「保育所不足で育休から復帰できない社員がいる」「子育て中の優秀な人材が退職してしまう」——そんなお悩みを抱える経営者の方に、ぜひ知っていただきたい制度があります。
それが両立支援等助成金(事業所内保育施設コース)です。
自社の従業員の子どもを対象とした保育施設を設置・運営する事業主に対して、設置費用の最大2/3(中小企業)や継続的な運営費用を国が助成してくれる制度です。少子化・人手不足が深刻化する令和の時代において、従業員の定着率向上と採用力強化の両面から効果を発揮します。
今回は、西宮市の社会保険労務士事務所が、両立支援等助成金(事業所内保育施設コース)の概要・対象要件・助成内容・申請手続きをわかりやすく解説します。
事業所内保育施設コースとは?
両立支援等助成金(事業所内保育施設コース)は、仕事と育児の両立を支援するために、自社従業員の子どもを対象とした保育施設を設置・運営する事業主を対象とした助成金です。
厚生労働省が所管しており、都道府県労働局を窓口として申請します。同じ「事業所内保育」に関する制度として内閣府・こども家庭庁が所管する「企業主導型保育事業」がありますが、両立支援等助成金の事業所内保育施設コースは主に自社従業員向けの保育施設を対象とした助成金です(地域の子どもを受け入れることも可能)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所管 | 厚生労働省(都道府県労働局で申請) |
| 対象 | 従業員の子どもを保育する施設を設置・運営する事業主 |
| 主な助成 | 設置費用(中小企業2/3・大企業1/2)+運営費用の助成 |
| 申請の注意点 | 設置前に受給資格の認定申請が必要 |
対象となる事業主と保育施設の要件
対象事業主の要件
- 雇用保険の適用事業主であること(雇用保険被保険者を1名以上雇用)
- 設置・運営する保育施設で、主に自社の雇用保険被保険者(従業員)の子どもを保育すること
- 申請日から過去3年以内に重大な法令違反がないこと
- 申請日の前日から過去1年以内に労働関係法令の重大な違反がないこと
対象となる保育施設の種類
以下の種類の保育施設が助成の対象となります:
- 認可保育所・小規模保育事業・事業所内保育事業
- 認定こども園
- その他一定の基準を満たす保育施設
既存の会議室・倉庫などを保育スペースに転用・改修する場合も対象になります。全く新しい施設を建設する場合だけでなく、社内スペースの有効活用も可能です。
保育施設のスタッフ・設備基準(主な要件)
保育の質を担保するため、保育士の配置基準を満たす必要があります。
| 対象児童の年齢 | 保育士の配置基準 |
|---|---|
| 0歳児 | 子ども3人に対して保育士1人以上 |
| 1歳・2歳児 | 子ども6人に対して保育士1人以上 |
| 3歳以上 | 子ども20人に対して保育士1人以上 |
また、保育スペースの面積基準(0・1歳児:1人あたり3.3㎡以上、2歳以上:1人あたり1.98㎡以上)や調乳室・便所等の設備の確保も求められます。
助成の内容と金額
1. 設置費用の助成
保育施設の設置・整備(新設・増改築・設備購入等)にかかった費用の一部が助成されます。土地の取得費・賃料は対象外ですが、建物の建設・改修費・設備費などが対象です。
| 事業主の区分 | 助成率 |
|---|---|
| 中小企業事業主 | 対象費用の3分の2(2/3) |
| 大企業 | 対象費用の2分の1(1/2) |
上限額は保育施設の定員規模等によって異なります。詳細な上限額については、最新の厚生労働省資料または都道府県労働局にお問い合わせください。
2. 運営費用の助成
保育施設の設置後、継続的な運営にかかる費用に対して、月額で助成が行われます。運営費助成は保育を行っている期間中、継続して受給できる点が大きな特徴です。
助成額は、定員規模・事業主の区分(中小企業/大企業)・対象となる子どもの数などによって決まります。具体的な月額単価については、厚生労働省の令和8年度版リーフレットをご参照いただくか、都道府県労働局にお問い合わせください。
申請の流れ(重要:設置前の認定申請が必須!)
この助成金で最も注意が必要なのが、「保育施設の設置・工事を始める前に、受給資格の認定申請が必要」という点です。先に工事や設備の購入を始めてしまうと、助成の対象外となる場合があります。
- 事前相談・計画立案:都道府県労働局に相談し、保育施設の設置・運営計画を立案します。
- 受給資格の認定申請(設置・工事開始前に!):所轄の都道府県労働局に受給資格認定申請書を提出します。
- 認定通知の受領:労働局から受給資格の認定通知が届いたら、保育施設の設置工事等を開始できます。
- 保育施設の設置・運営開始:認定計画に基づいて保育施設を設置し、保育を開始します。
- 設置費の支給申請:設置完了後、所定の期限内に設置費の支給申請を行います。
- 運営費の支給申請(年度ごと):毎年度、運営費の支給申請を行います。
よくある質問
Q1. テナントを借りて保育スペースにする場合も対象になりますか?
賃貸物件の改修費用は対象になります。ただし、賃料そのものが助成対象になるかどうかは要件次第です。詳しくは都道府県労働局にご相談ください。
Q2. 企業主導型保育事業(内閣府)との違いは何ですか?
企業主導型保育事業(内閣府・こども家庭庁所管)は、地域の子どもも受け入れられる点が特徴で、設置費・運営費ともにより大規模な助成が受けられます。一方、両立支援等助成金(事業所内保育施設コース)は厚生労働省所管で、主に自社従業員向けの保育施設が対象です。それぞれ要件・助成内容が異なるため、事業規模や目的に応じて最適な制度を選ぶことが重要です。
Q3. 既に保育施設を運営している場合は申請できますか?
既に設置が完了している施設の設置費を遡って申請することは原則できません。ただし、現在運営中の施設については、運営費の助成が受けられる可能性があります。まずは都道府県労働局に確認してみましょう。
Q4. 定員は最低何人必要ですか?
一定の定員数が要件とされますが、小規模でも対象となる場合があります。詳細は最新の要綱または労働局にご確認ください。
中小企業にとってのメリット・注意点
主なメリット
- 設置費の最大2/3が助成され、初期コストを大幅に削減できる
- 運営費用の継続助成で、長期的なコスト負担が軽減される
- 育児中の従業員が安心して働けるため、離職率の低下につながる
- 採用活動での強力な差別化ポイントになる(「保育施設あり」は応募数増加に直結)
- 企業のCSR・ブランディングにもなる
注意点
- 設置前の受給資格認定申請が必須(事後申請不可)
- 保育士の確保・配置基準の維持が必要(専門人材の採用コストが発生)
- 施設の設備・面積基準を満たす場所の確保が必要
- 申請書類が多岐にわたるため、専門家のサポートが推奨される
まとめ:社内保育所で「選ばれる会社」へ
両立支援等助成金(事業所内保育施設コース)は、仕事と育児の両立を支援する保育施設の設置・運営コストを国が支援してくれる、中小企業にとって非常に有利な助成金です。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 設置費助成率 | 中小企業:2/3、大企業:1/2 |
| 運営費助成 | 継続的な月額助成(定員・規模に応じた金額) |
| 対象施設 | 認可保育所・認定こども園・事業所内保育事業など |
| 注意点 | 設置前の受給資格認定申請が必須 |
| 申請窓口 | 都道府県労働局 |
少子化・人手不足の時代において、子育て支援の充実は企業の「人材獲得競争力」を左右する重要な要素です。助成金を最大限に活用して、働きやすい職場環境を実現しましょう。
西宮市・阪神地域の中小企業の皆様へ
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