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突然「退職代行」を使われたら?会社が取るべき正しい対応と法的リスクを社労士が解説


ある朝突然、知らない番号から電話が入り「弁護士の○○と申します。御社の従業員△△様より、退職の意思表示をお預かりしました」――。こんな経験をする経営者・人事担当者が増えています。

「退職代行サービス」は本人に代わって会社に退職を通告するサービスで、近年急速に普及しています。利用者の多くは20〜30代で、「上司が怖くて直接言えない」「辞めさせてくれない」「パワハラが続いている」といった事情を抱えています。

本記事では、退職代行の種類・法的効力・会社が取るべき正しい対応手順・やってはいけないNG行動を、社会保険労務士がわかりやすく解説します。


退職代行サービスとは?

退職代行サービスとは、労働者に代わって「退職したい」という意思を会社に伝えてくれるサービスです。料金は2〜5万円程度が相場で、申し込み当日に連絡してもらえるケースも珍しくありません。

「本日から出社しません。有給休暇の残り日数も全て消化します」という通告が、突然代行業者から届くこともあります。


退職代行業者の3種類と権限の違い

退職代行は誰が運営しているかによって、法的な権限と対応方法が大きく異なります。

種類 運営主体 交渉権限 できること
①民間業者 一般企業 なし(伝達のみ) 退職意思の通知のみ
②労働組合 合同ユニオン等 あり(団体交渉) 賃金・有給等の交渉
③弁護士 弁護士法人・個人 あり(全権代理) 法的交渉・訴訟対応

① 民間業者(弁護士・労組以外)

民間の退職代行業者は、退職の意思を会社に「伝えるだけ」のサービスです。

  • 交渉権限はありません。未払い賃金や有給の交渉をすると「非弁行為」(弁護士法72条違反)になります
  • 「○○を要求します」と言っても、法的な拘束力はありません
  • ただし、本人の退職意思は有効に伝わっています

② 労働組合(合同ユニオン)

労働組合が運営する退職代行サービスは、労働組合法に基づく団体交渉権を持っています。

  • 未払い残業代・有給休暇・退職金について、会社と交渉できます
  • 会社が正当な理由なく団体交渉を拒否すると不当労働行為になります(労働組合法7条2号)
  • 弁護士でなくても、組合員として合法的に交渉できます

③ 弁護士

弁護士による退職代行は最も強力で、本人を代理してあらゆる交渉ができます

  • 未払い残業代・有給精算・退職金・損害賠償の請求も対応可能
  • 会社は弁護士とのみやり取りをするのが基本です
  • 内容証明郵便・訴訟手続きにも対応します

退職代行で退職は法的に成立するのか?

結論:退職代行による退職は法的に有効です。

民法第627条第1項は「雇用の期間の定めのないものは、各当事者はいつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は解約の申し入れの日から2週間を経過することによって終了する」と定めています。

本人の退職意思が代行業者を通じて会社に伝わった時点で、2週間後には雇用契約が終了します。就業規則に「1ヶ月前に申し出ること」と規定されていても、民法の2週間ルールが優先されるという見解が有力です。

「退職を認めない」「退職届を受け取らない」という対応は法的に意味がなく、かえってトラブルを拡大させます。


会社が取るべき正しい対応手順(5ステップ)

ステップ1:冷静に連絡内容を整理する

まず感情的にならず、以下のポイントを確認します。

  • 連絡者は誰か(民間業者・ユニオン・弁護士)
  • 退職希望日はいつか
  • 有給休暇の取得希望はあるか
  • 未払い賃金・退職金の請求はあるか

ステップ2:本人への直接連絡は慎重に

退職代行を使った本人は「会社と直接やり取りしたくない」という状況です。特に弁護士やユニオンが代行している場合、本人への直接連絡は避け、代理人を通じて対応するのが原則です。繰り返しの直接連絡はハラスメントと見なされるリスクがあります。

ステップ3:有給休暇の取り扱いを決める

残っている有給休暇については、労働者から取得申請があれば原則として認める必要があります。退職前の短期間では時季変更権(労基法第39条第5項)が実質的に行使できないため、有給消化を前提に退職日を設定するのが現実的です。

ステップ4:必要書類を速やかに準備・送付する

  • 離職票(雇用保険被保険者離職票1・2):ハローワークへの届出後に郵送
  • 健康保険資格喪失確認通知書
  • 源泉徴収票:退職後1ヶ月以内に交付義務(所得税法226条)
  • 退職証明書:本人から請求があれば遅滞なく交付(労基法22条)

ステップ5:社会保険・雇用保険の資格喪失手続き

  • 健康保険・厚生年金保険の被保険者資格喪失届:退職日翌日から5日以内
  • 雇用保険の被保険者資格喪失届:退職日の翌々日から10日以内

絶対にやってはいけないNG行動6選

感情的になって取りがちなNG行動をまとめます。これらは法的リスクや信用失墜につながります。

  • ❌ 退職を認めない・「会社に来い」と強制する:退職意思は法的に有効。強制は不法行為になり得ます
  • ❌ 本人に繰り返し直接連絡する:代理人が介入している場合は「ハラスメント」と見なされるリスクがあります
  • ❌ 「退職代行は認めない」と業者に伝える:本人の意思が伝わった以上、業者の認否は法的に無意味です
  • ❌ 離職票・退職証明書の発行を拒否する:正当な理由のない拒否は労働基準法違反です(罰則あり)
  • ❌ 退職代行利用を理由に懲戒処分にする:退職の意思表示方法を理由とした懲戒は無効です
  • ❌ 業務引き継ぎを理由に退職日を一方的に延長する:引き継ぎの重要性はあっても、退職日延長を強要する権限は会社にありません

退職代行を使われないための予防策

退職代行は「直接言いたくない・言えない」という状況から使われます。以下の取り組みが予防につながります。

① 就業規則に退職手続きを明記する

退職の申し出時期・方法・引き継ぎの手順などを就業規則に明記し、社員に周知することで、スムーズな退職手続きが可能になります。ただし「1ヶ月前申し出」規定があっても、労働者を拘束できる範囲には限界があることを知っておいてください。

② ハラスメント相談窓口を整備する

退職代行を利用する理由の多くは人間関係やハラスメントです。社内外に相談窓口を設け、問題が深刻化する前に対処できる体制を整えましょう。

③ 退職の申し出を「普通のこと」として扱う文化をつくる

「辞めると言いづらい雰囲気」がある職場ほど退職代行が使われます。定期的な1on1面談や退職面談の実施で、本人が直接相談できる環境をつくることが最大の予防策です。


まとめ

退職代行サービスを突然使われても、正しい知識と冷静な対応で法的リスクを最小限に抑えることができます

  • ✅ 業者の種類(民間・ユニオン・弁護士)を確認し、権限の範囲を理解する
  • ✅ 退職意思は法的に有効と認め、手続きをスムーズに進める
  • ✅ 本人への直接連絡は慎重に、代理人がいる場合は代理人を通じてやり取りする
  • ✅ 有給休暇・離職票・源泉徴収票など必要書類を速やかに準備する
  • ✅ 日頃から就業規則の整備・ハラスメント対策・面談制度の充実を図る

自社の就業規則の確認、退職手続きのルール整備、ハラスメント防止体制の構築については、西宮市の社会保険労務士事務所「社労士事務所SR竹田」にお気軽にご相談ください。


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