2026年9月15日、厚生労働省は「長時間労働が疑われる事業場に対する令和7年度の監督指導結果」を公表しました。調査対象となった29,150事業場のうち、38.5%にあたる11,228事業場で違法な時間外労働が確認されました。
11月には「過重労働解消キャンペーン」が実施される予定で、今後さらに監督指導が強化されます。経営者・人事担当者の皆様には、自社の労働時間管理を今一度見直していただく絶好のタイミングです。
監督指導の概要
今回の監督指導は、以下のような事業場を対象に実施されました。
- 月80時間を超える時間外労働が疑われる事業場
- 過労死等に関する労災請求が行われた事業場
- その他、長時間労働が疑われる情報があった事業場
| 調査指標 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 監督対象事業場数 | 29,150事業場 | — |
| 違法な時間外労働があった事業場 | 11,228事業場 | 38.5% |
| 賃金不払残業があった事業場 | 1,901事業場 | 6.5% |
| 健康障害防止措置が未実施の事業場 | 5,919事業場 | 20.3% |
違法な時間外労働の内訳
違法な時間外労働が確認された11,228事業場のうち、過重労働の程度別の内訳は以下の通りです。
| 月の時間外労働時間数 | 事業場数 | 違法時間外のうちの割合 |
|---|---|---|
| 月80時間超(過労死ライン) | 4,991事業場 | 44.5% |
| 月100時間超 | 2,842事業場 | 25.3% |
| 月150時間超 | 554事業場 | 4.9% |
| 月200時間超 | 111事業場 | 1.0% |
月80時間超の時間外労働は「過労死ライン」と呼ばれ、脳・心臓疾患などの健康被害リスクが著しく高まります。また、月100時間超の事業場も2,842件確認されており、労働者の命と健康に関わる深刻な問題です。
賃金不払残業(サービス残業)の状況
賃金不払残業(いわゆる「サービス残業」)が確認された事業場は1,901事業場(6.5%)にのぼります。
賃金不払残業が発覚した場合、以下のリスクが生じます。
- 過去2年分(悪質な場合は3年分)の未払賃金の遡及支払い
- 付加金の支払い命令(裁判所命令の場合、未払い額と同額を加算)
- 労働基準法違反による刑事罰(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)
- 社名公表・行政指導
健康障害防止措置が不十分な事業場
健康障害防止措置が未実施・不十分とされた事業場は5,919事業場(20.3%)でした。
労働安全衛生法では、時間外・休日労働が月80時間を超えた労働者から申し出があった場合、医師による面接指導を実施することが義務付けられています(月100時間超の場合は申し出がなくても義務)。この義務を怠ると、労働安全衛生法違反となります。
健康障害防止の主な指導内容
| 指導内容 | 事業場数 | 割合 |
|---|---|---|
| 健康障害防止措置の改善指導 | 12,811事業場 | 43.9% |
| 労働時間把握の不適正に対する指導 | 4,045事業場 | 13.9% |
「労働時間の把握が不適正」というのは、タイムカードがあるにもかかわらず適正に管理していないケース、自己申告制で実態との乖離が放置されているケースなどが該当します。
11月は「過重労働解消キャンペーン」月間
厚生労働省では毎年11月を「過重労働解消キャンペーン」月間と定め、重点的な監督指導を実施しています。令和7年度の結果を受け、令和8年11月も強化月間として集中的な監督指導が行われる見込みです。
- 長時間労働が疑われる事業場への重点監督
- 無料相談窓口の設置(労働基準監督署)
- 労働局・労基署によるセミナー・情報発信
- 過重労働に関する申告案件への迅速な対応
企業が今すぐ取るべき対応策
① 労働時間の適正な把握
使用者には労働者の労働時間を適正に把握する義務があります(厚生労働省ガイドライン)。
- タイムカード・ICカード・PCログなどの客観的な記録を使用しているか
- 自己申告制の場合、申告内容と実態が乖離していないか定期的に確認しているか
- 管理職・裁量労働制適用者も含めて把握しているか
② 36協定の内容確認と遵守
時間外労働の上限規制により、原則として月45時間・年360時間が上限です。特別条項を設けた場合でも、単月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内が法定上限です。
- 36協定の締結内容が実態と合っているか
- 特別条項の発動回数・上限時間を管理しているか
- 上限規制を超えていないか月次でチェックしているか
③ 医師による面接指導の実施
時間外・休日労働が月80時間超の労働者(申し出あり)または月100時間超の労働者(申し出不要)に対し、医師による面接指導が義務づけられています。
- 対象者に面接指導の制度を周知しているか
- 産業医や嘱託医との連携体制は整っているか
- 面接指導の記録を5年間保存しているか
④ 残業代(割増賃金)の正確な支払い
- 割増賃金の計算基礎に含めるべき手当(職務手当・役職手当等)を漏らしていないか
- 「固定残業代制度」を採用している場合、超過分を追加支給しているか
- 管理監督者に該当しない者(名ばかり管理職)に残業代を支払っているか
まとめ
令和7年度の監督指導では、約4割の事業場で違法な時間外労働が確認されました。長時間労働は労働者の健康を損なうだけでなく、企業にとっても法的リスク・損害賠償リスク・採用・定着リスクをもたらす深刻な問題です。
11月の「過重労働解消キャンペーン」に向けて、今すぐ自社の労働時間管理体制を点検・整備することを強くおすすめします。
「自社の36協定は適切か」「労働時間の管理方法を見直したい」「残業代の計算が正しいか不安」といったご相談は、ぜひ西宮市の武田社会保険労務士事務所にお気軽にお問い合わせください。

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