「高齢者を採用したいが、コストが心配……」「障害者雇用に取り組みたいが、何から始めればいいかわからない」——そんなお悩みを抱える経営者・人事担当者の方にぜひ知っていただきたいのが、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)です。
この助成金は、就職が特に難しい方(高年齢者・障害者・母子家庭の母など)をハローワーク等の紹介で雇い入れた事業主に対して、中小企業なら最大240万円を支給する制度です。
令和8年度(2026年度)には重要な変更点もありますので、最新情報を含めて社労士がわかりやすく解説します。
この助成金で採用できる「就職困難者」とは?
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の対象となる方は、次のとおりです。
- 高年齢者(60歳以上65歳未満)
- 身体障害者・知的障害者
- 重度障害者等(精神障害者・難治性疾患患者なども含む)
- 母子家庭の母等(父子家庭の父・寡婦を含む)
- 補完的保護対象者(2023年12月1日以降に新設)
これらの方々は、一般的な転職市場では採用されにくく、ハローワーク(公共職業安定所)がマッチング支援を行っています。ハローワークを通じた採用であることが、助成金受給の大前提です。
支給額・助成期間(2026年度)
助成金の支給額は、採用する方の属性と労働時間によって異なります。
▼ 週所定労働時間が30時間以上の場合
| 対象者の区分 | 中小企業 | 大企業 | 助成期間 |
|---|---|---|---|
| 高年齢者(60歳以上)・母子家庭の母等 | 60万円 | 50万円 | 1年間 |
| 身体・知的障害者(重度等を除く) | 120万円 | 50万円 | 2年間 |
| 重度障害者等(精神障害者含む) | 240万円 | 100万円 | 3年間 |
▼ 週所定労働時間が20時間以上30時間未満(短時間労働者)の場合
| 対象者の区分 | 中小企業 | 大企業 | 助成期間 |
|---|---|---|---|
| 高年齢者(60歳以上)・母子家庭の母等 | 40万円 | 30万円 | 1年間 |
| 身体・知的・精神障害者 | 80万円 | 30万円 | 2年間 |
助成金は6か月ごとに分割して支給されます(例:2年間の場合は4回に分けて支給)。
助成を受けるための主な要件
事業主側の要件
- ハローワークまたは民間人材紹介会社等の紹介によって採用すること(紹介状が必要)
- 対象者を雇用保険の一般被保険者として雇い入れること
- 雇入れ日の前後6か月間に解雇がないこと
- 労働保険料の滞納がないこと
- 雇い入れた日から2年以上継続して雇用することが見込まれること
対象労働者側の要件
- ハローワーク等への求職登録をしていること
- 雇い入れ前の6か月間に解雇されていないこと
- 雇用保険の受給資格がある場合は、受給期間中または受給終了後であること
令和8年度(2026年度)の重要な変更点
① 高年齢者に「個別支援」の受講が必須に(令和8年5月1日以降)
令和8年5月1日以降に雇い入れた60歳以上の高年齢者については、採用時点でハローワーク等において就労に向けた個別支援を受けていることが新たな要件として追加されました。
ハローワークに求人を出す際には、紹介状に「助成金対象労働者」と記載されているかを必ず確認してください。個別支援を受けていない方を採用しても、この助成金の対象にはなりません。
② 賃金台帳の提出が義務化(令和8年4月1日以降の申請分)
令和8年4月1日以降に支給申請を行う場合、賃金台帳(法定帳簿)の提出が必須となりました。これまでは一部省略が認められていましたが、賃金台帳が確認できない場合は不支給となります。
今から雇用記録・賃金支払記録を正確に保管しておくことが非常に重要です。電子帳簿でも問題ありませんが、法定の記載事項を漏れなく記録してください。
申請の流れ
- ハローワークに求人を申し込む
採用したい人材の条件をハローワークに登録し、助成金対象求人であることを明示する - 紹介された対象者を採用する
紹介状を受け取った上で、雇い入れを行う(紹介なしの採用は対象外) - 雇入れ後6か月が経過したら、第1回の支給申請を行う
支給申請書を管轄のハローワークまたは都道府県労働局に提出(6か月経過後の末日から2か月以内) - 以降、6か月ごとに申請を繰り返す
助成期間が終わるまで、6か月ごとに申請を続ける - 審査後、助成金が振り込まれる
こんな事業主にとくにおすすめです
- 慢性的な人手不足に悩んでいる中小企業・小規模事業者
- 高齢者や障害者の雇用に関心があるが、採用コストが心配な事業主
- 障害者雇用率の達成に取り組みたい(従業員40人以上の企業は法定雇用率2.5%の達成が義務)
- 母子家庭の方の就労支援に協力したい事業主
- ハローワーク求人を活用して採用コストを削減したい事業主
注意事項・申請前に確認すること
- 申請書類に不備があると支給が遅れる場合があります。社労士に依頼することで書類作成がスムーズになります。
- 助成期間中に対象者を解雇した場合は、助成金が打ち切られます。雇用管理に注意してください。
- 同一の対象者について、他の雇用関係助成金と重複して受給することは原則できません。
- 申請は採用後6か月が経過した末日から2か月以内に行う必要があります。期限を過ぎると申請できなくなります。
まとめ
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、高年齢者・障害者・母子家庭の母などをハローワーク経由で採用した際に中小企業なら最大240万円が支給される、中小企業にとって非常に使い勝手のよい助成金です。
令和8年度からは、高年齢者の採用に「個別支援」の受講が必須になる、賃金台帳の提出が義務化されるなど、制度変更もあります。採用計画をお持ちの事業主の方は、今のうちにハローワークや社会保険労務士に相談しておきましょう。
西宮・阪神エリアの事業主の方へ
社会保険労務士事務所SR武田では、助成金申請のサポートから日常の労務管理まで幅広くご支援しております。「どの助成金が使えるか知りたい」「申請書類の作成を任せたい」という方は、お気軽にご相談ください。




