「障害者を雇用しているが、社内の設備が十分ではなく、職場環境をもっと整えたい」「保健室や食堂を設置したいが、費用の工面が難しい」——そんなお悩みを抱える事業主の方に活用していただきたいのが、障害者福祉施設設置等助成金です。
この助成金は、障害者を雇用する事業主が職場内に保健室・食堂・休憩室などの福祉施設を設置・整備した場合に、その費用の1/3(1事業所あたり年度最大2,250万円)が助成される制度です。
本記事では、障害者福祉施設設置等助成金の対象者・支給額・申請手続きについて、社会保険労務士がわかりやすく解説します。
障害者福祉施設設置等助成金とは
障害者福祉施設設置等助成金は、障害者を現に雇用する事業主または当該事業主の加入している事業主団体が、障害者である労働者の福祉の増進を図るために福祉施設を設置・整備する場合に、その費用の一部を助成する制度です。
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が実施しており、障害者雇用納付金制度に基づく助成金の一つです。申請窓口はJEEDの各都道府県支部高齢・障害者業務課となります。
なお、同じJEEDが運営する助成金として障害者作業施設設置等助成金(助成率2/3・最大4,500万円)がありますが、こちらは「障害者が作業を行いやすくするための設備・機器」の整備に特化した制度です。本助成金は「従業員の福祉向上」を目的とした施設整備への支援であり、目的が異なります。
対象となる事業主と対象障害者
助成を受けられる事業主と、その対象となる障害者の範囲は以下のとおりです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 対象事業主 | 障害者を現に雇用している事業主、または当該事業主が加入している事業主団体 |
| 対象障害者① | 身体障害者手帳を持つ身体障害者 |
| 対象障害者② | 療育手帳を持つ知的障害者、または知的障害と判定された者 |
| 対象障害者③ | 精神障害者保健福祉手帳を持つ精神障害者 |
支給対象となる施設の種類
助成の対象となる福祉施設は、対象障害者の福祉増進に必要な部分のみです。施設全体の費用や、障害者以外の従業員のみが利用する部分は対象外となります。
| 施設の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 保健施設 | 保健室、洗面所、休憩室 |
| 給食施設 | 食堂(社員食堂) |
| その他類似施設 | 上記に類する福祉的な施設 |
施設の「新設・購入」だけでなく「整備(改修・改造)」も対象です。例えば、既存の休憩室を障害者も利用しやすいようにリフォームする費用も助成対象となります。
支給額の計算方法と限度額
支給額は「支給対象費用 × 助成率(1/3)」で計算されます。算出額が支給限度額を超える場合は、限度額が上限となります。
| 対象労働者の区分 | 助成率 | 1人あたりの限度額 | 1事業所あたりの年度限度額 |
|---|---|---|---|
| 常用労働者(フルタイム等) | 1/3 | 225万円 | 2,250万円 |
| 短時間労働者(重度障害者を除く) | 1/3 | 112.5万円 | 2,250万円(上記と合算) |
| 短時間労働者(重度身体・知的・精神障害者) | 1/3 | 225万円 |
【計算例】食堂の新設に600万円かかった場合、支給額は200万円(600万円×1/3)になります。対象障害者が10名いれば1人あたり225万円×10名=2,250万円が年度上限です。
主な支給要件
この助成金の支給を受けるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 認定申請日以前1年間に、対象障害者を事業主都合で解雇していないこと
- 設置・整備する施設が、対象障害者の福祉増進を図ることを目的としていること
- 施設の対象費用は、対象障害者の利用部分に相当する費用に限ること(兼用施設の場合は按分計算)
- 施設の設置・整備に着手する前に、JEEDから受給資格の認定を受けること
申請の流れ
- 事前相談:最寄りのJEED都道府県支部高齢・障害者業務課に相談する
- 受給資格認定申請:施設の設置・整備に着手する前に「受給資格認定申請書」を提出する
- 認定通知の受領:JEEDから受給資格の認定通知を受け取る
- 施設の設置・整備を実施:認定された計画に基づき、工事・整備を行う
- 支給請求書の提出:施設の完成後、JEEDへ支給請求書と関係書類を提出する
- 助成金の受給:審査を経て、助成金が指定口座へ振り込まれる
⚠️ 重要:受給資格の認定を受ける前に施設の設置・整備に着手した場合、助成金を受け取ることができません。必ず着手前に申請を行ってください。
申請のポイントと注意事項
着手前の事前申請が必須
多くの助成金は事後申請(実施後に申請)できますが、この助成金は施設工事等の着手前にJEEDへの受給資格認定申請が必要です。施設整備を計画したら、まず早めに担当窓口に相談してください。
対象障害者の利用分のみが支給対象
施設を障害者以外の従業員と共用する場合、施設全体の費用ではなく対象障害者の利用に相当する費用のみが支給対象となります。按分方法についてはJEEDの担当者に事前確認することをお勧めします。
申請窓口はJEED(ハローワークではない)
この助成金は障害者雇用納付金制度を財源とした制度のため、窓口はハローワークではなくJEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)の各都道府県支部です。兵庫県の場合はJEED兵庫支部にお問い合わせください。
他のJEED助成金との併用
福祉施設の整備と合わせて作業設備も改善する場合は、障害者作業施設設置等助成金との併用も検討できます。また、障害者の採用・定着に関する他の助成金と組み合わせることで、より包括的な障害者雇用推進が可能です。
こんな事業主に特におすすめ
- 障害者を積極的に雇用しており、職場の福利厚生施設を充実させたい企業
- 社内に保健室や休憩スペースがなく、障害のある従業員が安心して働ける環境を整えたい事業主
- 社員食堂を新設・改修して、障害者を含む全従業員の職場環境を改善したい企業
- 障害者雇用率を安定的に維持・向上させ、定着率を高めたい事業主
- 複数の加入企業の障害者雇用環境を底上げしたい事業主団体
まとめ
障害者福祉施設設置等助成金は、障害者を雇用する職場の福利厚生施設(保健室・食堂・休憩室等)を整備する費用の1/3を助成する制度です。1事業所あたり年度最大2,250万円まで支給されます。
ポイントをまとめます。
- 対象は、障害者を現に雇用する事業主または事業主団体
- 助成率1/3、1事業所あたり年度上限2,250万円(1人あたり上限225万円)
- 施設工事等の着手前に、JEED都道府県支部への受給資格認定申請が必須
- 共用施設の場合は対象障害者の利用分のみが助成対象(按分計算あり)
「自社の障害者雇用環境をより良くしたい」「申請手続きのサポートをしてほしい」という事業主様は、お気軽にたけだリフテック社労士事務所までご相談ください。

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