「繁忙期は残業が多いのに、閑散期はやることがなくて暇……」——そんな業務の波に悩む事業主の方は多いのではないでしょうか。
2026年7月、企業の決算開示書類を作成支援する宝印刷株式会社(東京都豊島区)が、「閑散期に隔週で週休3日」とする制度を導入したことが注目されています。
「週休3日」というと「大企業だけの話」と思われがちですが、実は法律の仕組みを正しく活用すれば、中小企業でも合理的に導入できます。この記事では、宝印刷の事例をもとに、36協定・変形労働時間制・特別有給休暇の仕組みをわかりやすく解説します。
宝印刷の「閑散期だけ週休3日」とは?
宝印刷は、上場企業の有価証券報告書など決算開示書類の作成を支援する会社です。顧客企業の決算期が集中する3月〜6月が繁忙期、それ以外の時期が閑散期となります。
2026年から導入した制度の概要は次のとおりです:
- 全社員に12日分の特別有給休暇を付与
- 9月〜翌年2月(閑散期の半年間)は、隔週で週休3日を実施
- 繁忙期(3〜6月)は特別条項付き36協定を締結し、残業に対応
- 特別休暇の取得日は、管理職があらかじめシフトを組んで業務体制を確保
つまり「繁忙期は残業で対応し、閑散期はしっかり休む」という、業務の繁閑サイクルに合わせた合理的な働き方です。
週休3日制が注目される背景
近年、政府や大企業を中心に「週休3日制」への関心が高まっています。背景にあるのは:
- 人材確保競争の激化:従業員が「働きやすさ」で会社を選ぶ時代
- 働き方改革の推進:長時間労働の是正が法律で義務づけられている
- 生産性向上への期待:休養で集中力が高まり、仕事の質が上がるという考え方
ただし、週休3日を導入するには、労働基準法の枠組みを正しく理解する必要があります。
まず知っておきたい「法定労働時間」とは
労働基準法では、労働時間の上限として法定労働時間が定められています:
| 単位 | 上限時間 |
|---|---|
| 1日 | 8時間以内 |
| 1週間 | 40時間以内(特例事業場は44時間) |
この上限を超えて働かせるには、①36協定の締結または②変形労働時間制の導入が必要です。
36協定(時間外労働協定)とは?
36協定(さぶろくきょうてい)とは、会社が従業員に法定労働時間を超えて残業・休日労働をさせる場合に必要な、労働者代表との協定書です。労働基準法第36条に基づくことから「36協定」と呼ばれています。
36協定には時間外労働の上限があります(2019年4月施行の改正労基法で法定化):
| 上限の種類 | 時間数 |
|---|---|
| 月の残業上限(原則) | 45時間以内 |
| 年の残業上限(原則) | 360時間以内 |
36協定は毎年更新が必要で、労働基準監督署に届け出なければなりません。届出なく残業させると労働基準法違反となり、罰則(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科される場合があります。
「特別条項付き36協定」で繁忙期の残業に対応できる
宝印刷が活用しているのが、特別条項付き36協定です。繁忙期など特別な事情がある場合に限って、原則の上限(月45時間・年360時間)を超えた残業が認められます。
ただし、特別条項にも絶対的な上限があります(超えることは一切禁止):
| 上限 | 内容 |
|---|---|
| 年間の残業上限 | 720時間以内 |
| 単月の上限(休日労働含む) | 100時間未満 |
| 複数月平均(2〜6ヶ月) | 月80時間以内 |
| 月45時間超は年間何回まで | 6回まで |
宝印刷のように「繁忙期の3〜6月は特別条項で対応 → 閑散期はしっかり休む」という組み合わせが、法律の範囲内で合理的な働き方を実現する一つの方法です。
「変形労働時間制」でコストを抑えながら週休3日を実現
週4日勤務で週40時間を確保しようとすると、1日10時間勤務が必要になります。通常は1日8時間を超えると残業代が発生しますが、変形労働時間制を導入すれば、一定の期間で平均して週40時間以内であれば残業代が発生しません。
| 制度の種類 | 単位期間 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 1ヶ月単位の変形労働時間制 | 1ヶ月以内 | 週ごとに繁閑がある業種(小売、飲食など) |
| 1年単位の変形労働時間制 | 1年以内 | 季節ごとに繁閑がある業種(製造、農業、宝印刷のような業種など) |
| フレックスタイム制 | 最大3ヶ月 | 従業員が自分で始業・終業時刻を決める |
1年単位の変形労働時間制を使えば、「繁忙期は1日10時間・週5日、閑散期は1日8時間・週4日(週休3日)」という設定も、年間の平均が週40時間以内であれば残業なしで対応できます。
会社独自の「特別有給休暇」で従業員満足度を高める
宝印刷が取り入れているもう一つの工夫が、会社独自の特別有給休暇(12日分)の付与です。
法律で定められた年次有給休暇(年10〜20日)とは別に、会社が自由に追加の休暇を設定できます。この「特別有給休暇」を活用することで:
- 従業員の満足度・エンゲージメントが向上する
- 採用競争力が高まる(「うちは週休3日もある」と言えるようになる)
- 繁忙期に頑張った従業員へのご褒美として機能する
ポイントは、管理職があらかじめシフトを組んで業務体制を確保した上で休暇を取得させることです。これにより、現場が混乱することなく制度を運用できます。
中小企業でも「閑散期週休3日」を導入できる?
「うちは10人以下の小さな会社だから難しい」と思われるかもしれません。しかし、むしろ小規模企業の方が柔軟に制度設計しやすい面もあります。
導入を検討する際のチェックポイント:
- 自社の繁閑サイクルを把握する:いつが繁忙期で、いつが閑散期か整理する
- 現行の36協定を見直す:特別条項が締結されているか確認する
- 変形労働時間制の導入を検討する:1年単位の変形労働時間制が有効な場合が多い
- 就業規則を整備する:特別有給休暇の規定を追加する
- まず試験的に運用する:特定の部署や一部の期間から始めてみる
まとめ:「繁忙期は頑張り、閑散期は休む」は合理的な経営戦略
宝印刷の事例は、36協定の特別条項・変形労働時間制・特別有給休暇を組み合わせることで、法律の範囲内で合理的な「選択的週休3日」を実現している好例です。
週休3日制は単なる「従業員へのサービス」ではなく、人材確保・長時間労働の是正・従業員のウェルビーイング向上を同時に実現する経営戦略でもあります。
| 活用する制度 | 役割 |
|---|---|
| 特別条項付き36協定 | 繁忙期に月45時間超の残業を可能にする |
| 1年単位の変形労働時間制 | 繁忙期・閑散期で労働時間を柔軟に配分し、残業代を抑制 |
| 会社独自の特別有給休暇 | 閑散期に週休3日を実現する追加の休暇 |
36協定の見直しや変形労働時間制の導入・就業規則の整備については、専門的な知識が必要です。西宮市の竹田社労士事務所では、貴社の業種・規模に合わせた働き方改革の制度設計をサポートしています。お気軽にご相談ください。

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