「聴覚障害のある方を採用したいけど、コミュニケーションが心配で…」
「手話通訳者を雇うとコストがかかりすぎる。補助金や助成金はないの?」
障害者雇用率の引き上げ(令和6年4月から2.5%、令和8年7月から2.7%)を受け、聴覚障害のある方の雇用を検討する企業が増えています。しかし、コミュニケーション支援のコストが課題となるケースも少なくありません。
実は、職場に手話通訳者や要約筆記者を配置した場合の費用を助成してくれる制度があります。それが「手話通訳・要約筆記等担当者の配置助成金」です。
今回は、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が支給する「障害者介助等助成金」の中から、手話通訳・要約筆記等担当者の配置助成金について、西宮の社会保険労務士がわかりやすく解説します。
手話通訳・要約筆記等担当者の配置助成金とは?
この助成金は、聴覚障害のある労働者が職場で円滑にコミュニケーションを取れるよう、手話通訳者や要約筆記者を職場に配置するために要した費用を助成する制度です。
根拠法は「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」であり、JEEDが窓口となっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 障害者介助等助成金(手話通訳・要約筆記等担当者の配置助成金等) |
| 管轄機関 | 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) |
| 目的 | 聴覚障害のある従業員のコミュニケーション支援のための手話通訳者・要約筆記者の配置費用を助成 |
| 対象障害 | 聴覚障害(身体障害者手帳1〜6級)または音声機能障害・言語機能障害 |
| 申請窓口 | 各都道府県のJEED支部(兵庫県はJEED兵庫支部) |
3種類の助成金の仕組み
「手話通訳・要約筆記等担当者の配置助成金等」には、以下の3種類があります。
① 手話通訳・要約筆記等担当者の配置助成金(基本措置)
最も基本的な助成金です。聴覚障害のある労働者のために、専任または兼任の手話通訳担当者や要約筆記担当者を職場に配置した場合に、その担当者にかかる賃金の一部が支給されます。
② 配置の継続措置に係る助成金
基本措置による助成期間が終了した後も、引き続き手話通訳・要約筆記担当者を配置し続ける場合に支給される助成金です。長期的な就労継続をサポートします。
③ 中高年齢等措置に係る助成金
45歳以上の中高年齢の聴覚障害者や、重度障害者など一定の要件を満たす場合に適用される特例措置です。より手厚い支援が受けられます。
支給対象となる事業主の要件
この助成金を受けるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 民間企業(事業主)であること
- 聴覚障害のある労働者を雇用保険の一般被保険者として雇用していること
- JEEDから受給資格の認定を受けていること(事前申請が必要)
- 雇用する障害者が身体障害者手帳1〜6級の聴覚障害または音声・言語機能障害を持つこと
- 手話通訳者等を実際に配置し、業務上のコミュニケーション支援を行わせていること
- 支給申請日において、労働関係法令上の違反がないこと
支給対象となる費用・措置の内容
支給の対象となるのは、手話通訳担当者または要約筆記担当者として職場に配置された担当者の賃金です。
| 対象となる担当者 | 内容 |
|---|---|
| 手話通訳担当者 | 手話による通訳を行う担当者(専任・兼任を問わず) |
| 要約筆記担当者 | 話し言葉を文字で要約して伝える担当者(ノートテイカー) |
なお、以下のような費用は支給対象外となります。
- 外部の手話通訳会社への委託費用(配置助成ではなく委嘱助成の対象)
- 担当者が行う手話通訳業務以外の通常業務にかかる賃金部分
- 設備・機器費用
「手話通訳者を外部から委嘱する(業務委託する)」場合は、別の助成金「手話通訳・要約筆記等担当者の委嘱助成金」が対象となります。配置(社内に担当者を置く)と委嘱(外部委託)で制度が異なりますのでご注意ください。
支給額・支給率・支給期間
支給額は、手話通訳担当者等にかかる賃金の一部が支給されます(令和8年度時点)。
| 措置の種類 | 支給率 | 支給期間 |
|---|---|---|
| 基本措置(配置助成金) | 担当者の賃金の3/4(中小企業)・2/3(大企業) | 最大3年間(36ヶ月) |
| 継続措置 | 担当者の賃金の2/3(中小企業)・1/2(大企業) | 最大3年間(36ヶ月) |
| 中高年齢等措置 | 担当者の賃金の3/4(中小企業)・2/3(大企業) | 最大3年間(36ヶ月) |
支給額には上限が設けられています。詳細な上限額はJEEDの最新パンフレットまたは支部窓口にてご確認ください。
申請の流れ(手続きの手順)
助成金の申請は以下の順序で進めます。事前に「受給資格認定申請」が必要な点が重要です。措置を実施してから申請するのではなく、実施前に認定を受ける必要があります。
ステップ1:受給資格認定申請
手話通訳担当者を配置する前に、管轄のJEED都道府県支部に「障害者助成金受給資格認定申請書(様式第602号)」等を提出し、受給資格の認定を受けます。
ステップ2:担当者の配置・措置の実施
JEEDから受給資格認定を受けた後、実際に手話通訳担当者または要約筆記担当者を職場に配置して業務を開始します。
ステップ3:支給申請
措置を実施した後、一定期間ごとに「障害者助成金支給請求書(様式第622号)」等を提出して支給申請を行います。
| 手続き | 主な書類 | タイミング |
|---|---|---|
| 受給資格認定申請 | 受給資格認定申請書(様式第602号)、支給要件確認申立書(様式第540号)、事業・支援計画書など | 措置実施前 |
| 支給申請 | 支給請求書(様式第622号)、出勤状況関連書類、介助・支援状況報告書など | 措置実施後、各申請期ごと |
申請方法
- 持参または郵送:管轄する都道府県支部(兵庫県はJEED兵庫支部)に必要書類を提出(様式等は3部必要)
- e-Gov電子申請:オンラインでの電子申請も可能
障害者雇用率引き上げとの関係〜なぜ今この助成金が重要なのか〜
令和6年(2024年)4月から民間企業の障害者雇用率が2.3%から2.5%に引き上げられ、令和8年(2026年)7月からはさらに2.7%となりました。
雇用率達成のために障害者雇用を進める中で、「聴覚障害のある方を採用したいが、コミュニケーション面が不安」という声をよく聞きます。この助成金を活用することで、手話通訳担当者を社内に配置するコスト負担を大幅に軽減できます。
聴覚障害者雇用のメリット
- 障害者雇用率のカウント対象(身体障害者手帳所持者)
- 集中力や正確性が求められる業務(データ入力・校正・製造など)に高い適性を発揮する方が多い
- IT・デジタルツールを活用したコミュニケーションが得意な方も多い
- 手話通訳担当者を配置することで、職場全体のダイバーシティ推進につながる
よくある質問(Q&A)
Q:手話通訳担当者は必ずしも資格が必要ですか?
A:特定の資格要件は定められていませんが、実際に手話通訳業務ができる能力が必要です。「手話通訳士」や「手話通訳者」の資格を持つ方であれば、業務の信頼性も高まります。
Q:既存社員が兼任で手話通訳を担当する場合も対象になりますか?
A:はい、専任でなく兼任でも対象となる場合があります。ただし、手話通訳業務にあてた時間に相当する賃金部分のみが支給対象となりますので、業務記録の管理が必要です。
Q:「委嘱」と「配置」の違いは何ですか?
A:「配置」は手話通訳担当者を自社の社員として雇用して配置することです。「委嘱」は外部の手話通訳者に業務を委託(業務委託契約)することです。外部委託の場合は「手話通訳・要約筆記等担当者の委嘱助成金」が別途あります。
まとめ
「手話通訳・要約筆記等担当者の配置助成金」のポイントを整理します。
- 聴覚障害のある従業員のコミュニケーション支援のために手話通訳者・要約筆記者を配置した場合、担当者賃金の3/4(中小企業)が助成される
- 措置実施前に受給資格認定申請が必要。逆順にすると支給されないため要注意
- 基本3年間、継続措置でさらに3年、最長6年以上にわたって助成を受けることができる
- 障害者雇用率の引き上げに対応しながら、聴覚障害のある方が長く活躍できる職場をつくるための重要な制度
- 申請はJEED都道府県支部(兵庫県はJEED兵庫支部)またはe-Gov電子申請で受け付け
聴覚障害のある従業員を迎える準備を整え、助成金も賢く活用することで、企業にとっても従業員にとっても働きやすい職場環境をつくることができます。
西宮・阪神エリアの事業主の皆様へ
手話通訳・要約筆記等担当者の配置助成金の申請手続きや、障害者雇用に関するご相談は、西宮市の社会保険労務士事務所・SR高田社会保険労務士事務所にお気軽にどうぞ。受給資格認定申請の書類作成から申請代行まで、丁寧にサポートいたします。

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