「景気の悪化で仕事が激減した…でも社員を解雇するわけにいかない」「一時的に休業させたいが、休業手当を全額払うと資金が持たない」——そんな切実な悩みを抱える中小企業の経営者・人事担当者の方に知っていただきたいのが、雇用調整助成金です。
この助成金は、経済的な理由で一時的に事業活動を縮小せざるを得なくなった事業主が、社員を解雇せずに雇用を維持した場合に、支払った休業手当の一部を国が補助してくれる制度です。
西宮市の社会保険労務士事務所「たけだリフテック社労士事務所」が、雇用調整助成金の仕組みをわかりやすく解説します。
雇用調整助成金とは?
雇用調整助成金(雇調金)は、景気の変動・産業構造の変化・その他の経済上の理由によって事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、休業・教育訓練・出向などの「雇用調整」を行うことで雇用を維持した場合に支給される助成金です。
コロナ禍(2020〜2022年)には特例措置で大幅に拡充されたことで多くの方が認知しましたが、現在は通常制度として令和8年4月1日現在も継続して受け付けられています。
売上の減少などで一時的に社員を休ませなければならないとき、解雇・退職ではなく「休業」という形で雇用を守り、その費用の一部を国が補助することで、企業の雇用維持と労働者の生活安定の両方を支える制度です。
どんな企業が対象になる?
以下の要件をすべて満たす雇用保険の適用事業主が対象です。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ①売上等の減少 | 最近3か月間の売上高・生産量等が前年同期比で10%以上減少していること |
| ②雇用保険の適用 | 雇用保険の適用事業主であること |
| ③雇用量の増加なし | 最近3か月間の雇用量(被保険者数)が前年同期と比べて増加していないこと |
| ④労使協定の締結 | 休業等の実施について労使間で協定を締結していること |
業種・規模の制限はなく、製造業・小売業・サービス業・建設業など、幅広い業種の中小企業が利用できます。
いくら助成される?(2026年度の助成率)
助成率は事業主規模によって異なります。休業手当として実際に支払った金額に対して、以下の割合が補助されます。
| 事業主区分 | 助成率(休業手当の補助) |
|---|---|
| 中小企業事業主 | 2/3(約66.7%) |
| 中小企業以外(大企業) | 1/2(50%) |
また、休業の代わりに教育訓練(社内外の研修・講習など)を実施した場合は、さらに1人1日あたり1,200円〜1,800円の加算があります(中小企業の場合)。
計算例(中小企業の場合)
たとえば、社員10人を1日休業させ、1人あたり8,000円の休業手当を支払った場合:
- 休業手当の合計:8,000円 × 10人 = 80,000円
- 助成金(2/3):80,000円 × 2/3 ≒ 約53,000円
事業主が実際に負担する費用は約27,000円(1/3)となります。
なお、1人1日あたりの助成額には上限額が設定されています(雇用保険の基本手当日額の最高額を基準とした金額)。詳細は申請時に確認してください。
助成対象となる「雇用調整」の種類
以下の3種類の雇用調整が対象です:
- 休業:一時的に仕事がない場合に社員を休ませること。労働基準法第26条に基づき、平均賃金の60%以上の休業手当を支払う必要があります。
- 教育訓練:仕事がない期間を活用して、社内研修・外部講習などのスキルアップ訓練を実施すること。加算あり。
- 出向:一時的に他の企業に社員を出向させること(在籍型出向)。
申請の流れ
- 売上等の確認:最近3か月間の売上高等が前年比10%以上減少していることを確認します。
- 労使協定の締結:休業実施について、労働組合または労働者代表との間で協定書を作成します。
- 休業等実施計画届の提出(原則:事前届出):休業を実施する前に、管轄のハローワークまたは都道府県労働局に計画届を提出します。※計画届は休業実施前の提出が原則です。事後の届出は原則認められません。
- 休業(または教育訓練・出向)の実施:計画に従い、社員に休業手当(平均賃金の60%以上)を支払いながら休業させます。
- 支給申請:休業等の実施後、対象期間終了日の翌日から2か月以内に支給申請書を提出します。
- 支給決定・受取:審査通過後、指定口座に助成金が振り込まれます。
注意点・よくある落とし穴
- 「事前届出」が原則:休業計画届は休業実施前に提出しなければなりません。実施後に届け出ても対象外になる場合がほとんどです。「休業させてから申請しよう」では遅いのでご注意ください。
- 休業手当の支払いが必須:助成金は「実際に支払った休業手当」に対して支給されます。休業手当を支払わずに助成金だけ申請することはできません。労働基準法第26条で定められた60%以上の支払いが前提です。
- 解雇・退職勧奨は厳禁:助成金を受給した期間中に社員を解雇・退職勧奨した場合は、不支給・返還になります。「雇用を守る」ための制度であることを忘れないでください。
- 売上減少の証明書類が必要:売上帳簿・納品書・売上台帳など、10%以上の売上減少を証明できる書類を準備しておく必要があります。
- 支給限度日数がある:1年間に支給される日数には上限(通常は100日、3年で150日)があります。計画的に活用することが大切です。
まとめ:解雇より休業を。雇用調整助成金で雇用を守ろう
雇用調整助成金は、売上が一時的に落ち込んでも、大切な社員を手放さずに済む制度です。採用・育成にコストをかけた社員を守ることは、業績回復後の競争力維持にもつながります。
「今まさに売上が落ちている」「休業手当の資金が心配」という事業主様は、まずは当事務所にご相談ください。計画届の作成から支給申請書の準備まで、スムーズに手続きを進められるようサポートします。
西宮市の社会保険労務士事務所「たけだリフテック社労士事務所」では、雇用調整助成金をはじめとする各種助成金の申請支援を承っております。お気軽にご連絡ください。




