「パートやアルバイトの賃金を上げたいが、コストが心配」「最低賃金が上がって、非正規社員の時給を引き上げなければならない」という経営者・人事担当者の方はいませんか?
キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)は、有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者等の賃金を3%以上引き上げた事業主に対し、1人あたり最大6万5千円を支給する助成金です。賃上げの負担を国が後押ししてくれる制度で、中小企業にとって特に活用しやすい制度です。
今回は、この助成金の概要・要件・支給額・申請手続きをわかりやすく解説します。
キャリアアップ助成金とは?
キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者などのいわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するために厚生労働省が設けた助成金です。以下の複数のコースがあります。
| コース名 | 主な対象 |
|---|---|
| 正社員化コース | 有期雇用→正社員への転換 |
| 障害者正社員化コース | 障害のある有期雇用→正社員への転換 |
| 賃金規定等改定コース | 非正規社員の賃金を3%以上引き上げ |
| 賃金規定等共通化コース | 正規・非正規の賃金規定を共通化 |
| 賞与・退職金制度導入コース | 非正規社員への賞与・退職金制度の導入 |
| 短時間労働者労働時間延長コース | 短時間労働者の労働時間を延長し社保加入へ |
今回解説する賃金規定等改定コースは、非正規社員の賃金を積極的に引き上げたい中小企業に特に有効なコースです。
賃金規定等改定コースとは?
制度の目的
有期雇用労働者等の待遇改善・賃金引き上げを促進するため、賃金規定または賃金テーブルを改定し、実際に賃金を3%以上引き上げた事業主に対して助成金を支給する制度です。
令和8年10月に兵庫県の最低賃金が1,172円に引き上げられるなど、賃上げへの社会的要請が高まっています。この助成金を活用することで、賃上げコストの一部を国に補ってもらいながら、非正規社員の処遇改善を進めることができます。
「賃金規定を改定する」とは
単に個人の賃金を増やすだけでは対象になりません。就業規則・賃金規定・賃金テーブル等を書面で改定し、それに基づいて賃金を引き上げることが要件です。個別的な賃金変更(賃金台帳のみの変更)は対象外となります。
支給対象・支給要件
対象事業主の主な要件
- 雇用保険の適用事業主であること
- キャリアアップ計画を作成し、管轄のハローワークに届け出ていること
- 賃金規定等を改定し、その後に対象労働者の賃金を3%以上引き上げること
- 支給申請日の前日から起算して3年前の日から支給申請日までの間に、重大な法令違反等がないこと
対象労働者の主な要件
- 有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者のいずれかであること
- 雇用保険被保険者であること
- 賃金規定等改定日の前日から起算して3か月以上、対象事業主に雇用されていること
- 改定後の賃金が3%以上引き上げられていること
※同一の事業主のもとで、同じ年度内に申請できる人数の上限は100人までです。
支給額
引き上げ率に応じて、以下のとおり支給額が異なります(令和8年度現在)。
| 賃金引き上げ率 | 中小企業(1人あたり) | 大企業(1人あたり) |
|---|---|---|
| 3%以上5%未満 | 5万円 | 3万3,000円 |
| 5%以上 | 6万5,000円 | 4万3,000円 |
例えば、中小企業でパート社員10人の時給を5%以上引き上げた場合、最大65万円の助成金を受け取ることができます。
なお、生産性要件(直近3事業年度の生産性が6%以上伸びているなど)を満たした場合、支給額がさらに加算されます。詳細はハローワークにご確認ください。
申請の流れ
STEP 1:キャリアアップ計画の作成・届出
まず、労働組合等の意見を聴いた上でキャリアアップ計画を作成し、管轄のハローワークに提出します。計画期間は3年以上5年以内で設定します。賃金規定の改定より前に届け出ている必要があるため、早めの準備が重要です。
STEP 2:賃金規定等の改定
就業規則・賃金規定・賃金テーブル等を改定します。改定内容は書面(就業規則の別規程や賃金テーブルなど)に明示し、対象となる全ての有期雇用労働者等の賃金を一律に3%以上引き上げる規定とする必要があります。
STEP 3:改定後の賃金支払い(3か月以上)
改定後の賃金を3か月以上にわたって支払います。この実績が助成金申請の要件となります。
STEP 4:支給申請
賃金支払い実績が3か月以上確認できた後、支給申請書と添付書類をハローワークに提出します。申請期限は、賃金改定月の翌月から起算して3か月以内ですので、申請期限を逃さないよう管理することが重要です。
主な添付書類
- キャリアアップ計画書(届出済みのもの)
- 改定前・改定後の賃金規定等(就業規則の抜粋など)
- 改定後3か月分の賃金台帳・出勤簿
- 雇用契約書または労働条件通知書
活用に向いている会社とは?
次のような会社は、この助成金を積極的に活用することをお勧めします。
- 最低賃金引き上げに伴い、パートや契約社員の時給を引き上げる必要がある会社
- 非正規社員の定着率を上げるために待遇改善を検討している会社
- 同一労働同一賃金への対応で、非正規社員の賃金体系を整備したい会社
- 複数の非正規社員を雇用している中小企業(1人あたり最大6万5千円で人数分支給)
- キャリアアップ計画を未策定で、今後他のコースも活用したいと考えている会社
注意点
① キャリアアップ計画の届出が先
賃金規定の改定より前にキャリアアップ計画を届け出ていない場合、助成金は受けられません。「先に賃金を上げてから申請しよう」という手順では対象外になるため、必ず計画届出を先に行ってください。
② 「一部の人だけ」の賃上げは対象外
賃金規定等を改定した場合、その規定の適用を受ける全ての有期雇用労働者等の賃金を引き上げる必要があります。特定の人だけ引き上げた場合は対象になりません。
③ 申請期限(3か月以内)を厳守
賃金改定月の翌月から3か月以内に申請しないと、その分の申請権が失効します。タイムラインをしっかり管理してください。
④ 他のキャリアアップ助成金コースとの組み合わせ
同一の対象者に対して、正社員化コースと賃金規定等改定コースを同時に活用することはできませんが、別の対象者や別のタイミングで他のコースを活用することは可能です。
まとめ
キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)は、非正規社員の賃金を3%以上引き上げた中小企業に1人あたり最大6万5千円を支給する、賃上げ支援の代表的な制度です。最低賃金引き上げの波が続く中、賃上げコストを国に補ってもらいながら、非正規社員の処遇改善と定着率向上を同時に実現できます。
「キャリアアップ計画の作成から申請まで手続きが不安」「自社の非正規社員が対象になるか確認したい」という方は、西宮の社会保険労務士事務所(武田社労士事務所)にお気軽にご相談ください。助成金の申請サポートから、就業規則・賃金規定の整備まで幅広く対応しています。
※本記事は2026年10月時点の情報をもとに作成しています。助成金の要件・支給額は改正により変更になる場合があります。最新情報は厚生労働省・ハローワークの公式サイト、または最寄りのハローワークにご確認ください。
参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金」(令和8年度版)

コメントを残す