建設業は長年にわたり深刻な人手不足に悩まされています。特に若者・女性の入職者が少ないことが課題です。厚生労働省の調査によると、建設業の女性就業者割合は約15%にとどまっており、女性が安心して働ける環境整備が急務となっています。
そんな建設業の人材確保を後押しする制度が、人材確保等支援助成金(作業員宿舎等設置助成コース(建設分野))です。現場に女性専用のトイレや更衣室などを設置した中小建設事業主に対して、設置費用の一部を国が助成する制度です。
本記事では、西宮市の社会保険労務士が、この助成金の支給要件・支給額・申請手続きをわかりやすく解説します。
人材確保等支援助成金(作業員宿舎等設置助成コース)とは?
人材確保等支援助成金は、魅力ある職場環境づくりを通じて人材の確保・定着を促進することを目的とした助成金です。作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)はその中の一つで、建設現場での女性専用作業員施設の設置・賃借に要した費用を助成します。
令和8年度も継続して受付中であり、女性採用に力を入れたい中小建設事業主にとって活用しやすい制度です。
このコースの助成区分
作業員宿舎等設置助成コースは、大きく以下の3区分があります。
| 区分 | 対象 | 助成率 | 上限額 |
|---|---|---|---|
| ①女性専用作業員施設設置経費助成 | 全国の中小建設事業主 | 3/5(賃金向上要件達成時は3/4) | 賃金向上助成との合計90万円/年 |
| ②作業員宿舎等経費助成(石川県) | 能登半島地震復興工事を施工する建設事業主 | 賃借料等の2/3(宿舎は1人25万円) | 200万円/年 |
| ③訓練施設等設置経費助成 | 広域的職業訓練を実施する職業訓練法人 | 1/2 | 3億円/計画 |
一般の建設会社が活用できるのは主に①女性専用作業員施設設置経費助成です。以下ではこの区分を中心に解説します。
①女性専用作業員施設設置経費助成の詳細
対象事業主の要件
- 雇用保険の適用事業主であること
- 中小建設事業主(資本金3億円以下または常時使用する労働者数300人以下)であること
- 自ら施工管理を行う建設工事現場において、女性専用作業員施設を設置・賃借する事業主であること
- 雇用管理責任者を選任していること
助成対象となる施設(女性専用作業員施設)
以下の施設が助成の対象となります。これらは建設工事現場に設置され、移動可能であることが条件です。
- 更衣室
- シャワー室
- 浴室
- 便所(トイレ)
施設には以下の条件も必要です。
- ドアに「女性専用」の旨を明示し、施錠機能を備えていること
- 男性向けの同等施設も整備されていること
- 施設の利用者から料金を徴収しないこと
支給額の計算方法
支給額は以下の計算式で算出します。
経費助成:支給対象費用 × 3/5(賃金向上要件達成時は3/4)
賃金向上助成:支給対象費用 × 3/20(賃金向上要件達成時に追加)
1事業年度の合計上限:90万円(経費助成 + 賃金向上助成の合計)
賃金向上要件とは、助成を受けた事業年度の翌年度において、対象労働者の賃金を一定率以上引き上げることです。賃金向上要件を達成すると、助成率が3/5から3/4に上がる仕組みになっています。
申請前に必要な「計画届」の提出
この助成金を受けるためには、施設の賃借事業を開始する原則2週間前までに、計画届を管轄の都道府県労働局に提出する必要があります。
計画届を出さずに施設を設置してしまうと、助成金を受け取れないため、事前の届出が必須です。
申請(支給申請)のタイミング
建設分野の助成金は、事業終了月の区分に応じて年4期間(7月末・9月末・12月末・5月末)に分かれて申請します。担当の労働局またはハローワークに確認しながら進めてください。
②作業員宿舎等経費助成(石川県)について
能登半島地震(令和6年1月1日以降に開始した工事現場)の復旧・復興工事に従事する建設労働者の宿舎・施設費用を助成する制度です。
- 作業員宿舎:1人あたり25万円(上限200万円/年)
- 賃貸住宅・作業員施設:賃借料等の2/3(上限200万円/年)
公共工事は原則対象外です。石川県内で能登半島地震の復興工事に関わる事業主はご確認ください。
活用事例:建設業での活用イメージ
例えば、従業員30人の中小建設会社が工事現場に女性専用の更衣室・トイレ(移動式プレハブ)を設置した場合を考えてみましょう。
- 設置費用(賃借料):年間100万円
- 経費助成(3/5):60万円
- 賃金向上要件達成時の賃金向上助成(3/20):15万円
- 合計受給額:75万円(上限90万円の範囲内)
女性が働きやすい環境を整えつつ、コストを大幅に抑えることができます。
他の建設業向け助成金との組み合わせも可能
人材確保等支援助成金(作業員宿舎等設置助成コース)は、他の助成金と組み合わせて活用できる場合があります。例えば:
- 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース:建設業で女性・若者向けの雇用環境改善に取り組む場合に支給
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)活用促進コース:技能者のキャリアを見える化するCCUSを活用することで支給
- 両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース):育休中の業務カバーを外部スタッフで対応した場合に支給
複数の助成金を上手に組み合わせることで、人材投資の負担を大きく軽減できます。
申請の注意点
- 計画届の事前提出が必須:施設賃借開始の原則2週間前までに提出してください
- 対象施設は移動可能なもの:固定構造物は対象外の場合があります
- 男性向け同等施設の整備も必要:女性専用施設だけでなく、男性向け施設との均衡が求められます
- 利用料金の徴収禁止:従業員から使用料を取ることは認められません
- 書類の整備:賃借契約書・支払証明書・施設の写真など証拠書類の保管が必要です
まとめ
人材確保等支援助成金(作業員宿舎等設置助成コース(建設分野))は、建設現場に女性専用トイレや更衣室などを設置・賃借した中小建設事業主に対して、設置費用の3/5・最大90万円を助成する制度です。
建設業では慢性的な人材不足が続いており、女性や若者を採用するためには「働きやすい現場環境」の整備が欠かせません。この助成金を活用することで、コストを抑えながら女性が働きやすい環境を整えることができます。
申請には事前の計画届が必要なため、施設の設置・賃借を検討している段階からの早めの準備が重要です。申請書類の作成・計画届の提出については、社会保険労務士にご相談いただくことをおすすめします。
西宮の社労士に相談する
sr竹田社会保険労務士事務所(西宮市)では、建設業の助成金申請サポートを行っています。「自社が対象になるか確認したい」「計画届の書き方がわからない」など、お気軽にご相談ください。
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