「従業員が家族の介護のために退職を考えていると相談してきた」「介護離職を防ぎたいが、何から手をつければいいのかわからない」という声を、経営者・人事担当者からよくお聞きします。
介護離職は、会社にとって貴重な人材を失うだけでなく、採用・育成コストの増大や組織の弱体化を招きます。そのような事態を防ぐために活用できるのが、両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)です。
この助成金は、仕事と家族の介護を両立できる職場環境を整備した中小企業に対して、国が費用を助成する制度です。介護休業の取得・職場復帰を支援した場合には1人あたり最大60万円、介護に対応した柔軟な勤務制度を整備した場合にも助成が受けられます。
このページでは、両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)の支給内容・要件・申請の流れを、西宮の社会保険労務士がわかりやすく解説します。
両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)とは?
両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)は、厚生労働省が運営する雇用関係助成金のひとつです。従業員が家族(配偶者、父母、子など)を介護しながら継続して働き続けられる環境を整備した事業主を対象としています。
制度の主な特徴は以下のとおりです。
- 対象は中小企業のみ(大企業は対象外)
- 「介護支援プラン」の作成を基本として、各種措置の実施に応じて助成を受けられる
- 介護休業の取得・復帰支援、柔軟な勤務制度の導入など、複数のメニューを組み合わせて利用可能
- 1事業主につき対象労働者5人まで支給(一部メニューは1回限り)
対象となる事業主の要件(中小企業の定義)
この助成金は中小企業事業主のみが対象です。業種別の基準は以下のとおりです。
| 業種 | 資本金または出資額 | または常時雇用する労働者数 |
|---|---|---|
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他(製造業など) | 3億円以下 | 300人以下 |
なお、以下の事業主は受給できません。
- 雇用保険の適用事業主でない場合
- 支給申請日の前日から過去3年間に、重大な法令違反があった場合
- 助成金の不正受給を行ったことがある場合
支援メニューと支給額一覧
介護離職防止支援コースには、大きく4つの支援メニューがあります。自社の状況に合わせて複数のメニューを組み合わせることも可能です。
①介護休業支援
従業員が家族の介護のために介護休業を取得し、職場に復帰した場合に支給されます。
| 休業取得日数 | 支給額(1人あたり) |
|---|---|
| 連続5日以上14日未満 | 40万円 |
| 連続15日以上 | 60万円 |
1事業主につき、対象労働者は5人まで支給されます。
②介護両立支援制度の導入・利用
短時間勤務、フレックスタイム制、テレワーク、時差出勤など柔軟な勤務制度を整備し、従業員が実際に利用した場合に支給されます。
| 導入制度数 | 利用日数 | 支給額(1人あたり) |
|---|---|---|
| 1つの制度を導入・利用 | 60日未満 | 20万円 |
| 1つの制度を導入・利用 | 60日以上 | 30万円 |
| 2つ以上の制度を導入・利用 | 60日未満 | 25万円 |
| 2つ以上の制度を導入・利用 | 60日以上 | 40万円 |
③業務代替支援
介護休業中の業務を他の従業員や新規採用者が代替した場合に支給されます。
| 代替方法 | 休業日数 | 支給額(1人あたり) |
|---|---|---|
| 新規雇用による代替 | 5日以上14日未満 | 20万円 |
| 新規雇用による代替 | 15日以上 | 30万円 |
| 手当支給等による代替 | 5日以上14日未満 | 5万円 |
| 手当支給等による代替 | 15日以上 | 10万円 |
④介護休暇制度の有給化
法定の介護休暇(無給も可)を有給として就業規則に定め、従業員が実際に利用した場合に支給されます(1事業主1回限り)。
| 取得日数 | 支給額 |
|---|---|
| 5日以上9日以下 | 30万円 |
| 10日以上 | 50万円 |
⑤雇用環境整備加算
介護に関する研修の実施、相談窓口の設置、介護情報提供、管理職研修の4つすべてを実施した場合、加算として10万円が支給されます(1事業主1回限り)。
申請の流れ
この助成金を受給するには、以下の流れで手続きを進める必要があります。
- STEP1:就業規則の整備 介護休業規定・介護両立支援制度を就業規則に明記し、労働者に周知する
- STEP2:面談・介護支援プランの作成 対象となる従業員と個別面談を実施し、「仕事と介護の両立支援プラン」を作成する
- STEP3:措置の実施 プランに基づいて介護休業の取得・職場復帰支援、または介護両立支援制度の利用を実施する
- STEP4:支給申請 必要書類を整備して、管轄の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に支給申請書を提出する
申請期限は取得した措置の区分によって異なります。詳細は申請年度の「支給申請の手引き」を必ず確認してください。
主な必要書類
- 支給申請書(所定様式)
- 支給要件確認申立書
- 仕事と介護の両立支援プラン(面談記録シート)
- 就業規則・労働協約(介護休業規定を含む箇所)
- 対象労働者の出勤簿・タイムカード
- 賃金台帳
- 要介護状態を確認できる書類(介護保険被保険者証等)
- 業務代替支援を受ける場合:代替要員の雇用・手当支給を証明する書類
申請にあたっての注意点
- 「介護支援プラン」の作成が必須:プランなしで介護休業を取得させても対象外になります。必ず取得前にプランを作成してください。
- 就業規則の整備が先決:介護休業規定が就業規則に明記されていない場合は受給できません。規定の新設・改定が必要です。
- 申請期限を厳守:期限を1日でも過ぎると原則として受給できなくなります。スケジュール管理が重要です。
- 書類不備に注意:記載漏れや添付書類の不足で支給決定が遅れるケースがあります。提出前に専門家のチェックを受けることをお勧めします。
まとめ:介護離職防止への取り組みが企業の強みになる
少子高齢化が進む日本では、今後ますます多くの従業員が介護と仕事を両立しなければならない状況になります。介護離職防止支援コースを活用して介護しながら働ける環境を整備することは、優秀な人材の定着につながり、企業の競争力向上に直結します。
助成金の申請手続きは、書類の準備や期限管理など煩雑な作業が多く、初めての方にはハードルが高く感じられるかもしれません。西宮市の社会保険労務士事務所・SR竹田では、助成金の申請サポートから就業規則の整備まで、ワンストップでお手伝いしています。
「うちの会社でも受給できるか確認したい」「申請手続きをお任せしたい」という方は、お気軽にご相談ください。

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