厚生労働省は2026年(令和8年)8月26日、令和9年度(2027年度)予算の概算要求をまとめました。一般会計の要求総額は36兆5,803億円と、前年度(令和8年度当初予算)比で1兆5,370億円増加という過去最大級の規模となっています。
「予算の概算要求って何?自分の会社に関係あるの?」と思われた経営者の方、実は来年度の社会保険料率の動向・助成金の財源・年金給付額の水準に直結する非常に重要なニュースです。今回は西宮の社労士が、この概算要求の中身をわかりやすく解説し、経営者・人事担当者が今から準備すべきポイントをお伝えします。
そもそも「概算要求」って何?
毎年8月末、各省庁は翌年度に使いたいお金の「申請書」を財務省に提出します。これを概算要求と呼びます。その後、秋から年末にかけて財務省との折衝(いわゆる「査定」)が行われ、12月末に最終的な予算案が閣議決定されます。
つまり、この段階ではまだ「決定」ではありませんが、来年度の政策の方向性・重点分野を把握する上で非常に重要な情報源です。
令和9年度 厚労省予算の全体像
| 区分 | 要求額 | 前年度比 |
|---|---|---|
| 一般会計 合計 | 36兆5,803億円 | +1兆5,370億円 |
| 年金・医療等経費 | 33兆6,872億円 | +3,397億円 |
| うち年金関係 | 13兆8,263億円 | +32億円 |
| 「強く豊かな日本」投資枠 | 1兆337億円 | 新設 |
今回の特徴は、令和9年度から新設された「強く豊かな日本」投資枠(1兆337億円)を活用していること。医療・介護・福祉分野の賃上げ・経営安定化、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)、創薬・医療機器産業の成長支援などが重点化されています。
年金関連:13兆8,263億円の主な内容
1. 基礎年金の国庫負担2分の1を維持
国民年金(基礎年金)の給付費のうち、国が2分の1を負担する仕組みは令和9年度も維持されます。この国庫負担が維持されることで、老齢基礎年金の給付水準が守られます。
2. 年金生活者支援給付金の継続
所得が一定基準以下の高齢者・障害者・遺族に対する年金生活者支援給付金は令和9年度も引き続き支給されます。従業員の退職後の生活保障という観点でも重要な制度です。
3. iDeCo(個人型確定拠出年金)の普及促進
「資産運用立国」の取り組みの一環として、iDeCo(イデコ)を含む私的年金の普及促進が令和9年度の重点施策に位置づけられています。iDeCoは従業員にとって節税効果の高い老後資産形成の手段です。
【経営者へのポイント】従業員が iDeCo に加入しやすい環境づくり(給与計算での適切な取り扱いなど)を今から確認しておきましょう。
医療・介護・福祉分野の賃上げ支援
今回の予算要求で最大の焦点の一つが、医療・介護・福祉分野の賃上げです。「強く豊かな日本」投資枠1兆337億円の主な使途として、次の分野への集中投資が明示されています。
- 医療・介護・福祉分野の賃上げ支援(診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の適正化)
- 経営安定化(中小病院・訪問介護事業所等の経営基盤強化)
- 医療DX(電子カルテ標準化・オンライン資格確認の活用)
- 創薬・医療機器産業の国際競争力強化
介護や医療関連の事業を営む経営者の方は、来年度の診療報酬・介護報酬改定の動向に引き続き注目してください。
注目:給付付き税額控除の今後は?
政府が令和11年度(2029年度)からの本格導入を予定している「給付付き税額控除」ですが、今回の概算要求では財源が明示されませんでした。
給付付き税額控除とは、所得税の控除額が税額を上回る場合に、その差額を現金給付する仕組みです。低所得者の支援策として議論されていますが、令和9年度からの「経過措置(つなぎ)」の財源は、今後の査定・年末の予算編成・税制改正論議の中で詰められる予定です。
実務への影響が出るとすれば給与計算・源泉徴収の仕組みが変わる可能性があります。動向を注視してください。
経営者・人事担当者が今から備えること
- 社会保険料コストの増加に備える
医療・介護・年金の給付費が膨らむ中、社会保険料率は横ばいまたは増加傾向が続く見通しです。特に介護保険料は第9期(2027年度〜)に向けて改定される可能性が高く、給与コスト計画に影響します。 - iDeCoの活用環境を整える
従業員向けに iDeCo の説明機会を設けることで、採用力の向上と節税効果の周知ができます。社労士に相談して、企業型DCとの選択・併用ルールも確認しましょう。 - 医療・介護・福祉事業者は来年度報酬改定に注目
「強く豊かな日本」投資枠で医療・介護関係事業者への支援が拡充されます。補助金・報酬改定情報を早めにキャッチし、資金計画に反映させましょう。 - 給付付き税額控除の動向をウォッチ
令和9年度の経過措置が具体化した場合、給与計算システムの改修が必要になる可能性があります。顧問の社労士・税理士とこまめに情報共有してください。
まとめ
令和9年度の厚労省予算概算要求(36兆5,803億円)の主なポイントをまとめます。
- 総額は前年度比1兆5,370億円増で過去最大規模
- 年金関係は13兆8,263億円(基礎年金の国庫負担2分の1を維持)
- 新設「強く豊かな日本」投資枠(1兆337億円)で医療・介護・福祉分野の賃上げ・DX・産業育成を重点化
- iDeCoを含む私的年金の普及促進が明記
- 給付付き税額控除の財源は年末の予算・税制論議で決定予定
来年度の社会保険・労働行政の方向性が見えてきました。12月の予算閣議決定に向けて、引き続き情報収集を続けましょう。
社会保険手続き・給与計算・助成金申請でお困りの経営者の方は、西宮市の社会保険労務士事務所 SR武田(srtakeda.com)にお気軽にご相談ください。
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