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お知らせ



「退職金を払いたくない」「問題のある社員には退職金を減額・不支給にできる」と思っている経営者の方は少なくありません。しかし、そのような判断が裁判で覆り、1,000万円超の支払いを命じられた事例が東京地方裁判所で出ました(矢崎達也裁判官)。

今回は、この判決の内容をわかりやすく解説するとともに、退職金の不支給・減額が認められる条件と、会社が今すぐできる対策をお伝えします。


この裁判で何が起きたのか?

歯科技工業を営む会社に20年以上勤めた60歳代の労働者が、退職時に退職金を支払われなかったことを不服として裁判を起こしました。

会社側は「労働者に不適切な行為があった」として退職金の支払いを拒否していましたが、裁判所は次のような理由で会社に1,000万円超の退職金支払いを命じました。

  • 不適切な行為があったことは認めるが、これまで特段の注意処分・懲戒処分を受けていなかった
  • 20年以上の功労を「すべて抹消・減殺してしまうほど」の重大な問題行為とは言えない

また、労働者側が「60歳の定年退職時に会社都合で計算した退職金を受け取っていない」と主張した点については、裁判所は「再雇用ではなく継続雇用されている」として定年退職の事実を認めませんでした。


退職金の不支給・減額が認められる条件とは?

退職金は、就業規則や退職金規程で定められていれば「賃金」の一部とみなされます。そのため、会社が一方的に不支給にしたり減額したりすることは原則として許されません。

それでも、退職金の不支給・減額が裁判所に認められるケースには、以下のような条件が必要とされています。

① 就業規則や退職金規程に「不支給・減額規定」が明記されている

「懲戒解雇の場合は退職金を支給しない」「不正行為があった場合は退職金を減額できる」などの条項が必要です。規定がない状態で不支給にするのは無効です。

② 問題行為が「功労の全部・大部分を抹消するほど重大」である

過去の判例では、横領・背任・重大なハラスメント・機密漏洩など、会社に深刻な損害を与えた行為が「功労抹消」に当たるとされます。今回の事件のように、「不適切な行為はあるが大した処分もしてこなかった」というケースでは、認められません。

③ 事前に適切な注意・懲戒処分を行っていた

今回の判決が特に示唆しているのがこの点です。問題行為があっても、会社がきちんと注意・指導・処分をしてこなかった場合、後から「だから退職金を払わない」と言っても通用しません。


「継続雇用」と「再雇用」の違いも争点に

今回の事件では、60歳定年後の雇用形態も争われました。

  • 再雇用:一度退職した後、新たに雇用契約を結ぶ形式 → 定年時に退職金が発生する
  • 継続雇用:退職せずに雇用が継続される形式 → 定年退職の事実が生じない

裁判所は「この労働者は継続雇用であり、定年退職の事実は認められない」と判断しました。高年齢者雇用安定法の義務化に伴い、多くの企業が60歳以降の再雇用・継続雇用制度を設けています。雇用形態が「再雇用」なのか「継続雇用」なのかによって、退職金の発生タイミングが変わりますので、制度設計を明確にしておくことが重要です。


この判決から中小企業が学ぶべき3つの教訓

教訓①:退職金規程は「不支給・減額条項」を整備しておく

就業規則や退職金規程に「懲戒解雇の場合は退職金を支給しない」「重大な問題行為の場合は減額できる」などの条項がなければ、どんな事情があっても不支給・減額は認められません。まだ整備していない会社は早急に見直しましょう。

教訓②:問題行為には「その都度」きちんと対処する

「後でまとめて対処しよう」は絶対NG。問題行為が発生したら、口頭注意→書面注意→始末書→懲戒処分というステップで記録を残しながら対処することが大切です。今回のように「これまで何も処分していなかった」という事実が、会社側に不利に働きました。

教訓③:定年後の雇用形態を就業規則・雇用契約書に明確に記載する

「再雇用」と「継続雇用」のどちらなのか、退職金はどのタイミングで計算・支払うのかを、就業規則と個別の雇用契約書に明記しておきましょう。曖昧なまま運用していると、後から紛争の原因になります。


まとめ:退職金トラブルは「事前の整備」で防ぐ

今回の東京地裁判決は、「問題行為があれば退職金を払わなくていい」という考えが通用しないことを改めて示しました。重要なのは、問題が起きる前に就業規則・退職金規程を整備し、日頃から適切な労務管理を行っておくことです。

退職金規程の整備や、問題社員への対応方法についてお困りの場合は、西宮の社会保険労務士事務所(武田社労士事務所)にお気軽にご相談ください。

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※本記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。最新の法改正・判例については、専門家にご確認ください。
参考:全国社会保険労務士会連合会 NEWS HEADLINE(2026年8月25日)/労働新聞社

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