「商工会や業種別の組合に加入しているけれど、助成金を活用してメンバー企業の賃金引上げや残業削減に取り組みたい」「会員企業向けにセミナーや巡回指導を実施する費用を助成してほしい」——そんな事業主団体の方にぜひ知っていただきたいのが、働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)です。
この助成金は、中小企業の事業主団体や連合団体が、傘下の中小企業の労働時間削減・賃金引上げに向けた取組を実施した場合に、団体に対して最大500万円を助成する制度です。令和8年度の申請受付は令和8年4月13日から令和8年11月30日(月)午後5時まで(予算到達次第締め切り)となっています。
本記事では、この助成金の対象団体・対象取組・助成額・申請の流れを、社会保険労務士がわかりやすく解説します。
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)とは
働き方改革推進支援助成金は、中小企業が時間外労働の削減・年次有給休暇の取得促進・賃金引上げなど「働き方改革」を進めるために厚生労働省が設けた支援制度です。
そのなかの団体推進コースは、個々の企業ではなく、業種別の団体(商工会議所・商工会・事業協同組合など)が対象となります。団体が傘下の中小企業を支援する取組を実施することで、団体自身が助成を受けられます。
つまり、「中小企業が直接申請する助成金」ではなく、「団体が傘下企業を支援するための取組費用を助成する制度」である点が特徴です。
対象となる事業主団体の要件
この助成金の対象は、以下のいずれかに該当する団体です。
① 事業主団体
次の要件をすべて満たす必要があります。
- 事業協同組合、商工会議所、商工会、商工組合などの法令に定める団体形態であること
- 常時使用する労働者数が10人以上の構成事業主が3社以上いること
- 1事業年度以上の活動実績があること
- 労災保険の適用事業主であること
- 特定業種等では構成事業主の5分の1超、その他は構成事業主の2分の1超が中小企業であること
② 共同事業主
複数の事業主が共同で取り組む「共同事業主」も対象です。
- 10以上の事業主から組織されていること
- 1年以上の活動実績があること
- 代表事業主が法人格を有すること
- 協定書を締結していること
- 構成事業主の2分の1超が中小企業であること
中小企業の定義
| 業種 | 資本金の額 | 又は常時使用する労働者数 |
|---|---|---|
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 医療・福祉(指定施設) | — | 300人以下 |
| その他の事業 | 3億円以下 | 300人以下 |
助成の対象となる取組の具体例
以下のいずれか1つ以上の取組を実施することが必要です。
| 取組の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 市場調査 | 業界の取引慣行・賃金水準に関する調査 |
| 新ビジネスモデルの開発・実験 | 生産性向上につながる業務プロセス改革の試行 |
| 費用低減実験 | 材料費・水光熱費・在庫費用の削減実験(労働費用を除く) |
| 下請取引適正化の理解促進 | 不当なコスト転嫁防止のための啓発活動 |
| 展示会の開催・出展 | 業界団体主催の合同展示会や商談会への参加 |
| 好事例の収集・普及啓発 | 賃金引上げや残業削減に成功した加盟企業の事例集作成 |
| セミナー・研修の開催 | 労務管理・生産性向上に関するセミナーの実施 |
| 巡回指導・相談窓口の設置 | 専門家による加盟企業への個別指導・相談対応 |
| 労働能率向上設備・機器の導入 | 業務効率化のためのシステム・機械の導入・更新 |
| 人材確保に向けた取組 | 合同求人活動・採用支援ツールの開発 |
助成額・助成率
助成額は以下のうち最も低い金額が支給されます。
- 対象経費の合計額
- 総事業費から収入額を控除した額(試作品を販売した場合などに収入控除あり)
- 助成上限額:500万円
費用の全額が支給されるわけではなく、取組にかかった費用(人件費を除く)の実費が上限500万円を超えない範囲で助成されます。
成果目標(支給要件)
助成を受けるためには、以下の成果目標を達成することが必須です。
- 構成事業主の2分の1以上に対して、改善事業または改善事業の実施結果を活用すること
たとえば加盟企業が10社ある場合、そのうち5社以上が実際にセミナーに参加したり、巡回指導を受けたりする必要があります。単に団体が取り組みを実施するだけでなく、傘下の中小企業が実際に活用することが求められます。
申請の流れ
- 事前相談:都道府県労働局または「働き方改革推進支援センター」(無料)に相談
- 交付申請書の提出(様式第1号):令和8年11月30日(月)午後5時までに都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に提出
- 交付決定:審査後、交付決定通知が届く
- 取組の実施:交付決定日から当該年度の2月14日(日)までに完了
- 支給申請書・事業実施結果報告書の提出(様式第10号・第11号)
- 支給決定・助成金の受取り
電子申請(Jグランツ)でも申請が可能です。紙申請の場合は、申請書様式を厚生労働省のウェブサイトからダウンロードして提出します。
令和8年度の申請スケジュール
| 手続き | 期限・時期 |
|---|---|
| 交付申請の受付開始 | 令和8年4月13日(月) |
| 交付申請の締め切り | 令和8年11月30日(月)午後5時(予算到達次第終了) |
| 取組の完了期限 | 令和9年2月14日(日) |
予算額に達した場合は期限前でも受付が終了します。余裕をもって早めに申請することをおすすめします。
この助成金を活用するメリット
団体推進コースは、直接の受給者は団体ですが、取組の恩恵を受けるのは傘下の中小企業の経営者と労働者です。
- セミナー・巡回指導を無料または低コストで受けられる:加盟企業は、団体が実施するセミナーや専門家による個別指導を受けることができます
- 業界全体で賃金引上げを進めやすくなる:業界団体が主導することで、取引先への価格転嫁交渉なども進めやすくなります
- 人材確保力の向上:業界全体のイメージアップや求人活動支援につながります
注意点
- 申請は事業主団体(商工会・商工会議所・事業協同組合など)が行います。個々の中小企業が直接申請することはできません
- 取組にかかる費用のうち、人件費は助成対象外です
- 試作品の販売などで収入が生じた場合、その金額が助成額から控除されます
- 国の予算額に制限があるため、早めの申請が重要です
まとめ
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)は、商工会議所・商工会・事業協同組合などが、傘下の中小企業の賃金引上げや残業削減を支援する取組に対して、最大500万円を助成する制度です。令和8年11月30日(月)が申請の締め切りです。
「加盟企業向けにセミナーや巡回指導を実施したい」「業界全体で生産性向上・賃金引上げに取り組みたい」という団体の方は、ぜひ活用をご検討ください。
この助成金の申請手続きや要件の確認でお悩みの方は、西宮市の社会保険労務士事務所・SR労務サポートオフィス竹田にお気軽にご相談ください。助成金活用のサポートから就業規則・労務管理の整備まで、経営者の皆さまをトータルでサポートします。

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