DXやGXに向けた新規事業への挑戦で、「社員の訓練費用だけでなく、訓練に使う機械や設備の導入コストも助成してほしい」という経営者の声に応える形で、令和8年4月に人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)に「設備投資加算」が新設されました。
さらに令和8年8月3日には制度の一部が改正され、対象範囲や申請要件が明確化されています。
本記事では、設備投資加算の概要・助成額・対象設備・申請要件・注意点を西宮の社労士が詳しく解説します。
事業展開等リスキリング支援コースとは
「事業展開等リスキリング支援コース」は、新規事業への展開・DX(デジタルトランスフォーメーション)・GX(グリーントランスフォーメーション)など、企業の事業転換に伴う人材育成に取り組む事業主を支援する助成金です。
令和4年度から令和8年度末(2027年3月末)までの時限制度であり、令和9年度以降の継続は現時点で未確定です。活用を検討されている企業は早期の申請が強く推奨されます。
| 項目 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 訓練経費の助成率 | 75% | 60% |
| 人件費加算(OJTあり) | 960円/時間 | 480円/時間 |
| 1事業所・1年度の上限 | 1,000万円 | 1,000万円 |
OJT(職場内訓練)とOFF-JT(職場外訓練)を組み合わせた訓練が対象で、eラーニング形式も利用可能です。
設備投資加算(令和8年4月新設)とは
令和8年4月8日の制度改正で新設された「設備投資加算」は、訓練で実際に使用した機器・設備と同種のものを事業所に新たに導入した場合、その導入費用の50%を通常の助成金に上乗せして受け取れる加算措置です。
これにより、新規事業への展開で必要な設備・機器の投資コストを、訓練費用助成と合わせて国に支援してもらうことができます。
- 対象:中小企業のみ(大企業は対象外)
- 助成率:導入費用の50%
- 対象訓練:事業展開・DX化・GX化を目的とした訓練(人事・人材育成計画に基づく一般的な訓練は対象外)
- 訓練実施時間:OFF-JTで実訓練時間数10時間以上
設備投資加算の助成額・上限
| 支給対象労働者数 | 上限額 |
|---|---|
| 1人〜9人 | 1人につき15万円 |
| 10人以上 | 一律150万円 |
なお、導入する設備・機器の費用は10万円以上(消費税込み)であることが必要です。
【計算例】支給対象労働者が2人で、100万円の機械を1台購入した場合
- 設備投資加算額:100万円 × 50% = 50万円
- ただし上限(2人 × 15万円 = 30万円)が適用されるため、30万円が助成されます
対象設備と対象外設備
対象となる設備(例)
訓練で実際に使用した機器・設備と「同種のもの」を新たに導入することが条件です。新規購入・リース・割賦購入のいずれも対象となります。また「設置費用・設定費用・撤去費用」なども導入費用に含まれます。
- 製造業のDX化に向けた産業用ロボット・自動化設備
- 3Dプリンター・CNC工作機械
- 特定業務用ソフトウェア・システム(汎用事務ソフトを除く)
- 医療・介護分野の専用機器
- 農業用IoTセンサー・自動化機器
- 特殊用途自動車(車両改造費含む)
対象外の設備
以下の設備・機器は設備投資加算の対象外です。注意が必要です。
- パソコン・タブレット端末・スマートフォンおよびその周辺機器
- 汎用事務機器(コピー機、FAX、一般プリンターなど)
- 特殊用途自動車以外の自動車
- 空調設備・照明機器
- テレワーク用通信機器
設備投資加算の申請要件
設備投資加算を受けるには、訓練要件に加えて賃金要件または資格等手当要件のいずれかを満たす必要があります。
| 要件の種類 | 内容 |
|---|---|
| 賃金要件 | 毎月決まって支払われる賃金を、訓練終了日の翌日から1年以内に5%以上増加させること |
| 資格等手当要件 | 就業規則等に規定した上で、訓練終了後1年以内に全対象労働者に手当を支払い、毎月決まって支払われる賃金を3%以上増加させること |
また、以下の点も確認が必要です。
- 導入した設備・機器は、導入日の翌日から1年間は原則として処分不可
- 前回に設備投資加算を受けた場合は、その支給決定日から3年が経過している必要がある
令和8年8月3日改正のポイント
令和8年8月3日の改正では、同コース全体に2つの重要な変更が加わりました。令和8年8月3日以降に提出する計画届に基づく訓練から適用されます。
①訓練受講回数に上限が設定
同一の労働者が1年度中に受講できる回数に上限が設けられました。
- 通常の訓練(OFF-JT):1労働者につき1年度3回まで
- eラーニング形式の訓練:1労働者につき1回まで
②DX・GX訓練の対象範囲が絞り込み
デジタル化・グリーン化に関する訓練の対象範囲が明確化・絞り込まれ、対象訓練の認定基準がより厳格になりました。訓練計画の作成段階で、都道府県労働局に確認することが推奨されます。
申請の流れ
設備投資加算の申請は、通常の訓練費用助成とは別に申請します。
- STEP1:事業展開計画を策定し、訓練実施機関を選定する
- STEP2:訓練開始日の6か月前から1か月前までに「事業展開等実施計画」を都道府県労働局に提出(計画届の提出前に開始した訓練は対象外!)
- STEP3:承認を受けて訓練を実施、同時期に対象設備・機器を新規導入する
- STEP4:訓練終了日から2か月以内に通常の支給申請を行う
- STEP5(設備投資加算):賃金または資格等手当を3か月間継続して支払った日の翌日から5か月以内に設備投資加算の支給申請を行う
よくある注意点・落とし穴
- 📌 計画届の提出前に訓練を開始した場合は、一切助成されません。先に計画を届け出ることが大前提です。
- 📌 設備投資加算の対象は中小企業のみ。大企業は設備投資加算を受けることができません。
- 📌 設備投資加算の対象となる訓練は、「事業展開・DX化・GX化」を目的としたものに限られます。人事・人材育成計画に基づく一般的な訓練は8月3日改正以降は対象外になりました。
- 📌 設備は訓練で実際に使用した機器・設備と同種のものでなければなりません。無関係な設備を購入しても加算は受けられません。
- 📌 訓練経費は事業主が全額負担する必要があります。従業員に費用を負担させると不支給になります。
- 📌 令和8年度末(2027年3月末)が制度終了の目安ですが、年度末は申請が集中するため、早期に計画届を提出することが重要です。
まとめ:設備投資と人材育成を同時に支援
令和8年4月に新設された「設備投資加算」は、DX・GX推進のために設備投資と人材育成を同時に進める中小企業にとって、大きなメリットをもたらす制度です。導入した機器費用の50%(最大150万円)が通常の訓練費用助成に上乗せされます。
ただし、令和8年8月3日の改正により対象範囲や要件が明確化・絞り込まれており、計画届の提出前に訓練や設備導入を始めてしまうと対象外になりますので、必ず事前に管轄の都道府県労働局へご相談ください。
当事務所では、事業展開等リスキリング支援コースの計画届の作成支援から支給申請まで、助成金申請の全プロセスをサポートしております。西宮市・尼崎市・芦屋市・神戸市を中心に対応していますので、お気軽にご相談ください。
【参考】厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」令和8年8月3日版パンフレット

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