「採用したい人材がいるが、なかなか踏み出せない」「障害のある方やシングルマザーを採用したいが、コストが心配」——そんな経営者・担当者の方に、ぜひ知っておいていただきたいのが特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)です。
この助成金は、就職が特に困難な方々(高齢者・障害者・母子家庭の母など)をハローワーク等の紹介で雇用した事業主に対して、最長3年間・最大240万円を支給する制度です。令和8年度も引き続き受付中で、一部要件が改定されています。
本記事では、西宮市の社会保険労務士が対象要件・支給額・申請手続き・令和8年度の変更点をわかりやすく解説します。
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)とは
特定求職者雇用開発助成金は、就職が困難な求職者をハローワークや民間職業紹介機関の紹介で採用した事業主を支援する助成金です。その中の「特定就職困難者コース」は、高年齢者・障害者・母子家庭の母等を対象とした最も基本的なコースです。
雇用保険の適用事業主であればほぼどの業種・規模でも申請でき、採用後に定期的(3か月ごと)に支給申請を行うことで、在職期間中の賃金の一部が助成されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) |
| 管轄 | 厚生労働省・各都道府県労働局 |
| 対象事業主 | 雇用保険適用事業主(業種・規模問わず) |
| 申請窓口 | 管轄の都道府県労働局(またはハローワーク) |
| 申請タイミング | 雇入れ日から3か月ごとの支給対象期ごとに申請 |
対象となる事業主の主な要件
助成金を受給するためには、事業主側でも以下の要件を満たす必要があります。
- ハローワークまたは許可・届出のある職業紹介事業者の紹介により採用すること
- 採用した労働者を雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇用すること
- 65歳以上に達するまで継続雇用し、かつ2年以上の雇用期間が確実と見込まれること
- 対象労働者の採用前後6か月間に会社都合による解雇がないこと
- 不正受給等の欠格要件に該当しないこと
有期雇用契約の場合、契約書に「自動更新条項」を明記することが必須です(令和6年改正)。記載がない場合は不支給となりますので注意が必要です。
対象となる労働者(就職困難者)の種類
このコースで対象となるのは、以下に該当する「特定就職困難者」です。
| 対象区分 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 高年齢者 | 60歳以上の方(令和8年5月1日以降は、ハローワーク等で就労支援を受けている方に限定) |
| 母子家庭の母等 | 母子家庭の母、父子家庭の父、寡婦 |
| 身体障害者 | 身体障害者手帳所持者(重度・中軽度) |
| 知的障害者 | 療育手帳所持者(重度・中軽度) |
| 精神障害者 | 精神障害者保健福祉手帳所持者 |
| 重度障害者等 | 重度身体障害者、重度知的障害者、45歳以上の中度身体・知的障害者など |
| 補完的保護対象者 | 令和5年12月1日以降の採用分から対象 |
| ウクライナ避難民 | 令和4年5月30日以降の採用分から対象 |
なお、雇用する前にハローワークから「特定求職者雇用開発助成金の対象者」として紹介を受けることが必須です。勝手に採用した後に申請することはできません。
支給額一覧(令和8年度)
支給額は、雇用する労働者の区分(対象カテゴリ)・雇用形態(短時間か否か)・事業規模(中小企業か大企業か)によって異なります。
短時間労働者以外(週30時間以上)の場合
| 対象労働者の区分 | 中小企業 | 大企業 | 支給期間 |
|---|---|---|---|
| 高年齢者・母子家庭の母等 | 60万円 | 50万円 | 1年(2期) |
| 身体・知的障害者(重度以外) | 120万円 | 50万円 | 2年(4期) |
| 精神障害者 | 120万円 | 50万円 | 2年(4期) |
| 重度障害者等 | 240万円 | 100万円 | 3年(6期) |
短時間労働者(週20時間以上30時間未満)の場合
| 対象労働者の区分 | 中小企業 | 大企業 | 支給期間 |
|---|---|---|---|
| 高年齢者・母子家庭の母等 | 40万円 | 30万円 | 1年(2期) |
| 身体・知的・精神障害者(全般) | 80万円 | 30万円 | 2年(4期) |
各支給対象期(3か月)ごとに分割して支給されます。1期あたりの支給額は、実際に支払った賃金額が上限となります。
申請の流れ(ステップごとに解説)
- 採用計画の策定:就職困難者を雇用する計画を立て、ハローワークへ相談する
- ハローワークによる職業紹介:ハローワーク等から「特定求職者雇用開発助成金対象者」として紹介を受ける(この紹介が必須)
- 雇用開始:採用・雇用保険資格取得の手続きを行う
- 第1支給対象期(雇入れ日から3か月)終了後:支給申請書(様式第3号)・対象労働者雇用状況等申立書(様式第5号)・賃金台帳等を提出
- 第2期以降:3か月ごとに支給申請(様式第4号)を繰り返す
- 審査・振込:労働局の審査を経て助成金が支給される(通常2〜3か月程度)
電子申請(e-Gov)にも対応しています。申請書類は最寄りの労働局またはハローワークで入手できます。
令和8年度の主な変更点
令和8年度は以下の重要な変更が行われました。申請前に必ず最新情報を確認してください。
- 高年齢者の要件厳格化(令和8年5月1日以降):60歳以上であっても、ハローワーク等で「就労に向けた個別支援」を受けている方のみが対象となりました。単なる60歳以上求職者の採用では対象外になる場合があります。
- 賃金台帳の提出が必須(令和8年4月以降):令和8年4月1日以降に雇入れた対象労働者については、申請時に賃金台帳の添付が必須となりました。提出がない場合は不支給となります。
- 有期雇用の自動更新条項の明記義務:有期雇用契約の場合、雇用契約書に「自動更新」の条項が明記されていることが要件です。
申請時の注意点・よくある失敗例
- 事前紹介なしで採用:ハローワーク等の紹介なしに採用した場合は助成金の対象外です。採用活動の前にハローワークへ相談することが重要です。
- 自動更新条項の漏れ:有期雇用契約書に自動更新の記載がないと受給できません。契約書を必ず事前に確認してください。
- 申請期限の失念:各支給対象期の終了後2か月以内に申請が必要です。期限を過ぎると受給できなくなります。
- 会社都合の解雇:採用前後6か月に会社都合による解雇があると不支給要件に該当します。
- 賃金台帳の未提出:令和8年4月以降は必須書類となっています。
まとめ
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、高齢者・障害者・ひとり親など就職が困難な方を雇用した際に最大240万円を最長3年間支給する、使い勝手の良い助成金です。
令和8年度は高年齢者の対象要件が厳格化されるなど変更もありますが、障害者や母子家庭の母の採用については引き続き幅広く活用できます。
申請手続きは複雑に見えますが、事前の紹介・採用・3か月ごとの申請という流れを押さえれば決して難しくはありません。
当事務所(武田社会保険労務士事務所・西宮市)では、助成金申請のサポートから雇用管理のご相談まで、事業主の皆様を幅広く支援しております。
ご不明な点やご相談は、お気軽にお問い合わせください。

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