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【東京高裁令和8年6月25日判決】発達障害社員へのアウティングは違法!解雇・個人情報漏洩で企業に追加賠償命令——障害者雇用と「合理的配慮」の法的ルールを西宮の社労士が解説


「発達障害のある社員に、他の従業員には内緒にして働いてもらっている…でも上司にはどこまで伝えていいの?」「本人の同意なく、障害のことを社内で共有したら問題になる?」——そんな疑問をお持ちの経営者・人事担当者の方に、2026年(令和8年)6月25日の東京高等裁判所判決から重要な警告が発せられました。

この記事では、発達障害を理由とした解雇・アウティング(本人同意なき障害情報の開示)が違法と判断された東京高裁令和8年6月25日判決をわかりやすく解説し、企業が今すぐ実践すべき「障害者雇用と個人情報管理」の法的ルールをご紹介します。

📋 事件のポイント(まとめ)

項目 内容
事件名 損害賠償等請求控訴事件(令和8(ネ)第1000号)
裁判所 東京高等裁判所 第4民事部
判決日 令和8年(2026年)6月25日
当事者 発達障害のある労働者(原告)、元勤務先の会社(被告)
主な争点 ①障害を理由とした解雇の適法性 ②本人同意なき障害情報開示(アウティング)の違法性 ③賃金未払い ④復職妨害
判決結果 アウティング・解雇ともに違法。一審判決に上乗せして追加賠償を命令
キーワード 発達障害、アウティング、合理的配慮、障害者雇用促進法、個人情報保護

1. どんな事件だったの?

この事件の原告は、発達障害(ASDやADHDなど)を持つ労働者です。会社(被告)は採用時から障害情報を調査・把握していたにもかかわらず、後に障害を理由として解雇を行いました。

さらに問題だったのは、解雇後の行為です。会社は本人の同意を一切得ずに、その人の障害に関する情報を第三者に開示しました(いわゆる「アウティング」)。しかも、虚偽の障害情報まで流布し、復職を妨害したとして訴えられました。

原告が訴えた行為の内容をまとめると、次のとおりです。

  • 採用時に障害情報を不当に調査・収集した
  • 障害を理由に不当に解雇した
  • 解雇後に本人の同意なく障害情報を第三者に暴露した(アウティング)
  • 虚偽の障害情報を流布した
  • 復職を妨害した
  • 賃金を未払いにした

2. 裁判所はどう判断したか

東京高等裁判所は、一審(地裁)判決を踏まえつつ、被告企業に対して追加支払いを命じる”上乗せ”判断を下しました。

判決の核心となったのは、「アウティングの違法性」の明確な認定です。裁判所は次のように判示しました。

「障害情報は、その人の尊厳に関わる重要な個人情報であり、本人の同意なくこれを第三者に開示する行為(アウティング)は、人格権の侵害にあたり、不法行為を構成する」

つまり、たとえ会社の「業務上の必要性」があったとしても、本人の同意なく障害情報を他者に知らせることは違法というのが裁判所の明確な立場です。

また、障害を理由とした解雇についても、障害者雇用促進法の差別禁止規定・合理的配慮義務に違反するとして無効が確認されました。

3. 法的ポイントの解説

(1)発達障害と障害者雇用促進法

発達障害(ASD・ADHD・LDなど)は、障害者雇用促進法上の「障害者」に該当します(精神障害者に含まれます)。同法は、採用・賃金・配置・解雇など雇用のあらゆる段階における障害を理由とした差別を禁止しています。

法律・条文 内容
障害者雇用促進法 第35条 事業主は、障害者であることを理由として、募集・採用・賃金・教育訓練・福利厚生等について差別的取扱いを行ってはならない
障害者雇用促進法 第36条の2 事業主は、障害者が職場で働くにあたっての支障を改善するための措置(合理的配慮)を講じなければならない
障害者雇用促進法 第36条の3 合理的配慮の提供に際し、労働者の意向を尊重しなければならない(本人との対話・協議が前提)

今回の判決では、会社が合理的配慮を尽くすことなく障害を理由に解雇した点が、同法違反として厳しく批判されました。

(2)アウティングとは?なぜ違法なのか

「アウティング」とは、本人が公表していない個人情報(ここでは障害・病気など)を、本人の同意なく第三者に明かすことを指します。LGBTQ+の文脈で性的指向の暴露として知られますが、障害情報のアウティングも同様に違法です。

なぜアウティングが違法になるのか、ポイントを整理すると次のとおりです。

  • プライバシー権の侵害:障害・病気は「要配慮個人情報」(個人情報保護法 第2条第3項)に該当し、特に厳格な保護が必要
  • 人格権の侵害:障害情報の無断開示は、当事者の尊厳を傷つける人格権(民法 第709条・第710条)の侵害に当たる
  • 二次被害のリスク:障害が周囲に知られることで職場での偏見・差別が生じ、精神的苦痛・就労困難を招く

💡 実務上の重要ポイント
「上司だから教えていい」「業務上必要だから共有した」——これらの理由だけでは正当化できません。本人の事前同意なき開示は、たとえ社内であっても違法となるリスクがあります。

(3)合理的配慮とは何か

「合理的配慮」とは、障害のある従業員が職場で対等に働けるよう、企業が個々の状況に応じた支援・調整を行う義務のことです。2016年4月施行の改正障害者雇用促進法で民間企業にも義務化されました。

合理的配慮の例(発達障害) 具体的な対応
業務指示の明確化 口頭だけでなく文書・チェックリストで伝える
作業環境の調整 静かな席への配席、ノイズキャンセリングイヤホンの使用許可
締め切りの可視化 タスク管理ツールの導入、優先順位を明示
コミュニケーション支援 定期的な面談・フィードバックの機会確保
休暇・勤務時間の柔軟化 通院のための休暇取得、時短勤務の検討

重要なのは、合理的配慮は会社が一方的に決めるものではなく、「本人との対話(協議)」を経て実施するものという点です。今回の判決でも、この本人との対話プロセスを経ない対応が問題視されました。

4. 企業が今すぐすべきこと

①障害情報の取り扱いルールを整備する

障害情報(診断名・手帳の有無・通院状況など)は要配慮個人情報であり、取得・保管・共有に際して厳格なルールが必要です。

  • 取得時:本人の同意書を必ず取得する
  • 保管:鍵のかかるキャビネットまたは権限管理されたデータベースに保管
  • 社内共有:「誰に、どの範囲で、なぜ開示するか」を本人と事前に確認・合意する
  • 第三者提供:本人同意なしには原則禁止(個人情報保護法 第17条・第23条)

②合理的配慮の実施プロセスを文書化する

合理的配慮は、実施したという記録を残すことが後のトラブル防止に不可欠です。次のプロセスを文書で残してください。

  1. 本人からの申出または企業による把握
  2. 本人との面談(ヒアリング)実施と記録
  3. 配慮内容の検討・決定と本人への説明
  4. 実施後のフォローアップ面談
  5. 変更・見直しの都度、再協議

③就業規則・社内規程を整備する

次の規定を就業規則や関連規程に明記することをお勧めします。

  • 障害者への合理的配慮の実施に関する規定
  • 個人情報(要配慮情報を含む)の取扱いに関する規定
  • アウティング禁止規定(ハラスメント防止規程への追加も有効)
  • 障害を理由とした不利益取扱い禁止の明示

④管理職・人事担当者への研修を実施する

「上司として部下の障害情報を知る必要がある」という感覚は理解できますが、それだけでは情報開示の正当化にはなりません。知る必要のある人のみに、本人の同意のもとで最小限の情報を共有するという原則(Need-to-know原則)を組織全体で徹底しましょう。

5. まとめ

今回の東京高裁令和8年6月25日判決は、企業に対して次の3点を強く警告しています。

  • ✅ 障害を理由とした解雇は、合理的配慮の検討なしには認められない
  • ✅ 障害情報のアウティング(本人同意なき開示)は不法行為となる
  • ✅ 一審より厳しい高裁判断——企業は「地裁で負けても高裁で逆転」を期待できない

発達障害のある労働者が増加する中、企業には「採用して終わり」ではなく、継続的な合理的配慮と適切な情報管理が求められています。今回の判決を機に、自社の対応を見直してみてください。


⚖️ 西宮・阪神間の社会保険労務士事務所「SR武田事務所」より

当事務所では、障害者雇用に関する就業規則の整備・合理的配慮対応の仕組みづくり・ハラスメント防止規程の作成など、事業主の方のご相談をお受けしています。「うちの会社は大丈夫?」「アウティング防止のルールを作りたい」といったご相談も、まずはお気軽にお問い合わせください。


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