社員の能力アップに取り組む中小企業の経営者・人事担当者の皆様、「人材育成にコストをかけたいけど、費用が心配」という声はよく耳にします。そんな事業主を支援する制度が「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)」です。
本制度を活用すれば、社員に対する職業訓練(Off-JT)の経費や訓練中の賃金の一部を国が助成してくれます。中小企業の場合、訓練経費は最大45%、賃金助成は1時間あたり960円を受け取ることができます。令和8年4月には45歳以上の中高年齢者を対象とした「中高年齢者実習型訓練」が新設され、活用の幅がさらに広がりました。
この記事では、西宮市の社会保険労務士事務所の視点から、人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の概要・要件・助成額・申請手続きをわかりやすく解説します。
人材開発支援助成金(人材育成支援コース)とは?
人材開発支援助成金(人材育成支援コース)は、厚生労働省が設ける雇用関係助成金のひとつです。
事業主が雇用する労働者に対し、職務に関連した専門的な知識・技能を習得させるための職業訓練を実施した場合に、その訓練経費と訓練中の賃金の一部を助成します。
対象となる訓練は大きく分けて以下の2種類です。
- 特定訓練活動:OJT付き訓練・中高年齢者実習型訓練・若年者実習型訓練・正社員化訓練
- 一般訓練活動:一般職業訓練・育児休業中訓練
対象となる事業主の要件
本コースを利用できる事業主の主な要件は以下のとおりです。
- 雇用保険の適用事業主であること
- 職業能力開発推進者を選任していること
- 訓練を行う対象労働者は、雇用保険被保険者であること
- 訓練を実施する前に、管轄の労働局(またはハローワーク)に「職業訓練実施計画届」を提出していること
- 雇用関係助成金の支給要件(不正受給・重大な法令違反がないこと等)を満たしていること
対象となる訓練の要件
助成対象となる職業訓練には、次のような要件があります。
特定訓練活動
- OJT付き訓練:Off-JT(座学・外部研修等)とOJT(職場内実習)を組み合わせた訓練。厚生労働大臣の認定が必要
- 中高年齢者実習型訓練(令和8年4月新設):45歳以上の雇用労働者を対象とした実習型訓練
- 若年者実習型訓練:45歳未満の若年者を対象とした実習型訓練
- 正社員化訓練:有期契約労働者等を正社員へ転換することを目的とした訓練
一般訓練活動
- 一般職業訓練:職務に関連した専門的な知識・技能を習得するための訓練(外部研修等を含む)
- 育児休業中訓練:育児休業中の労働者に対し、スキルアップを目的として実施する訓練
助成額・助成率一覧
本コースの助成は「訓練経費助成(Off-JT経費助成)」と「賃金助成(Off-JT賃金助成)」、そしてOJT付き訓練の場合は「OJT実施助成」の3種類があります。
訓練経費助成(Off-JT)
| 訓練の種類 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 特定訓練活動(OJT付き訓練・実習型訓練・正社員化訓練) | 45% | 25% |
| 一般訓練活動(一般職業訓練・育児休業中訓練) | 30% | 15% |
賃金助成(Off-JT時間助成)
| 事業主規模 | 1時間あたり助成額 |
|---|---|
| 中小企業 | 960円 |
| 大企業 | 480円 |
OJT実施助成(OJT付き訓練の場合のみ)
| 事業主規模 | 1時間あたり助成額 |
|---|---|
| 中小企業 | 665円 |
| 大企業 | 380円 |
※訓練時間の上限は1訓練あたり最大1,200時間です。
令和8年度の主な変更点:中高年齢者実習型訓練の新設
令和8年4月8日より、45歳以上の中高年齢者を対象とした「中高年齢者実習型訓練」が新設されました。
この訓練は以下の特徴があります。
- 対象:45歳以上の雇用保険被保険者(雇用する労働者)
- 訓練内容:OJT(実習)とOff-JT(座学等)を組み合わせた実習型訓練
- 助成率:特定訓練活動として中小企業は訓練経費の45%、賃金助成960円/時間
これにより、ベテラン社員のリスキリング・スキルアップ支援にも本助成金が積極的に活用できるようになりました。DX推進やAI活用など、急速に変化するビジネス環境への対応として、中高年齢者のスキル再構築(リスキリング)に力を入れたい事業主様にも朗報です。
申請の手続き(流れ)
人材育成支援コースの申請は大きく次の流れで進みます。
- ステップ1:訓練開始の1ヶ月前までに「職業訓練実施計画届」を管轄の労働局に提出
- ステップ2:訓練を実施(出席簿・経費証憑等を保管)
- ステップ3:訓練終了後2ヶ月以内に「支給申請書」を提出
- ステップ4:審査・支給
申請書類には、訓練計画書・受講記録・費用明細書・給与明細等が必要です。申請の際は事前に管轄の労働局またはハローワークへご相談ください。
また、電子申請は「雇用関係助成金ポータル」からも可能です。
活用のポイント:こんな研修・訓練が対象になります
「どんな研修や訓練が対象になるの?」という疑問をよくいただきます。対象となる主な訓練の例を挙げます。
- 外部の研修機関・セミナーへの参加費(業務に関連するもの)
- e-ラーニングによる資格取得・スキルアップ研修
- 社内OJTと座学を組み合わせた体系的な訓練プログラム
- 介護・IT・建設・製造等の専門資格取得のための訓練
- 育児休業中の従業員へのオンライン研修
- 45歳以上のベテラン社員への実習型リスキリング訓練(令和8年4月新設)
ただし、訓練内容が業務に関連していること、そして事前に計画届を提出していることが必須条件です。「先に研修を受けてから後から申請したい」というケースでは受給できませんのでご注意ください。
中小企業・西宮の事業主の皆様へ
人材不足が深刻な現代において、既存の社員を育てることは採用コストを抑えながら企業競争力を高める有効な手段です。
人材開発支援助成金(人材育成支援コース)を活用すれば、1名あたり数万円から数十万円相当の支援を受けながら、計画的な人材育成が実現できます。
特に以下のようなお悩みをお持ちの事業主様は、ぜひご活用を検討ください。
- 社員のスキルアップを図りたいが研修費用の負担が大きい
- 45歳以上のベテラン社員にDX・ITなど新しいスキルを身につけてほしい
- パートやアルバイトを正社員へ転換するための訓練を実施したい
- 育児休業中の従業員にスキルアップの機会を提供したい
西宮・阪神間・兵庫県内の事業主様で「申請の仕方がわからない」「自社の訓練が対象になるか確認したい」という場合は、当事務所へお気軽にご相談ください。
まとめ
人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のポイントを整理します。
- 雇用保険適用の事業主が対象
- Off-JT訓練経費を中小企業は最大45%(一般訓練は30%)助成
- 訓練中の賃金を中小企業は1時間あたり960円助成
- 令和8年4月から45歳以上を対象とした「中高年齢者実習型訓練」が新設
- 訓練開始の1ヶ月前までに職業訓練実施計画届の提出が必要
助成金の申請には事前の計画届提出が必須です。早めにご準備を進めるためにも、まずは当事務所または管轄の労働局・ハローワークにご相談いただくことをお勧めします。
詳細は厚生労働省の人材開発支援助成金(人材育成支援コース)公式ページでご確認ください。

コメントを残す