「ハローワークで就職困難者を採用したら助成金がもらえると聞いたが、どんな制度なのか?」「高齢者や障害者を採用すると、いくらもらえるの?」
こうした疑問にお答えするのが、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)です。高齢者・障害者・母子家庭の母など、就職が特に困難な方をハローワーク経由で採用すると、中小企業は最大240万円の助成を受けられる制度です。
本記事では、対象者の種類・支給金額・申請手続きを、西宮の社会保険労務士がわかりやすく解説します。
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)とは
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、就職が特に困難な方(就職困難者)を、ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により継続雇用する労働者として雇い入れた事業主に対して、賃金の一部を最長3年間助成する制度です。
就職困難者の採用促進と雇用安定を目的とし、企業の採用コスト・教育訓練コストを軽減する効果があります。
支給対象となる就職困難者の種類
以下のいずれかに該当する方が「就職困難者」として対象になります。
① 高年齢者(60歳以上65歳未満)
定年退職後の再就職支援・高齢者の就業継続を目的とした雇用が対象です。
② 障害者
- 身体障害者(身体障害者手帳所持者)
- 知的障害者(療育手帳所持者)
- 精神障害者(精神障害者保健福祉手帳所持者)
- その他障害者(発達障害者・難病患者等)
③ 母子家庭の母・父子家庭の父
20歳未満の子を扶養するひとり親が対象です。
④ その他の就職困難者
- 中国残留邦人等
- 刑務所出所者等
- ホームレス
- 住所喪失不安定就労者
- 長期失業者(雇い入れ日前において直近1年間に離職した期間が6か月を超える者等)
支給対象となる事業主の要件
主な支給要件
- ハローワーク等の紹介状を受けて対象者を雇い入れること(縁故採用・直接採用は対象外)
- 対象者を雇用保険の一般被保険者(週所定労働時間20時間以上)として採用すること
- 雇用保険の適用事業主であること
- 雇い入れ日前後の6か月以内に事業主都合による解雇等がないこと
- 同一の対象者について、過去に本助成金の支給を受けていないこと
支給対象外となる主なケース
- 取締役・役員として採用する場合
- 事業主の3親等以内の親族を採用する場合
- 同一事業所で直近3年以内に雇用されていた者を再雇用する場合
- 試用目的の採用(雇用見込みが明確でない場合)
支給金額・支給期間(令和8年度)
| 対象者の区分 | 中小企業 | 中小企業以外 | 支給期間 |
|---|---|---|---|
| 60歳以上65歳未満の高齢者 | 60万円 | 50万円 | 1年間 |
| 母子家庭の母・父子家庭の父等 | 60万円 | 50万円 | 1年間 |
| 身体・知的障害者(一般) | 120万円 | 50万円 | 1年6か月間 |
| 精神障害者 | 120万円 | 50万円 | 1年6か月間 |
| 重度身体・重度知的障害者、45歳以上の身体・知的障害者 | 240万円 | 100万円 | 3年間 |
| その他の就職困難者(長期失業者等) | 90万円 | 60万円 | 1年間 |
※支給額は、6か月ごとに支払った賃金の一定割合(中小企業は2/3、中小企業以外は1/2)を計算した額と上表の限度額のいずれか低い方が支給されます。
具体例:中小企業が重度身体障害者を月給20万円で採用した場合
- 6か月間の賃金:20万円 × 6か月 = 120万円
- 2/3相当額:80万円(<第1回限度額80万円)
- 第1回支給額:80万円
- 同様に第2回・第3回も各80万円 → 合計 240万円
申請手続きの流れ
ステップ① ハローワークへ求人申込み
まずハローワーク(または民間職業紹介事業者等)に求人を申し込み、紹介状の発行を受けてから採用することが必須です。先に採用してから紹介状をもらうことはできません。
ステップ② 対象者の雇い入れ
紹介状を持参した就職困難者を、雇用保険の一般被保険者として雇い入れます。雇用契約書・労働条件通知書を必ず作成・交付してください。
ステップ③ 雇用後6か月間の適正管理
賃金台帳・出勤簿・タイムカードを適切に管理します。雇用期間中に解雇・自己都合退職が発生すると支給対象外となる場合があります。
ステップ④ 第1回支給申請(雇い入れから6か月後)
雇い入れ日から起算して6か月が経過した翌日から2か月以内に、管轄ハローワークまたは都道府県労働局に支給申請書を提出します。
主な必要書類
- 支給申請書
- 雇用契約書(写)
- ハローワークの紹介状(写)
- 賃金台帳(支給対象期間分)
- 出勤簿・タイムカード(支給対象期間分)
- 対象者の資格証明書(障害者手帳、母子家庭証明書など)
- 労働保険料の申告書(写)または保険料領収書
よくある質問
Q. パート・アルバイトでも対象になりますか?
週所定労働時間が20時間以上であれば対象になります。ただし週20時間以上30時間未満の短時間被保険者として採用した場合は、支給額が3/4に減額されます。
Q. 障害者を採用予定です。事前に何か手続きが必要ですか?
事前の計画書提出は不要ですが、必ずハローワーク等の紹介状を受けてから採用してください。先に採用した場合は対象外になります。
Q. 試用期間も支給対象期間に含まれますか?
はい、試用期間も含めて支給対象期間に算入されます。ただし試用期間終了後に本採用しない場合は対象外です。
Q. 他の助成金と組み合わせることはできますか?
障害者を採用する場合、障害者介助等助成金(職場介助者の配置・委嘱)や職場適応援助者助成金(ジョブコーチ)との併給が可能な場合があります。詳しくはハローワークや社会保険労務士にご確認ください。
注意点・不正受給への対応
支給申請後に実態調査が行われる場合があります。以下の点に注意してください。
- 対象者を実際に就労させずに賃金を支払うなど虚偽の申請を行った場合、支給額の返還+2倍の返還命令(不正受給加算金)が科されます
- 雇い入れ前後6か月以内に事業主都合の解雇があると対象外になります
- 申請期限(雇い入れ日から6か月後の翌日~2か月以内)を過ぎると不支給になります
まとめ
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、就職困難者を採用する中小企業にとって最大240万円という大きな助成が受けられる制度です。
特に重度障害者を採用する企業にとっては3年間にわたる手厚い支援が受けられ、採用・定着コストの大幅な軽減が期待できます。ただし「ハローワーク経由での採用」「適切な雇用管理」「期限内の申請」という要件を厳守することが重要です。
助成金申請を成功させるには、雇い入れ前からの準備と書類管理がカギを握ります。専門家のサポートを活用して、確実に受給を目指しましょう。
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