「従業員が育休を取ったら業務が回らない」「育休中の人手不足をどう補えばいいか分からない」――そんな悩みを抱える中小企業の事業主は多いはずです。
そんな問題を解決するために設けられているのが、両立支援等助成金「育休中等業務代替支援コース」です。育休取得者の業務を他の従業員が代替した場合に手当を補助したり、新たに代替要員を雇用したりする費用を最大270万円まで助成する制度です。
この記事では、西宮市の社会保険労務士が、令和8年度の育休中等業務代替支援コースの内容・要件・申請方法をわかりやすく解説します。
育休中等業務代替支援コースとは
育休中等業務代替支援コースは、育児休業や産後パパ育休(出生時育児休業)を取得した労働者の業務を代替するための体制整備を行った事業主を支援する制度です。2024年(令和6年)に新設され、2026年(令和8年)4月にさらに拡充されました。
育休中の人手不足への対応方法は「既存社員に手当を支給して業務を代替してもらう方法」と「新たに代替要員を雇用・派遣受け入れする方法」の2種類があり、どちらも助成の対象となります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度の目的 | 育休取得時の職場の業務代替を円滑にし、育休取得を促進する |
| 対象 | 育児休業・産後パパ育休・短時間勤務の利用者がいる事業主 |
| 最大助成額 | 1人あたり最大270万円(プラチナくるみん認定事業主の場合) |
| 所管 | 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室) |
3つのコース区分
育休中等業務代替支援コースは、業務代替の方法によって以下の3つに区分されます。
| 区分 | 業務代替の方法 | 主な助成内容 |
|---|---|---|
| ①手当支給等(育児休業) | 周囲の社員に手当を支給して業務を代替 | 手当の3/4(月最大10万円)+体制整備経費 |
| ②手当支給等(短時間勤務) | 短時間勤務者の業務を周囲の社員が代替 | 手当の3/4(月最大3万円)+体制整備経費 |
| ③新規雇用(育児休業) | 代替要員を新規雇用・派遣受入で確保 | 9万円〜81万円(期間に応じて変動) |
①手当支給等(育児休業1か月以上)の詳細
育児休業(産後パパ育休含む)を1か月以上取得した場合に、業務を代替した周囲の労働者に対して「業務代替手当」を支給することで助成が受けられます。
休業取得時に受けられる助成
| 助成の種類 | 助成額 |
|---|---|
| 業務体制整備経費(社内対応) | 6万円(1回限り) |
| 業務体制整備経費(外部委託を活用) | 20万円(1回限り) |
| 業務代替手当の補助(取得時) | 支給した手当の3/4(月上限10万円) |
職場復帰時に受けられる助成
- 業務代替手当の3/4相当額(月上限10万円)
- 対象期間は最大24か月分
プラチナくるみん認定事業主の場合は、支給割合が3/4から4/5(80%)に引き上げられます。
なお、育児休業が7日以上1か月未満の場合は、取得時と職場復帰時の合計が1回の支給となります。
②手当支給等(短時間勤務)の詳細
3歳未満の子を養育するために短時間勤務制度を利用する労働者が出た際、周囲の社員に業務代替手当を支給することで助成が受けられます。
| タイミング | 助成内容 |
|---|---|
| 制度開始時 | 業務体制整備経費3万円(外部委託20万円)+初月手当の3/4(月上限3万円) |
| 制度終了時 | 業務代替手当の3/4(月上限3万円)×制度利用月数(子が3歳到達月まで) |
③新規雇用(育児休業)の詳細
代替要員を新規雇用または派遣受け入れする形で業務を継続させた場合に、下表の額が支給されます。
| 業務代替期間 | 通常の助成額 | プラチナくるみん認定の場合 |
|---|---|---|
| 1か月以上3か月未満 | 9万円 | 11万円 |
| 3か月以上6か月未満 | 27万円 | 33万円 |
| 6か月以上9か月未満 | 45万円 | 55万円 |
| 9か月以上12か月未満 | 63万円 | 77万円 |
| 12か月以上 | 81万円 | 99万円 |
なお、③新規雇用は中小企業のみが対象(小売業:資本金5,000万円以下または従業員50人以下、その他業種:資本金3億円以下または従業員300人以下 など業種により異なります)です。
加算措置
以下の加算を重ねて受けることも可能です。
| 加算の種類 | 加算額 | 条件 |
|---|---|---|
| 有期雇用労働者加算 | 10万円 | 有期雇用労働者が育休・短時間勤務を利用 |
| 情報公表加算 | 2万円 | 育休取得状況等を自社HPや「しょくばらぼ」で公表 |
対象事業主の主な要件
助成を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 育児休業・短時間勤務制度を就業規則に規定していること
- 業務代替手当を就業規則・労働協約に規定し、規定に基づき実際に支給していること(①②の場合)
- 業務の見直し・効率化の取組(業務マニュアルの整備、業務分担の見直し等)を実施していること
- 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定・届出していること(くるみん認定事業主は不要)
- 支給申請日において雇用保険適用事業所の事業主であること
申請の流れ
申請は本社等の所在地を管轄する都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)(兵庫県の場合は兵庫労働局)へ行います。
| 区分 | 申請タイミング | 申請期限 |
|---|---|---|
| ①取得時(1か月以上) | 育児休業開始から1か月経過後 | 1か月経過日の翌日から2か月以内 |
| ①職場復帰時(1か月以上) | 育児休業終了後 | 終了日翌日から2か月以内 |
| ①(7日〜1か月未満) | 育児休業終了後 | 終了日翌日から2か月以内 |
| ②開始時 | 短時間勤務開始から1か月経過後 | 1か月経過日の翌日から2か月以内 |
| ②終了時 | 短時間勤務終了後 | 終了日または子3歳到達日の翌日から2か月以内 |
| ③新規雇用 | 育児休業終了後3か月経過後 | 3か月経過日の翌日から2か月以内 |
主な提出書類
- 支給申請書
- 業務代替に関する規定(就業規則・労働協約の写し)
- 業務代替手当の支給額がわかる書類(賃金台帳など)
- 出勤簿・タイムカード
- 育児休業申出書・短時間勤務申出書
- 業務の見直し・効率化の取組がわかる資料(マニュアル等)
支給人数の上限
1年度あたりの支給上限は延べ10人、初回支給から5年間の累計上限は50人です。ただし、くるみん認定・トライくるみん認定の事業主は1年度の上限なし(令和13年3月31日まで特例適用)となります。
注意点
- 業務代替手当は、育休を取得した対象者には支給できません(業務を代替した周囲の社員への支給が条件)
- ③新規雇用の代替要員は、所定労働時間が対象者の1/2以上であること
- 申請期限を過ぎると受け付けてもらえないため、育休開始後すぐに準備を始めることが重要です
- 「業務の見直し・効率化の取組」の実施と記録が必須です(申請時に資料提出が求められます)
まとめ
育休中等業務代替支援コースは、育休取得の障壁となりやすい「職場の人手不足問題」を金銭的にサポートする実践的な助成金です。最大270万円という高い助成額に加え、手当型・新規雇用型と柔軟な対応方法から選択できるため、さまざまな規模・業種の事業主が活用できます。
育児休業取得率の向上は、従業員定着率の改善や採用力アップにもつながります。助成金を活用しながら「育休が取りやすい職場」をつくることが、中小企業の競争力強化に直結します。
就業規則への育休・業務代替手当規定の整備や申請手続きについてご不明な点があれば、西宮市のたけだ社会保険労務士事務所にお気軽にご相談ください。初回相談は無料で承っております。
参考:厚生労働省「両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース)」

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