「うちのパートが急に辞めた。すぐに失業給付をもらえるって聞いたけど、本当?」
2025年4月から雇用保険法が大きく改正され、特に「自己都合で辞めた場合の給付制限期間の短縮」は、経営者にとって無視できない変化です。
給付制限が短くなると、従業員が「少し不満があったらすぐ辞めてしまう」ケースが増える可能性があります。また、2028年には週10時間以上働くパート・アルバイトも雇用保険の加入義務対象になるため、今から準備が必要です。
この記事では、西宮市の社会保険労務士が2025年改正雇用保険法の5つの重要ポイントを、事業主目線でわかりやすく解説します。
- 自己都合退職の給付制限が「2ヶ月→1ヶ月」に短縮された理由と事業主への影響
- 出生後休業支援給付金の新設(実質給付率80%)
- 雇用保険が週10時間以上に適用拡大される(2028年10月)
- 教育訓練給付の拡充内容
- 事業主が今すぐすべき対応
そもそも雇用保険とは?事業主の加入義務と保険料負担
雇用保険は、労働者が失業したときや育児・介護休業を取得したときに給付を行う公的保険制度です。
事業主は、以下の条件を満たす従業員を雇用した場合、雇用保険に加入させる義務があります(2025年現在)。
- 週所定労働時間が20時間以上(2028年10月以降は10時間以上)
- 31日以上の雇用見込みがある
雇用保険料は事業主と労働者が負担します。2025年度の料率は以下の通りです。
| 負担者 | 一般の事業 | 農林水産・清酒製造 | 建設の事業 |
|---|---|---|---|
| 事業主負担 | 9.5/1,000 | 10.5/1,000 | 11.5/1,000 |
| 労働者負担 | 6/1,000 | 7/1,000 | 7/1,000 |
| 合計 | 15.5/1,000 | 17.5/1,000 | 18.5/1,000 |
2025年改正雇用保険法の全体像
「雇用保険法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第26号)は、2025年(令和7年)4月から段階的に施行されています。主な改正内容は以下の5点です。
| 改正ポイント | 施行時期 |
|---|---|
| ①自己都合退職の給付制限期間の短縮 | 2025年4月1日 |
| ②出生後休業支援給付金の新設 | 2025年4月1日 |
| ③育児休業給付の保険料率変更 | 2025年4月1日 |
| ④教育訓練給付の拡充 | 2025年10月1日(予定) |
| ⑤雇用保険の適用範囲の拡大(週10時間以上) | 2028年10月1日 |
改正ポイント①:自己都合退職の給付制限が「2ヶ月→1ヶ月」に短縮(2025年4月施行)
改正の内容
これまで、自己都合で退職した場合の基本手当(失業給付)の支給は、7日間の待期期間終了後、さらに2ヶ月間の給付制限がありました。
2025年4月1日からは、この給付制限期間が原則1ヶ月に短縮されました。
| 区分 | 改正前 | 改正後(2025年4月〜) |
|---|---|---|
| 原則(自己都合退職) | 2ヶ月 | 1ヶ月 |
| 5年以内に3回以上の自己都合退職 | 3ヶ月 | 3ヶ月(変更なし) |
| 正当な理由のある自己都合退職 | なし | なし(変更なし) |
事業主への影響
給付制限が1ヶ月に短縮されると、退職後すぐに給付が受けられるため、転職・退職のハードルが下がる可能性があります。
人材の定着を図るためには、以下の取り組みが重要です。
- 賃金・待遇の改善
- 職場環境・労働条件の整備
- キャリアアップ支援の充実
- 従業員満足度の向上
「給付制限が短くなると辞めやすくなる」という側面がある一方で、この改正はリスキリング(学び直し)を推進する目的もあります。職業訓練を受講する場合はさらに制限が緩和されます。従業員の成長支援をすることで定着率向上につなげましょう。
改正ポイント②:出生後休業支援給付金が新設(2025年4月施行)
改正の内容
子の出生直後に夫婦がともに育児休業を取得しやすくするため、「出生後休業支援給付金」が2025年4月1日から創設されました。
この給付金は、育児休業給付金(最大67%)に上乗せして支給されるものです。
| 対象者 | 条件 | 給付率(上乗せ分) |
|---|---|---|
| 男性(被用者) | 子の出生後8週間以内に14日以上の育休取得 | 13%上乗せ(合計80%) |
| 女性(被用者) | 配偶者が産後パパ育休等を14日以上取得 | 13%上乗せ(合計80%) |
つまり、夫婦で産後すぐに14日以上の育休を取得すると、実質的に手取りがほぼ変わらない水準(給付率80%)で育休を取得できるようになります。
事業主への影響
男性の育児休業取得促進が図られており、事業主は以下の対応が求められます。
- 男性育休の取得促進・制度整備
- 育休中の業務体制の整備
- 育休取得を申し出やすい職場風土の醸成
なお、育休中の人手不足をカバーするために「両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース)」を活用することもできます。
改正ポイント③:育児休業給付の保険料率が変更(2025年4月施行)
育児休業給付の財政基盤を安定させるため、育児休業給付にかかる保険料率が引き上げられました。
| 区分 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 育児休業給付保険料率(全体) | 0.4% | 0.5% |
ただし、雇用保険全体の保険料率は国庫負担や積立金の状況に応じて弾力的に調整されるため、事業主・労働者それぞれの最終的な負担額は毎年の改定を確認する必要があります。
改正ポイント④:教育訓練給付が拡充(2025年10月施行予定)
「リスキリング(学び直し)」を推進するため、教育訓練給付の給付率が引き上げられます。
| 区分 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 専門実践教育訓練(受講中) | 受講費用の70% | 受講費用の80% |
| 専門実践教育訓練(修了後就職) | さらに+10%(計70%) | さらに+10%(計80%) |
在職中の従業員がスキルアップのために資格取得講座や専門学校に通う場合も給付対象となりますので、従業員の自己啓発を支援する制度として活用できます。
改正ポイント⑤:雇用保険の適用範囲が週10時間以上に拡大(2028年10月施行)
改正の内容
現在、雇用保険の加入要件は「週所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用見込み」ですが、2028年10月1日から週10時間以上に拡大されます。
| 区分 | 2028年9月30日まで | 2028年10月1日〜 |
|---|---|---|
| 雇用保険加入要件(労働時間) | 週20時間以上 | 週10時間以上 |
事業主への影響
この改正により、約500万人の労働者が新たに雇用保険の対象になると見込まれています。
特に、パートタイマーやアルバイトが多い飲食業・小売業・介護業等の事業主は、加入対象者が大幅に増加します。
- 雇用保険料の事業主負担増加:新たに加入する従業員分の保険料が発生
- 手続き負担の増加:加入・喪失等の事務処理件数が増える
- 給付の充実:対象となった従業員は育児休業給付・教育訓練給付等を受けられるようになる
2028年10月の施行まで時間がありますが、今のうちに週10〜19時間で働くパート・アルバイトの人数を把握し、加入後の保険料コストをシミュレーションしておくことをお勧めします。就業規則や雇用契約書の見直しも必要になる場合があります。
事業主が今すぐすべき3つの対応
①従業員の定着対策を強化する
自己都合退職の給付制限が1ヶ月に短縮されることで、退職のハードルが下がります。賃金・待遇の改善や職場環境の整備を通じて、人材の定着率を高める取り組みが必要です。
②男性育休取得の環境を整える
出生後休業支援給付金の創設により、男性育休の取得促進が進みます。制度を整備し、男性が育休を取得しやすい職場風土を作ることが、採用競争力の向上につながります。
③週10〜19時間のパート・アルバイトの管理体制を見直す
2028年10月の適用拡大に備え、現在の雇用実態を確認し、加入手続きの準備を進めておきましょう。給与計算システムの対応確認も必要です。
まとめ
| 改正ポイント | 施行時期 | 事業主への主な影響 |
|---|---|---|
| 自己都合退職の給付制限1ヶ月に短縮 | 2025年4月 | 退職しやすくなる→定着対策が必要 |
| 出生後休業支援給付金の新設 | 2025年4月 | 男性育休取得促進→制度整備が必要 |
| 育児休業給付の保険料率引き上げ | 2025年4月 | コスト確認・計算対応が必要 |
| 教育訓練給付の拡充 | 2025年10月予定 | 従業員教育支援として活用可能 |
| 雇用保険の適用範囲拡大(週10時間〜) | 2028年10月 | パート多数の企業は大きな影響→早めの準備を |
雇用保険法の改正は、従業員の行動パターンや事業主のコストに直結します。特にパート・アルバイトを多く雇用している事業主は、2028年の適用拡大に向けた準備を早めに始めることをお勧めします。
「うちの会社への具体的な影響が知りたい」「給与計算システムの見直しについて相談したい」という方は、お気軽に西宮の社会保険労務士事務所・SR竹田にご相談ください。




