(51人以上企業)に向けた事前対策としても有効
「社会保険に加入させると保険料が増えて本人も会社も負担が大きい」と悩んでいる事業主様にとって、この助成金は有力な解決策のひとつです。2026年10月の適用拡大を前に、いまから取り組みを始めることをおすすめします。
申請の手続きや要件確認でご不明な点があれば、西宮市の社会保険労務士事務所・竹田社労士事務所にお気軽にご相談ください。




