令和8年4月8日、厚生労働省は「65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)」を大きく改正しました。これまでの「定率助成」から「定額助成」に変更され、受給額の見通しが立てやすくなったうえ、外部専門家への委託が必須だった要件も廃止されました。
高齢化社会が進む中、65歳以上の就業者は全国で約940万人を超えています(令和8年版高齢社会白書)。企業にとって、ベテラン社員が長く働き続けられる環境づくりは、人手不足解消のカギとなっています。この助成金を活用して、高齢社員向けの評価・処遇制度を整備してみませんか?西宮の社労士が令和8年度版を詳しく解説します。
65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)とは?
この助成金は、55歳以上の高年齢労働者を対象とした雇用管理制度の整備に取り組む事業主を支援するために設けられています。賃金・人事処遇制度の見直しや、労働時間の柔軟化、在宅勤務制度の整備など、高年齢者が働きやすい職場環境の構築にかかる費用を助成します。
申請・受給の窓口は独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の都道府県支部です。ハローワークではないので注意が必要です。兵庫県の場合は「JEED 兵庫支部 高齢・障害者業務課」が窓口となります。
令和8年度の主な改正ポイント(令和8年4月8日施行)
令和8年度から、この助成金の内容が以下のとおり大きく見直されました。
① 定率助成から定額助成に変更
これまでは「かかった費用の〇〇%」という定率方式でしたが、令和8年度から定額方式に変更されました。受け取れる金額があらかじめ明確になり、受給額の計算が簡単になりました。中小企業は最大60万円(機器等を含めると最大110万円)受け取れます。
② 専門家委託の要件廃止
これまでは計画の策定・実施に際して外部の専門家(社会保険労務士、コンサルタントなど)への委託が必要でしたが、令和8年度からこの要件が廃止されました。自社のみで制度を整備しても申請できるようになり、申請のハードルが大幅に下がりました。
③ 高年齢者雇用等推進者の選任が要件に追加
改正により、高年齢者雇用等推進者の選任が受給要件として追加されました。高年齢者雇用等推進者とは、高年齢者の雇用促進のための業務を担当する社内の担当者です。事前に選任・届出を行っておく必要があります。
対象となる高年齢者雇用管理整備措置
助成対象の措置は大きく2つのカテゴリーに分かれます。
(1)賃金・人事処遇制度の導入または改善(高額助成)
以下の内容が対象となり、より高い額が支給されます。
- 高年齢者の職業能力を評価する仕組みを活用した賃金制度・人事処遇制度の導入または改善
- 高齢者向け専門職制度(シニアスペシャリスト制度など)の構築
- 高年齢者に適切な役割を付与する制度の導入
(2)その他の高年齢者雇用管理整備措置
賃金・人事処遇制度以外の以下の取り組みも対象となります((1)より助成額は低め)。
- 労働時間制度の導入・改善(短時間勤務、フレックスタイム制の整備など)
- 在宅勤務制度の導入・改善(テレワーク規程の整備など)
- 研修制度の導入・改善(高年齢者向けスキルアップ研修の仕組み構築)
- 健康管理制度の導入(シニア向け健康診断制度、産業医との連携強化)
- その他、高年齢者の雇用機会の増大に必要な制度
(3)機器等の導入経費(上乗せ助成)
上記(1)または(2)の措置の実施に伴って必要となる機器・システム等を導入した場合、導入経費に一定率を乗じた額が上乗せして支給されます(上限50万円)。
令和8年度の支給額一覧
| 措置の種類 | 中小企業 | 中小企業以外 |
|---|---|---|
| (1)賃金・人事処遇制度の導入または改善 | 60万円 | 45万円 |
| (2)その他の高年齢者雇用管理整備措置 | 30万円 | 23万円 |
| (3)機器等の導入経費(上乗せ) | 経費×60%(上限50万円) | 経費×45%(上限50万円) |
複数の措置を実施しても、(1)または(2)のいずれか高い額のみが対象となります(措置は1つのみ支給)。ただし機器等の導入がある場合は(3)が別途上乗せされます。
最大支給額の例:
- 中小企業で(1)賃金制度の整備+機器等を導入した場合:60万円 + 最大50万円 = 最大110万円
- 中小企業以外で(1)+機器等:45万円 + 最大50万円 = 最大95万円
主な受給要件
この助成金を受給するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 雇用保険適用事業主 | 雇用保険に加入している事業主であること |
| 高年齢者雇用等推進者の選任 | 高年齢者の雇用促進を担当する推進者を選任していること(令和8年度追加) |
| 雇用管理整備計画の認定 | 55歳以上を対象とした雇用管理整備の計画書を作成し、JEEDの認定を受けること |
| 措置の実施 | 認定された計画に基づいて、雇用管理整備措置を実施すること |
| 運用状況の記録 | 計画終了日の翌日から6か月間、制度の運用状況を明らかにする書類を整備すること |
| 60歳以上の雇用継続 | 支給申請日前日において、1年以上継続雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いること、かつ講じた措置により6か月以上継続雇用されていること |
申請の流れ
申請はJEED(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)の都道府県支部に対して行います。以下のステップで進めます。
STEP 1:高年齢者雇用等推進者を選任する
令和8年度から新たに必要となった要件です。社内の担当者を推進者として選任し、必要に応じて届出を行います。
STEP 2:雇用管理整備計画書を作成する
「何を(措置の種類)」「いつから(計画開始日)」「どのように実施するか」を記載した計画書を作成します。
STEP 3:計画開始日の6か月前〜3か月前までにJEEDへ提出・認定申請
重要: 計画開始日の6か月前の日から3か月前の日までに、JEED都道府県支部へ計画書を提出し、認定を受ける必要があります。措置を始める前に計画を認定してもらわないと、助成金を受け取れなくなりますので注意してください。
STEP 4:認定を受けた計画に基づいて措置を実施する
JEEDの認定を受けたら、計画どおりに制度の設計・導入を進めます。
STEP 5:終了後6か月間の運用状況を記録する
計画終了日の翌日から6か月間、整備した制度を実際に運用し、その状況を記録に残します。
STEP 6:JEED へ支給申請を行う
運用期間が終了したら、必要書類を揃えてJEED都道府県支部に支給申請します。
| ステップ | 内容 | タイミング |
|---|---|---|
| ① 推進者の選任 | 高年齢者雇用等推進者を選任 | 計画提出前 |
| ② 計画書の作成 | 雇用管理整備計画書を作成 | 計画開始前 |
| ③ JEEDへ計画提出・認定申請 | JEED都道府県支部に提出 | 計画開始日の6〜3か月前 |
| ④ 措置の実施 | 制度を設計・導入 | 計画期間中 |
| ⑤ 運用状況の記録 | 制度運用を6か月間継続・記録 | 計画終了後6か月 |
| ⑥ 支給申請 | 必要書類を添えてJEEDに申請 | 運用期間終了後 |
こんな企業にぴったりの助成金です
- 60歳以上の社員を多く雇用しており、ベテランが長く活躍できる制度を整備したいと考えている
- 定年再雇用者の賃金・処遇制度が曖昧で、「同一労働同一賃金」に対応した人事制度を作りたい
- 高齢社員が体力的に働きやすいよう、フレックスや短時間勤務制度を整えたい
- 高齢社員向けのスキルアップ研修・キャリア形成支援の仕組みを作りたい
- 外部の専門家に頼まず、社内だけで制度を整備したい(令和8年度から可能に!)
注意点・よくあるミス
① 計画認定前に措置を始めてしまう
計画書を提出してJEEDの認定を受ける前に制度の整備を始めてしまうと、助成金の対象外となります。「まず認定ありき」が絶対原則です。
② 申請窓口を間違える
この助成金の窓口はJEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)です。ハローワークでは申請できません。兵庫県内の事業主は「JEED兵庫支部」(神戸市中央区)が担当窓口となります。
③ 6か月間の運用実績が不十分
制度を整備しても、その後6か月間の実際の運用実績が必要です。導入しただけで使われていない制度は助成対象にならない可能性があります。60歳以上の対象社員が実際に制度を利用していることを確認してください。
まとめ
令和8年度の改正で、65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)は大きく使いやすくなりました。専門家委託が不要になり、受給額が定額化されたことで、中小企業でも取り組みやすい制度になっています。
超高齢社会を迎え、高齢社員が安心して長く働ける職場づくりは、企業の持続可能な人材戦略の一環です。最大110万円の助成金を活用して、ベテラン社員の力を最大限に引き出す制度を整えましょう。
助成金の申請手続きや要件の確認でお困りの場合は、西宮市の社会保険労務士事務所「SR竹田社会保険労務士事務所」にお気軽にご相談ください。65歳超雇用推進助成金をはじめ、雇用関係助成金の申請支援を専門に行っております。

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