「親の介護が始まりそうで、仕事を続けられるか心配だという社員がいる」「介護で退職した優秀な社員がいる。次の人材流出を防ぎたい」
そんな悩みを持つ経営者・人事担当者の方へ。両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)は、仕事と介護の両立を支援した事業主に対して最大60万円を支給する制度です。令和8年度からは有給の介護休暇制度を導入した企業への新たな助成も追加されました。
本記事では制度の概要・支給金額・申請手続きを、西宮の社会保険労務士がわかりやすく解説します。
両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)とは
家族の介護を抱える従業員が介護を理由に離職せずに済むよう、事業主が積極的に両立支援に取り組んだ場合に助成金を支給する制度です。
日本では急速な少子高齢化により、「親の介護」を理由に仕事を辞める「介護離職」が大きな社会問題となっています。厚生労働省の調査によると、年間約10万人が介護を理由に離職しており、育てた優秀な人材を失うことは企業にとっても大きな損失です。
本助成金は「仕事と介護の両立支援プラン」を作成し、介護休業の取得・職場復帰を支援した中小企業事業主に対して支給されます。
助成対象となる主な取り組み
介護離職防止支援コースでは、以下の4区分を対象に助成が行われます。
- ①介護休業:労働者が連続5日以上の介護休業を取得し、職場復帰した場合
- ②介護両立支援制度:介護のための短時間勤務・所定外労働制限などの制度を導入・利用させた場合
- ③業務代替支援:介護休業取得者の業務を他の従業員や新規雇用者が代替した場合
- ④介護休暇制度有給化支援(令和8年度新設):介護のための有給休暇制度を就業規則に定めた場合
支給金額(令和8年度)
①介護休業
| 区分 | 支給額(中小企業) |
|---|---|
| 連続5日以上14日以内の介護休業(取得・復帰) | 40万円/人 |
| 連続15日以上の介護休業(取得・復帰) | 60万円/人 |
※1事業主あたり年5名まで。有期雇用労働者が対象の場合は+10万円加算(令和8年度新設)
②介護両立支援制度
| 導入制度数 | 利用期間60日未満 | 利用期間60日以上 |
|---|---|---|
| 1つの制度を導入・利用 | 20万円/人 | 30万円/人 |
| 2つ以上の制度を導入・利用 | 25万円/人 | 40万円/人 |
※1事業主あたり年5名まで
③業務代替支援
| 代替方法 | 支給額 |
|---|---|
| 新規雇用による代替(連続14日以内) | 20万円 |
| 新規雇用による代替(連続15日以上) | 30万円 |
| 手当支給等による代替 | 3〜10万円 |
④介護休暇制度有給化支援(令和8年度新設)
| 有給介護休暇の付与日数 | 支給額 |
|---|---|
| 年5日以上9日以下 | 30万円(1事業主1回限り) |
| 年10日以上 | 50万円(1事業主1回限り) |
法定の介護休暇(無給でも可)とは別に、有給の介護休暇を就業規則に定めることで支給されます。
支給要件
事業主の要件
- 雇用保険の適用事業主(中小企業)であること
- 介護休業等に関する規定を就業規則等に整備していること(育児・介護休業法の法定水準を上回る内容であることが必要な場合あり)
- 労働者名簿・賃金台帳・出勤簿を適切に整備・保管していること
対象労働者の要件
- 雇用保険被保険者であること
- 介護が必要な家族(配偶者・父母・子など)を持つこと
- 介護休業の取得前に、事業主との間で「仕事と介護の両立支援プラン」を作成していること
仕事と介護の両立支援プランとは
本助成金の核となる要件です。介護休業を開始する前に、事業主(人事担当者など)と対象労働者が面談を行い、以下の内容を記載したプランを作成します。
- 介護の状況(要介護者の氏名・続柄・介護の内容)
- 介護休業・両立支援制度の利用計画
- 業務の引き継ぎ方法・代替体制
- 職場復帰に向けた支援内容
プランは書面で作成・保存し、申請時に提出が求められます。
申請手続きの流れ
ステップ① 就業規則の整備・周知
介護休業・介護のための短時間勤務制度等を就業規則に明記し、全従業員に周知します。令和8年度に新設された「介護休暇制度有給化」を活用する場合は、有給の介護休暇規定も整備してください。
ステップ② 介護休業前の面談・両立支援プランの作成
介護休業を申し出た労働者に対し、上司または人事担当者が面談を実施し、「仕事と介護の両立支援プラン」を作成します。この面談記録と書面でのプランが後の申請に必要になります。
ステップ③ 介護休業の取得・職場復帰
労働者が連続5日以上の介護休業を取得します。休業終了後、原職または原職相当職に復帰させ、3か月以上継続雇用することが職場復帰の要件です。
ステップ④ 支給申請
職場復帰から3か月が経過した日の翌日から2か月以内に、管轄の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に申請書を提出します。
※介護両立支援制度(②)の申請期限は制度の利用が終了した日翌日から2か月以内
主な必要書類
- 支給申請書
- 就業規則(介護休業等の規定部分の写)
- 仕事と介護の両立支援プラン(面談記録を含む)
- 介護休業申出書・介護休業取得期間確認書
- 賃金台帳・出勤簿(休業前後の期間分)
- 復帰後の雇用継続確認書類(辞令・雇用契約書等)
- 業務代替支援を申請する場合:手当支給の証明書類、または新規雇用者の雇用契約書等
よくある質問
Q. 中小企業でなければ申請できませんか?
介護両立支援制度(②)・業務代替支援(③)は大企業も対象になります。ただし、中小企業の方が支給額が高く設定されています。中小企業の定義は業種によって異なります(例:製造業は常時使用する従業員数300人以下など)。
Q. 介護休業は分割取得してもいいですか?
法定の介護休業は対象家族1人につき通算93日まで、最大3回に分割して取得できます。ただし本助成金の①「介護休業」区分では、1回の連続取得が5日以上であることが必要です。複数回に分割した場合、それぞれの取得期間が5日未満では対象外になります。
Q. パートや契約社員でも対象ですか?
はい、有期雇用労働者(パート・契約社員)も対象です。令和8年度からは有期雇用労働者が対象の場合に10万円が加算されるようになりました。ただし雇用保険の被保険者であることが前提条件です。
Q. 有給介護休暇の新設助成はいつ申請できますか?
有給の介護休暇制度を就業規則に定め、対象労働者が実際に利用した後に申請します。1事業主1回限りの支給のため、制度を新設・導入するタイミングを計画的に進めることが重要です。
令和8年度の主な変更点
- 有期雇用労働者加算(新設):介護休業・介護両立支援制度の利用者が有期雇用労働者の場合、10万円を加算
- 介護休暇制度有給化支援(新設):有給の介護休暇制度(年5日以上)を導入した企業に30〜50万円を支給
- 制度メニューの変更:「所定外労働の制限制度」「深夜業の制限制度」が介護両立支援制度の対象から除外
注意点
- 介護休業開始前に就業規則を整備していない場合は対象外です。後から就業規則を整備しても、すでに取得した介護休業には遡及適用できません。
- 「仕事と介護の両立支援プラン」は休業開始前に作成することが必要です。休業後の作成は認められません。
- 職場復帰後3か月が経過するまで申請できないため、スケジュール管理が重要です。
- 支給申請は電子申請(e-Gov)または管轄の都道府県労働局への郵送・持参で行います。
まとめ
両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)のポイントを整理します。
- 介護休業の取得・職場復帰を支援した中小企業に、1人あたり最大60万円を支給
- 介護両立支援制度の導入・利用でも最大40万円を支給
- 令和8年度より、有給介護休暇制度の新設で最大50万円(1回限り)が支給される制度が新設
- 有期雇用労働者が対象の場合は+10万円加算
- 「仕事と介護の両立支援プラン」の事前作成が最重要の要件
介護離職は企業にとって貴重な人材を失うだけでなく、採用・育成コストも無駄になります。本助成金を活用して介護支援体制を整備することで、従業員の定着率向上と助成金収入の両方を実現できます。
西宮・阪神間の事業主様で「就業規則をまだ整備していない」「プランの作成方法がわからない」という方はぜひご相談ください。
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