パートや契約社員と正社員で「賃金の決め方が全然違う」という会社は多いのではないでしょうか。実は、この状況を改善して正規・非正規共通の賃金制度を整備するだけで、最大95万円の助成金を受け取れる制度があります。それがキャリアアップ助成金(賃金規定等共通化コース)です。
この記事では、社労士の立場から支給要件・支給額・申請の流れをわかりやすく解説します。
この助成金とは?
キャリアアップ助成金(賃金規定等共通化コース)は、有期雇用労働者等(パート・アルバイト・契約社員など)に対して、正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに作成・適用した事業主に対して助成する制度です。
同一労働同一賃金の考え方に基づき、非正規社員の処遇改善と賃金制度の透明性向上を目的としています。賃金表(賃金テーブル)を作るだけでなく、実際に適用することが求められます。
対象となる事業主・労働者
対象事業主の主な要件
- 雇用保険の適用事業主であること
- キャリアアップ計画書を作成し、コース実施日の前日までに管轄労働局長に提出・受理されていること
- 就業規則または労働協約の規定に基づき、正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに設け、適用していること
- 正規雇用労働者の賃金規定等を、新たに作成する非正規労働者の賃金規定等と同時またはそれ以前に導入していること
- 雇入れ・賃金・労働時間等に関する法令違反がないこと
対象となる労働者の要件
- 有期雇用労働者または無期雇用の短時間労働者であること
- 共通化の対象となる賃金規定等の適用日の前日から3か月以上前から継続して雇用されていること
- 共通化後も引き続き6か月以上継続して雇用されていること
- 支給申請時点で雇用保険の被保険者であること
支給額(2026年度)
本コースは事業所単位で支給され、さらに適用対象者が2人以上いる場合に加算があります。
基本支給額(1事業所あたり)
| 企業規模 | 通常 | 生産性要件クリア時 |
|---|---|---|
| 中小企業 | 57万円 | 72万円 |
| 大企業 | 42.75万円 | 54万円 |
加算額(2人目以降の対象労働者1人あたり)
| 企業規模 | 通常(1人あたり) | 生産性要件クリア時 | 加算上限 |
|---|---|---|---|
| 中小企業 | 2万円 | 2.4万円 | 20人まで |
| 大企業 | 1.5万円 | 1.8万円 |
支給額の計算例
例(中小企業・通常):有期雇用労働者10人に共通の賃金規定を適用した場合
→ 57万円(基本) + 2万円 × 9人(2人目以降)= 75万円
例(中小企業・対象20人・通常):
→ 57万円 + 2万円 × 19人 = 最大95万円
「賃金規定等の共通化」とは?具体例
正規・非正規に「共通の賃金規定」を設けるとは、たとえば次のような対応を指します。
- 正社員の賃金表(等級別・職務別の基本給テーブル)を非正規社員にも適用する
- 職務や役割に応じた賃金区分(ジョブグレード等)を正規・非正規を問わず共通で設定する
- 同じ業務をしている正社員とパートに同じ基本給テーブルを使用する
申請の流れ
- キャリアアップ計画書を作成・提出
コース実施日(共通化の適用日)の前日までに、管轄の都道府県労働局またはハローワークへ提出。労働組合等の意見を聴いて作成します。 - 就業規則の整備・共通賃金規定の作成
正規・非正規に共通の賃金規定等を就業規則または労働協約に定め、適用します。 - 対象労働者に6か月間賃金を支払う
共通化の適用後、6か月分の賃金(時間外手当等含む)を支払います。 - 支給申請書を提出
6か月分の賃金支払い日の翌日から2か月以内に支給申請書を管轄の都道府県労働局へ提出します。
生産性要件とは?
支給額の増額(通常→生産性要件クリア時)を受けるには、事業主が生産性向上の取り組みを行い、一定の要件を満たすことが必要です。具体的には、支給申請直近の会計年度の生産性が3年前より6%以上伸びていることが要件です。
よくある失敗・注意点
- 計画書の事前提出が必須:共通化の実施後に計画書を出しても不支給になります。必ず事前に提出してください。
- 非正規のみの賃金規定はNG:正規社員と共通の賃金規定でなければなりません。
- 6か月継続雇用の確認:共通化後6か月以内に対象労働者が退職すると対象外になる場合があります。
- 申請期限の厳守:賃金支払い後2か月以内という期限は厳守です。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成金名 | キャリアアップ助成金(賃金規定等共通化コース) |
| 対象 | 有期雇用・短時間労働者に正社員と共通の賃金規定を適用した事業主 |
| 支給額(中小企業) | 57万円/事業所 + 2万円/人(2人目以降、最大95万円) |
| 支給額(大企業) | 42.75万円/事業所 + 1.5万円/人(2人目以降) |
| 事前手続き | キャリアアップ計画書の事前提出(必須) |
| 申請期限 | 共通化後6か月分の賃金支払い後2か月以内 |
| 申請窓口 | 都道府県労働局・ハローワーク(電子申請可) |
同一労働同一賃金への対応と助成金の受給を同時に実現できる制度です。非正規労働者の処遇改善を検討中の事業主様は、ぜひ活用をご検討ください。
キャリアアップ計画書の作成から申請まで、社労士が全面的にサポートします。お気軽にご相談ください。
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