従業員から「育児休業を取りたい」と申し出があったとき、会社側(事業主・人事担当者)として押さえておくべき重要な制度が「育児休業給付金」です。
この記事では、育児休業給付金の仕組み・支給金額・申請手続きを、経営者・人事担当者向けにわかりやすく解説します。2025年4月の雇用保険法改正で新設された「出生後休業支援給付金(実質手取り10割)」についても詳しく説明します。
育児休業給付金とは
育児休業給付金は、雇用保険の給付制度の一つです。育児休業を取得した従業員に対して、育休中の収入減少を補填するために支給されます。
ポイントは「会社が従業員に代わってハローワークに申請する」という点です。会社が申請手続きを怠ると、従業員が給付を受け取れず、深刻なトラブルになりかねません。
受給要件(誰がもらえるか)
以下の要件をすべて満たす必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 雇用保険の被保険者であること | 正社員だけでなく、週20時間以上・31日以上の雇用見込みがあるパート・アルバイトも対象 |
| 育児休業を取得していること | 原則として子どもが1歳になるまで(最長2歳まで延長可) |
| 育休前2年間に被保険者期間が12ヶ月以上あること | 育休開始前2年間に、賃金支払い基礎日数が11日以上の月が12ヶ月以上必要 |
| 育休中の就業日数が一定以内であること | 支給単位期間(約1ヶ月)の就業日数が10日以下、または就業時間が80時間以下 |
有期雇用(パート・契約社員)の場合は、さらに「子が1歳6ヶ月になるまでの間に、労働契約が終了することが明らかでないこと」という要件も加わります。
支給金額の計算方法
育休開始から180日目まで(約6ヶ月間)
育休開始後の最初の6ヶ月間は、賃金の67%が支給されます。
計算式:休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
【例】月給30万円の場合 → 月額 約20万1,000円
181日目以降
育休開始から181日目以降は、支給率が50%に下がります。
計算式:休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%
【例】月給30万円の場合 → 月額 約15万円
社会保険料が免除されるので「実質の手取り」はもっと高い
育児休業中は、健康保険料と厚生年金保険料が全額免除されます(従業員負担分・事業主負担分の両方が免除)。
社会保険料は手取りの約14〜15%に相当するため、これを加えると実質的な手取り水準は次のようになります。
| 期間 | 給付率 | 社保免除分(参考) | 実質的な手取り相当 |
|---|---|---|---|
| 育休開始〜180日 | 67% | 約15% | 約82%相当 |
| 181日目以降 | 50% | 約15% | 約65%相当 |
「育休を取ると収入がゼロになる」と誤解している従業員も多いため、事業主・人事担当者から積極的に情報提供することが重要です。
【2025年4月新設】出生後休業支援給付金で「手取り10割」に
2025年4月施行の雇用保険法改正により、父母がともに育児休業を取得する場合に「出生後休業支援給付金」が新設されました。
これにより、育休開始後の一定期間は給付率が最大80%に引き上げられ、社会保険料免除と合わせると実質的に手取り10割相当となります。
| 給付の種類 | 支給率 |
|---|---|
| 育児休業給付金(既存) | 67% |
| 出生後休業支援給付金(新設・上乗せ) | +13% |
| 合計 | 80% |
受給するための条件
- 父親(男性):子の出生後8週間以内に14日以上の育児休業を取得すること
- 母親(女性):子の出生後8週間のうち28日以上の育児休業(産後休業を含む)を取得すること
- 父母ともに育児休業を取得していること
男性育休の取得促進が狙いの制度です。「パパにも育休を取ってほしい」という場合は、この制度を積極的に従業員に案内しましょう。
【2025年10月新設】育児時短就業給付金とは
同じく2025年の雇用保険法改正で、育児時短就業給付金も新設されました。
育児のために所定労働時間を短縮して就業する場合(時短勤務中)に、賃金の10%が支給されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 2歳未満の子を養育しながら時短勤務で働く雇用保険被保険者 |
| 支給率 | 時短勤務中の賃金の10% |
| 申請者 | 事業主(ハローワークに申請) |
育休から職場に戻った後の「時短勤務期間中」をカバーする制度で、従業員の職場復帰を後押しします。
申請の流れ(事業主・人事担当者の役割)
育児休業給付金の申請は、事業主がハローワークに代わって行います(従業員本人は直接ハローワークに行く必要がありません)。
ステップ1:受給資格確認・初回申請
育休開始後、速やかに「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」を事業所を管轄するハローワークに提出します。
ステップ2:2ヶ月ごとの継続申請
初回申請後は、約2ヶ月ごとに「育児休業給付金支給申請書」を提出します。ハローワークから申請書が送付されてきます。
ステップ3:育休終了後の手続き
育休が終了したら、「育児休業給付金支給終了届」を提出します。
申請に必要な主な書類
- 育児休業給付受給資格確認票・育児休業給付金支給申請書
- 賃金台帳・出勤簿(育休前6ヶ月分のコピー)
- 母子手帳(出産予定日・生年月日確認のため写し)
- 育児休業申出書のコピー
- (初回のみ)雇用保険被保険者証のコピー
電子申請(e-Gov)でも申請可能です。
よくある質問(Q&A)
Q1. パートタイマーでも育児休業給付金はもらえますか?
はい、雇用保険に加入していれば受け取れます。ただし有期雇用(契約社員・パート)の場合は、「子が1歳6ヶ月になるまでの間に契約が終了することが明らかでないこと」という要件があります。
Q2. 育児休業中に少し働いても給付金はもらえますか?
支給単位期間中の就業日数が10日以下(または就業時間が80時間以下)であれば、給付金を受け取りながら就業が可能です。ただし就業日数・時間に応じて支給額が調整されることがあります。
Q3. 育休を延長することはできますか?
子が1歳になる時点で保育所に入所できない場合などは、最長2歳まで延長が可能で、給付金も延長されます。「1歳の誕生日の前日」にハローワークへ延長申請が必要です。
Q4. 育休中に社会保険料はかかりますか?
育休中は健康保険・厚生年金保険の保険料が全額免除されます(従業員負担分も事業主負担分も)。雇用保険料は就業した日があれば就業分の賃金に対してかかります。
Q5. 育児休業給付金に税金はかかりますか?
育児休業給付金は非課税です。所得税も住民税もかかりません。年末調整や確定申告への申告も不要です。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度の根拠 | 雇用保険法 |
| 支給主体 | ハローワーク(事業主が代わりに申請) |
| 支給率(育休開始〜180日) | 賃金の67% |
| 支給率(181日目以降) | 賃金の50% |
| 出生後休業支援給付金 | 父母ともに育休取得で+13%(合計80%) |
| 育児時短就業給付金 | 時短勤務中の賃金の10% |
| 社会保険料 | 育休中は全額免除(従業員・事業主ともに) |
| 課税 | 非課税(所得税・住民税なし) |
| 最長受給期間 | 子が2歳になるまで(原則1歳まで) |
育児休業給付金は、従業員が安心して育休を取れるための重要な制度です。事業主には申請手続きを正確かつ速やかに行う義務があります。手続きを怠ると従業員とのトラブルになりかねないため、育休申し出があったらすぐにハローワークに確認しましょう。
育児休業・社会保険に関するお手続きのご相談は、西宮市の社会保険労務士事務所「竹田社労士事務所」まで、お気軽にお問い合わせください。

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