「深夜まで残業してもすぐ翌朝出勤させている」「終業から始業まで何時間確保すればよいのかわからない」「勤務間インターバル制度を導入したいが、費用がかかると聞いて踏み出せない」——そんなお悩みを抱える経営者・人事担当者の方に知っていただきたいのが、働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)です。
この助成金は、退勤から翌出勤まで一定時間以上の「インターバル」を設ける制度を新たに導入した中小企業に対して、就業規則の整備費用・研修費用・労務管理ソフト導入費用などを対象経費の3/4(一定条件で4/5)、最大200万円まで助成する制度です。
本記事では、働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)の制度概要・助成額・申請手続きについて、西宮市の社会保険労務士がわかりやすく解説します。
働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)とは
働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)は、勤務終了後から次の勤務開始までに一定時間以上の「勤務間インターバル」を確保する制度の導入を支援するため、その取組に要した費用の一部を国が助成する制度です。
「勤務間インターバル制度」とは、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を設ける制度のことです。労働者の睡眠時間や生活時間を確保し、過労による健康被害を防ぐことを目的としています。
2019年4月の働き方改革関連法施行により、勤務間インターバル制度の導入は事業主の努力義務とされています。しかし、具体的に何時間確保すればよいのか、就業規則をどう変えればよいのかがわからず、未導入のままの中小企業も多いのが現状です。
そこで活用できるのが、この助成金です。国の費用補助を受けながら、働きやすい職場環境を整備することができます。
対象となる事業主
この助成金の対象となるのは、以下の要件をすべて満たす中小企業の事業主です。
【規模要件(業種別)】
| 業種 | 資本金・出資金 | 常時雇用する労働者数 |
|---|---|---|
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他(製造業等) | 3億円以下 | 300人以下 |
※資本金・出資金と労働者数のどちらかを満たせば対象となります。
【その他の要件】
- 労災保険の適用事業主であること
- 年次有給休暇の管理簿を作成していること
- 常時10人以上の労働者を雇用する事業場では、就業規則を届け出ていること
成果目標(インターバル時間の設定)
助成金の交付を受けるためには、指定する事業場の全労働者に対して勤務間インターバルを導入することが必須の成果目標となります。インターバルの時間によって、助成上限額が異なります。
| 導入するインターバル時間 | 助成上限額(常時30人超) | 助成上限額(常時30人以下) |
|---|---|---|
| 9時間以上11時間未満 | 80万円 | 120万円 |
| 11時間以上 | 160万円 | 200万円 |
インターバルが長いほど助成上限額が高くなります。9時間では退勤から翌日始業まで最低9時間確保することになり、多くの職場で実現可能な水準です。
【加算措置(選択可能)】
次の取組を合わせて行うと、上限額に加算されます。
- 賃上げ加算:労働者の時間当たり賃金を一定以上引き上げた場合 → 最大30万円加算(30人以下の場合)
- 割増賃金率加算:法定を超える割増賃金率を就業規則に規定した場合 → 最大5万円加算
助成率・助成額
助成金の交付額は、次の①と②のうちいずれか低い方の金額です。
- ① 成果目標ごとの助成上限額+加算額の合計
- ② 対象となる取組(改善事業)の費用合計×補助率3/4
ただし、常時使用する労働者数が30人以下の事業主で、対象経費が30万円を超える一部の改善事業を行う場合は、補助率が4/5に引き上げられます。
たとえば、労働者30人以下の会社が11時間以上のインターバルを導入し、対象経費が200万円かかった場合、交付額は「200万円×4/5=160万円」と「上限額200万円」のうち低い方、つまり160万円となります。
助成対象となる取組(改善事業)
以下の取組が「改善事業」として助成対象となります。成果目標の達成のために実施するものであれば、1つ以上実施すれば申請できます。
- 労務管理担当者・労働者への研修(勤務間インターバル制度の意義・導入方法の学習)
- 外部専門家(社会保険労務士・中小企業診断士など)によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定の整備(勤務間インターバルに関する規定の追加等)
- 人材確保のための取組(求人・採用活動への経費)
- 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
- デジタル式運行記録計の導入(運送業等向け)
- その他労働能率の増進に資する設備・機器の導入
社労士へのコンサルティング費用も助成対象に含まれるため、就業規則の改定サポートを社労士に依頼しながら助成金を活用することも可能です。
申請方法・手続きの流れ
申請は、以下の流れで行います。
① 事前確認・準備
まず、自社の現状の勤務時間管理を確認し、何時間のインターバルを設定するか決定します。就業規則の現行規定を確認し、改定が必要な箇所を洗い出します。
② 交付申請書の提出
都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に、交付申請書(様式第1号)と必要書類を提出します。申請はオンライン(Jグランツ)または紙申請で行えます。
申請期限:令和8年11月30日(月)午後5時まで(予算上限に達した場合は早期締切の可能性あり)
③ 交付決定通知の受領
労働局の審査を経て「交付決定通知書」が届いたら、取組(改善事業)を開始します。交付決定前に実施した取組は助成対象外となりますのでご注意ください。
④ 改善事業の実施
交付決定日から当該年度の1月31日までに取組を完了させます。就業規則の改定、研修の実施、ソフトウェア導入などを行います。
⑤ 支給申請書の提出
改善事業の完了後、支給申請書と実績報告書を労働局に提出します。
⑥ 助成金の受給
審査を経て、助成金が指定口座に振り込まれます。
よくある質問
Q:すでに勤務間インターバルを自主的に設けている場合は対象外ですか?
A:就業規則や労使協定に規定されていない場合、または規定のインターバル時間が短い場合は、新たに規定を設けたり延長したりすることで対象となる場合があります。詳しくは労働局にお問い合わせください。
Q:製造業で労働者が200人の会社は対象ですか?
A:製造業等のその他業種は「資本金3億円以下または労働者300人以下」が対象です。労働者200人であれば対象となります。
Q:就業規則の改定を社労士に依頼した場合の費用も助成されますか?
A:社会保険労務士によるコンサルティング費用も対象経費に含まれます。ただし、対象となる取組として申請に含める必要があります。
Q:複数の事業場を持つ企業の場合、すべての事業場で導入する必要がありますか?
A:申請時に「指定する事業場」を決め、その事業場全体での成果目標達成が求められます。本社・支店など複数事業場をまとめて申請することも可能です。
まとめ
働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)のポイントをまとめます。
- 中小企業が勤務間インターバル制度を導入する際の費用を国が助成
- 助成率は対象経費の3/4(30人以下の一定条件では4/5)
- 最大助成額は200万円(11時間以上インターバル・30人以下の場合)
- 社労士へのコンサルティング費用も助成対象
- 申請期限:令和8年11月30日(月)午後5時
勤務間インターバル制度は、労働者の健康を守るだけでなく、離職防止や採用力向上にもつながります。この制度を活用して職場環境を整備することは、長期的な人材確保にも有効な投資です。
申請手続きや就業規則の改定には専門知識が必要です。西宮市・尼崎市・芦屋市・神戸市など阪神地域で助成金の活用をお考えの経営者・人事担当者の方は、ぜひ社会保険労務士事務所SR TAKEDAにご相談ください。助成金の要件確認から就業規則の整備、申請書類の作成まで、ワンストップでサポートいたします。
【参考】厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」

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