日本年金機構は令和8年9月3日、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」の電子申請による提出受付を開始しました。これまで紙の書類を郵送で提出していた手続きが、マイナポータルと「ねんきんネット」を連携することで、スマートフォンやパソコンからオンラインで提出できるようになります。
経営者や人事担当者にとっては、在職中に年金を受給している従業員(在職老齢年金の受給者など)の手続きが簡素化される点で実務に直結する変更です。今回は、この制度変更の概要と実務上のポイントを社労士がわかりやすく解説します。
扶養親族等申告書とは?
「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」とは、65歳以上(障害年金・遺族年金受給者は60歳以上)の年金受給者が、日本年金機構に提出する書類です。
この申告書を提出することで、年金から天引きされる所得税の源泉徴収税額が低減(控除適用)されます。具体的には以下の控除が適用されます。
- 扶養親族がいる場合の扶養控除
- 障害者控除・寡婦(夫)控除
- 配偶者控除
申告書を提出しない場合、年金から源泉徴収される所得税率が高くなるため、受給者にとって実質的に損をします。毎年10〜11月頃に日本年金機構から送付され、翌年1月から適用される仕組みです。
今回の変更点:電子申請が可能に
令和8年9月3日から、従来の紙の郵送提出に加えて、電子申請による提出が選択できるようになりました。
| 項目 | 従来 | 令和8年9月3日~ |
|---|---|---|
| 提出方法 | 紙で郵送のみ | 紙の郵送 または 電子申請(選択可) |
| 電子申請ツール | — | マイナポータル+ねんきんネット連携 |
| 利用端末 | — | スマートフォン・パソコン |
電子申請の利用対象者
電子申請を利用できるのは、以下の条件を満たす方です。
- 日本年金機構から「扶養親族等申告書」が送付される年金受給者
- マイナポータルのアカウントを持っている方
- 「ねんきんネット」と連携済みの方
なお、マイナンバーカードが必要です。マイナポータルとねんきんネットを事前に連携させておく必要があります。
電子申請の手順(概要)
- マイナポータルにログイン(マイナンバーカード+暗証番号)
- 「ねんきんネット」との連携を確認・設定
- マイナポータルから「扶養親族等申告書」の申請手続きを選択
- 必要事項を入力して電子送信
- 受付番号・受付確認のメール通知を受け取る
従来のように書類を印刷・記入・封入・郵送するという煩雑な作業が不要になり、受給者にとって大幅に利便性が向上します。
人事・給与担当者への実務への影響
この変更は直接的には年金受給者個人の手続きの話ですが、人事・給与担当者にとっても関係する場面があります。
在職中に年金を受給している従業員への対応
60歳以降も継続雇用されている従業員や再雇用社員の中には、老齢年金を受給しながら働いている方がいます。このような方が扶養親族等申告書を提出しない場合、年金の源泉徴収税額が高くなり、手取り収入が減ることになります。
従業員から「年金の税金が高い」という相談を受けた際は、この申告書の提出(電子申請を含む)を案内することで問題解決につながることがあります。
年末調整との関係
扶養親族等申告書は日本年金機構への申告であり、会社での年末調整とは別の手続きです。年金と給与の両方を受給している従業員は、それぞれ別途申告が必要なケースがあります。
- 会社への「扶養控除等(異動)申告書」→ 給与の源泉徴収に適用
- 日本年金機構への「扶養親族等申告書」→ 年金の源泉徴収に適用
混同されることが多いため、従業員への説明の際は区別を明確にしましょう。
電子申請で変わる年金行政のDX化
今回の扶養親族等申告書の電子申請対応は、年金行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)の一環です。政府はマイナンバーカードの活用推進を掲げており、今後もさまざまな行政手続きのオンライン化が進んでいく見込みです。
従業員に対して、以下のような情報提供を行うことで、会社としての社員サポートが充実します。
- マイナポータルの活用方法の周知
- ねんきんネットの利用登録サポート
- 扶養親族等申告書の電子申請方法の案内
まとめ
日本年金機構が令和8年9月3日から扶養親族等申告書の電子申請受付を開始しました。マイナポータルとねんきんネットを連携させることで、スマートフォンやパソコンから申告書を提出できるようになります。
人事担当者としては、在職中に年金を受給している従業員への情報提供や、年末調整との違いの説明など、適切なサポートを行いましょう。
社会保険・年金・人事労務に関するご相談は、西宮市の社会保険労務士事務所「竹田社会保険労務士事務所」にお気軽にどうぞ。

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