「重度障害のある社員が自動車で通勤しているが、職場近くの駐車場代が高くて費用負担が大きい…」「自動車通勤が必要な重度障害者を雇いたいが、駐車場の確保が難しい…」——そのようなお悩みをお持ちの事業主の方へ。
実は、重度障害のある従業員が自ら自動車を運転して通勤するために事業主が駐車場を賃借した場合に、その賃借料の4分の3(月額上限5万円)を最長10年間助成する制度があります。それが重度障害者等通勤対策助成金「駐車場の賃借助成金」です。
本記事では、令和8年度版の最新情報をもとに、駐車場の賃借助成金の概要・支給要件・支給額・申請の流れについて、西宮市の社会保険労務士がわかりやすく解説します。
この助成金の概要
重度障害者等通勤対策助成金「駐車場の賃借助成金」は、障害により公共交通機関を利用した通勤が困難な重度障害者等が、自ら自動車を運転して通勤するために必要な駐車場を、事業主(または事業主団体)が賃借した場合の費用を助成する制度です。
この助成金は、障害者雇用納付金制度に基づき、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が運営しています。下肢機能障害や体幹機能障害などにより徒歩や公共交通機関での通勤が困難な従業員が、自動車通勤を継続できるよう支援する制度です。
重度障害者等通勤対策助成金は全9種類ありますが、「駐車場の賃借助成金」は、自動車通勤者のための駐車場確保費用を継続的に支援する制度です。月額上限が5万円と比較的高く設定されているのが特徴です。
支給要件
駐車場の賃借助成金を受給するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
【対象事業主の要件】
- 支給対象となる重度障害者等を雇用している事業主、または当該事業主が加入している事業主団体であること
- 対象障害者が自ら自動車を運転して通勤することを認め、その通勤用に駐車場を賃借していること
- 駐車場を賃借しなければ、対象障害者の雇用の継続が困難であると認められること
なお、就労継続支援A型事業所の利用者(雇用型の福祉サービス利用者)を対象とする場合は助成対象外です。A型事業所の「職員(スタッフ)」を対象とする場合は支給対象となります。
【支給対象障害者の要件】
下表のいずれかに該当する障害者であることが必要です。
| 障害種別 | 対象となる障害等級等 |
|---|---|
| 身体障害者(上肢) | 2級以上 |
| 身体障害者(体幹・心臓・腎臓・呼吸器等) | 3級以上 |
| 身体障害者(下肢) | 4級以上 |
| 知的障害者 | 療育手帳所持者(機構が定める重度等に該当する者) |
| 精神障害者 | 精神障害者保健福祉手帳所持者 |
上記の障害要件に加えて、以下の自動車運転に関する要件をすべて満たす必要があります。
- 対象障害者が自動車運転免許を保有していること
- 対象障害者が自ら運転する自動車で通勤していること(車検証の使用者欄に対象障害者が記載されていること)
- 障害の特性により公共交通機関での通勤が困難であること
- 精神障害者の場合は、自動車運転が可能であることを確認する医師の診断書が必要
また、原則として雇用後6か月以内に措置(駐車場の賃借)を実施することが求められますが、以下のような「やむを得ない理由」がある場合は例外が認められます。
- 中途障害・障害の重度化が生じた場合
- 転勤・転居等により通勤が困難になった場合
- 事業所の移転により通勤経路が変わった場合
- 公共交通機関の廃止・変更等により通勤が困難になった場合
- その他、機構が特に必要と認めた場合
【対象となる駐車場の要件】
- 新規に賃貸借契約した駐車場であること(既存の契約への遡及適用は不可)
- 駐車場から事業所または自宅までの移動がおおむね10分程度以内の距離であること
- 駐車場から事業所または自宅までの移動が徒歩または車いすで可能な範囲内であること
- 対象障害者の障害の種類・程度に十分に配慮した構造・環境であること
- 道路の路面外に設置されていること(路上駐車は不可)
- 駐車場所および駐車する自動車が契約書等で特定できること
- 対象障害者の通勤のためのみに使用すること(業務利用・プライベート利用との兼用不可)
支給額・助成率
令和8年度の支給内容は以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成対象 | 駐車場の賃借料(対象障害者から徴収する駐車場代を除いた額) |
| 助成率 | 実費の4分の3(75%) |
| 支給上限額 | 1人につき月額5万円 |
| 支給期間 | 駐車場を賃借した日の属する月の翌月から最長10年間 |
| 支給申請単位 | 6か月ごとの申請(原則) |
助成対象となる費用の計算式は以下のとおりです:
(駐車場の賃借料 − 対象障害者から徴収する駐車場代)× 3/4 = 助成額(上限5万円)
計算例を示します。
- 月額駐車場代6万円・本人徴収0円の場合:6万円 × 3/4 = 4万5,000円が助成
- 月額駐車場代8万円・本人徴収0円の場合:8万円 × 3/4 = 6万円 → 上限5万円のため5万円が助成
- 月額駐車場代4万円・本人1万円徴収の場合:(4万円 − 1万円)× 3/4 = 2万2,500円が助成
申請の流れ
駐車場の賃借助成金の申請は、JEED各都道府県支部で受け付けています。一般的な手続きの流れは以下のとおりです。
- 事前相談:管轄のJEED都道府県支部(高齢・障害者業務課または高齢・障害者窓口サービス課)に相談し、支給要件を確認する
- 受給資格認定申請:支給要件確認申立書(様式第540号)・助成金受給資格認定申請書(様式第601号)・事業計画書(助添付様式第65号)等の書類を作成し、JEEDへ提出する
- JEED審査・受給資格認定:JEEDが申請内容を審査し、受給資格が認定される
- 駐車場の賃借開始:認定を受けた後、対象駐車場の賃貸借契約を締結する(原則として認定前の賃借分は対象外)
- 支給申請:6か月ごとに支給申請書(様式第621号等)を提出する
- 支給決定・振込:JEEDの審査後、支給が決定され指定口座に振り込まれる
申請に必要な様式はJEED公式サイトの駐車場の賃借助成金の様式ページからダウンロードできます。電子申請(e-Gov)も利用可能です(2回目以降)。
申請にあたっての注意点
- 受給資格認定申請は、駐車場の賃貸借契約を締結する前に行う必要があります。契約後の遡及申請は原則認められません。
- 対象の駐車場は新規に賃貸借契約したもののみが助成対象です。既存の契約や更新契約は対象外となります。
- 精神障害者を対象とする場合は、自動車運転が可能であることを証明する医師の診断書が別途必要となります。
- 駐車場は通勤目的のみの使用が要件です。業務上の移動やプライベート利用との兼用がある場合は対象外となります。
- この助成金は障害者雇用納付金制度に基づく助成金のため、適正な申告・納付が前提となります。
- 支給期間中に要件を欠くに至った場合(対象障害者の離職・運転免許の失効等)は、その時点で支給が終了します。
通勤用自動車の購入助成金との違い
同じく自動車通勤を支援する「通勤用自動車の購入助成金」と合わせて活用を検討する企業も多くあります。それぞれの主な違いは以下のとおりです。
| 項目 | 駐車場の賃借助成金 | 通勤用自動車の購入助成金 |
|---|---|---|
| 助成対象 | 通勤用駐車場の賃借料 | 通勤用自動車の購入費・改造費 |
| 助成率 | 3/4 | 3/4 |
| 上限額 | 月額5万円(継続) | 購入時1回あたり上限額あり |
| 支給期間 | 最長10年(毎月継続) | 原則1回(耐用年数経過後再申請可) |
| 重複申請 | 同一障害者への両方の申請が可能 | 同左 |
自動車の購入と駐車場の確保が両方必要な場合は、2つの助成金を組み合わせて利用することも可能です。自社の状況に合わせてご検討ください。
まとめ・社労士からのアドバイス
重度障害者等通勤対策助成金「駐車場の賃借助成金」は、自動車通勤が必要な重度障害のある従業員のための駐車場確保費用を国が継続的に助成する制度です。月額最大5万円・最長10年間にわたるサポートにより、長期的な障害者雇用の継続を後押しします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 運営機関 | 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) |
| 助成率 | 駐車場賃借料の3/4 |
| 月額上限 | 1人につき5万円 |
| 支給期間 | 最長10年間(6か月ごとに申請) |
| 主な要件 | 対象障害者が運転免許を保有し自ら運転、新規に賃借する駐車場であること |
| 申請先 | JEED都道府県支部 高齢・障害者業務課 |
| 注意点 | 必ず駐車場の賃貸借契約「前」に受給資格認定申請を行うこと |
重度障害のある社員が安心して自動車通勤できる環境づくりに、ぜひ「駐車場の賃借助成金」をご活用ください。申請手続きや要件確認は複雑な面もありますので、事前に専門家への相談をお勧めします。
助成金の申請手続きや詳細については、西宮の社会保険労務士事務所・SR武田事務所にお気軽にご相談ください。障害者雇用に関する助成金の申請サポートから、雇用管理のアドバイスまで幅広くご支援しております。




