厚生労働省が令和7年度の「過労死等の労災補償状況」を公表しました。精神障害(うつ病・適応障害など)に関する労働災害の請求件数・認定件数がともに過去最多を更新し、企業の人事労務担当者にとって見逃せないデータとなっています。今回は、この統計のポイントと、会社として今すぐ取り組むべき対策を、西宮市の社会保険労務士が分かりやすく解説します。
令和7年度の統計データ:精神障害の労災が記録を更新
厚生労働省が発表した令和7年度(2025年度)の過労死等労災補償状況によると、精神障害に関する数字は以下のとおりです。
| 区分 | 令和7年度 | 前年度比 | 連続最多更新 |
|---|---|---|---|
| 請求件数 | 4,958件 | +1,178件 | 5年連続最多 |
| 認定件数 | 1,082件 | +26件 | 4年連続最多 |
請求件数は一気に約1,200件も増加し、ついに5,000件に迫る勢いです。認定件数も初めて1,000件を超え、精神的な問題が「業務上の病気(職業病)」として認められるケースが着実に増えています。
原因の1位はパワハラ、カスハラ・セクハラも急増
認定された事案のうち、心理的な負荷(ストレスのもと)となった「出来事」を見ると、ハラスメント関連が目立ちます。
| ハラスメントの種類 | 認定件数 | 前年比増減 |
|---|---|---|
| パワーハラスメント(パワハラ) | 222件 | (1位) |
| カスタマーハラスメント(カスハラ) | 127件 | +19件 |
| セクシュアルハラスメント(セクハラ) | 127件 | +22件 |
特に注目すべきはカスタマーハラスメント(カスハラ)の増加です。顧客・取引先からの暴言・クレーム・不当要求などが、従業員の精神的健康を脅かしており、会社として対策が求められる場面が増えています。
この統計が示す「3つの怖いリスク」
①労災認定=会社が直接問われるケースも
労働災害が認定されると、労災保険から給付が行われます。しかし、それとは別に安全配慮義務違反として会社が民事上の損害賠償を請求される可能性があります。認定件数が1,000件を超えた今、「うちの会社は大丈夫」と油断できません。
②請求件数は認定件数の約4.6倍
請求が4,958件に対して認定が1,082件ということは、認定されなかった3,800件超の案件がある、ということでもあります。たとえ労災認定に至らなくても、訴訟や労働審判に発展するリスクが残ります。
③カスハラは会社の責任が問われやすい
令和7年4月から施行された改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)では、カスタマーハラスメントへの対策が事業主の責務として明文化されました(努力義務から義務化へ)。対策なしでは、従業員から「会社が守ってくれなかった」と訴えられるリスクが高まります。
会社が今すぐすべき4つの対策
1. ハラスメント防止規程・相談窓口の整備
就業規則にハラスメント禁止規定を明記し、社内相談窓口(内部)と外部相談窓口の両方を設けましょう。特にカスハラについては、顧客対応マニュアルや悪質クレームへの対応フローを整備することが重要です。
2. 管理職向けハラスメント研修の実施
パワハラのほとんどは上司・管理職が行為者です。年1回以上の研修を通じて、どこからがハラスメントになるのか、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)とは何かを理解させましょう。
3. ストレスチェックの活用と職場環境改善
従業員50人以上の事業場では年1回のストレスチェックが義務付けられていますが、結果を活かして集団分析・職場改善まで行っている会社はまだ少数派です。高ストレス者が多い職場の環境改善が、労災予防の第一歩です。
4. 産業医・社労士との連携強化
メンタルヘルス不調者が出た場合、対応を誤ると問題が長引きます。休職・復職支援の手順書(復職支援プログラム)を事前に整備し、産業医や社労士と連携した対応体制を整えておきましょう。
まとめ
精神障害の労災認定が4年連続で過去最多を更新したことは、職場のメンタルヘルス問題が深刻化していることを示しています。特にパワハラ・カスハラ・セクハラの増加は、すべての企業にとって人ごとではありません。
就業規則の整備やハラスメント対策でお困りの場合は、西宮市のたけだ社会保険労務士事務所にお気軽にご相談ください。初回相談は無料で承っております。
参考:社会保険労務士会連合会 情報サポートニュース(2026年7月28日)




