「会社で使える助成金があるらしいけど、種類が多すぎてどれを選べばいいかわからない」「助成金の申請を検討しているけれど、自社に合うものがどれか整理できていない」——そんなお悩みをお持ちの経営者・人事担当者の方に向けて、令和8年度(2026年度)に受付中の雇用関係助成金を**カテゴリ別に整理してご紹介**します。
厚生労働省が実施している雇用関係助成金は、9つの大カテゴリ・50コース以上が現在受付中です。目的や業種・企業規模によって活用できる助成金が異なるため、まずは全体像を把握することが助成金活用の第一歩です。
雇用関係助成金とは?
雇用関係助成金とは、厚生労働省が事業主(企業)に対して支給する助成金の総称です。雇用の安定・労働者の能力開発・職場環境の整備・障害者雇用の促進などを目的として設けられており、原則として雇用保険に加入している事業主が申請できます。
助成金は「補助金」と異なり、審査による採択競争がなく、要件を満たせば支給が受けられるのが特徴です。ただし、申請期限や事前手続きが必要なものが多いため、取り組みを始める前に要件を確認することが重要です。
| 助成金の主な特徴 | 内容 |
|---|---|
| 支給主体 | 厚生労働省・都道府県労働局 |
| 主な申請先 | 所在地を管轄する都道府県労働局・ハローワーク |
| 申請のタイミング | 原則として取り組みの「事前申請」が必要 |
| 財源 | 雇用保険料(事業主負担分) |
| 受給要件 | 雇用保険適用事業所・各助成金固有の要件を満たすこと |
カテゴリ①:雇用維持・雇用安定系
雇用調整助成金
景気変動や経済的事情による雇用維持を支援します。事業主が休業・教育訓練・出向等を行って雇用を維持した場合に、休業手当・賃金等の一部が助成されます。令和8年度も通常版(新型コロナ特例は終了)が受付中です。
産業雇用安定助成金(3コース)
- 産業連携人材確保等支援コース:成長分野への円滑な労働移動を促す事業主間の連携を支援
- スキルアップ支援コース:在籍型出向(従業員を他社に出向させスキルアップを図る)を実施した場合に助成
- 災害特例人材確保支援コース:能登半島地震等の被災地事業主が人材確保に取り組む場合に助成
カテゴリ②:採用支援系(求職者の雇い入れ促進)
早期再就職支援等助成金(4コース)
離職者の早期再就職を支援します。再就職支援サービスの活用や中途採用の強化に取り組む事業主が対象です。
- 再就職支援コース:従業員を離職させる際に再就職支援会社に委託した場合に助成
- 雇入れ支援コース:再就職支援会社の紹介で離職者を雇い入れた場合に助成
- 中途採用拡大コース:中途採用比率の拡大や45歳以上の初採用に取り組んだ場合に助成
- UIJターンコース:地方移住者の採用を機に人事評価制度等を整備した場合に助成
特定求職者雇用開発助成金(5コース)
就職が困難な特定の求職者(高齢者・障害者・生活保護受給者等)を雇い入れた事業主を支援します。
| コース名 | 主な対象求職者 | 助成額の目安 |
|---|---|---|
| 特定就職困難者コース | 60歳以上、身体障害者、母子家庭の母等 | 最大240万円 |
| 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース | 発達障害者、難治性疾患(難病)患者 | 最大240万円 |
| 中高年層安定雇用支援コース | 45〜64歳の安定就労が困難な中高年層 | 最大60万円 |
| 生活保護受給者等雇用開発コース | 生活保護受給者・生活困窮者 | 最大240万円 |
| 成長分野等人材確保・育成コース | 成長分野(IT・GX等)への就業を目指す求職者 | 最大240万円 |
トライアル雇用助成金(3コース)
試用期間中(原則3か月)に一定額を助成し、採用リスクを低減します。本採用に向けた「お試し雇用」を国が後押しする制度です。
- 一般トライアルコース:就職困難者を3か月雇用、月最大4万円を助成
- 障害者トライアル・短時間トライアルコース:障害者を対象、月最大8万円(重度障害者等)
- 若年・女性建設労働者トライアルコース:建設業への若年者・女性雇用を試行
カテゴリ③:地域雇用・通年雇用
- 地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース):同意雇用開発促進地域等で事業所の設置・整備と雇用を行った場合に助成(最大1,500万円)
- 地域雇用開発助成金(沖縄若年者雇用促進コース):沖縄県内で34歳以下の若年者を新規雇用した場合に特例助成
- 通年雇用助成金:季節的業務に就く従業員を通年雇用化する北海道等の事業主を支援
カテゴリ④:人材確保等支援助成金(7コース)
従業員の定着率向上や職場環境の改善に取り組む事業主を支援します。業種・テーマによってコースが分かれています。
| コース名 | 主な対象 | 最大支給額目安 |
|---|---|---|
| 雇用管理制度・雇用環境整備助成コース | 全業種の中小企業 | 325万円程度 |
| 中小企業団体助成コース | 事業協同組合等の団体 | 1,000万円 |
| 建設キャリアアップシステム等活用促進コース | 建設業 | 技能者1人16万円 |
| 若年者及び女性に魅力ある職場づくり(建設分野) | 建設業 | 経費3/5〜3/4+定着1人42万円 |
| 作業員宿舎等設置助成コース(建設分野) | 建設業 | 経費3/5〜3/4または1人25万円 |
| 外国人労働者就労環境整備助成コース | 外国人雇用企業 | 最大80万円 |
| テレワークコース(令和8年度から実施拡大事業主も対象) | テレワーク導入・拡大企業 | 最大35万円 |
カテゴリ⑤:65歳超雇用推進助成金(3コース)
65歳以上の高年齢者が働きやすい職場環境を整備した事業主を支援します。シニア人材の活用・定年延長・無期転換などに取り組む場合に助成されます。
- 65歳超継続雇用促進コース:65歳以上への定年延長・定年廃止・66歳以上の継続雇用制度の導入に最大160万円
- 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース:高年齢者向けの評価制度・研修制度等の整備に最大120万円
- 高年齢者無期雇用転換コース:50歳以上の有期契約労働者を無期雇用に転換した場合に1人60万円
カテゴリ⑥:キャリアアップ助成金(7コース)
パート・アルバイト・契約社員などの非正規労働者の待遇改善・正社員化を支援する最も人気の高いカテゴリです。幅広い企業が活用できます。
| コース名 | 主な取り組み | 助成額(中小企業)目安 |
|---|---|---|
| 正社員化コース | 有期雇用→正規雇用への転換 | 1人80万円 |
| 障害者正社員化コース | 障害者の有期雇用→正規雇用 | 1人120万円 |
| 賃金規定等改定コース | 非正規の基本給を3%以上増額 | 1人5万円〜(上限960万円) |
| 賃金規定等共通化コース | 正規・非正規共通の賃金規定整備 | 60万円 |
| 賞与・退職金制度導入コース | 非正規への賞与・退職金制度新設 | 最大60万円 |
| 社会保険適用時処遇改善コース | 社会保険加入に伴う処遇改善 | 最大50万円 |
| 短時間労働者労働時間延長支援コース | 週所定労働時間を5時間以上延長 | 1人22.5万円 |
カテゴリ⑦:両立支援等助成金(7コース)
育児・介護・女性活躍など、仕事と家庭の両立を支援する職場環境づくりに取り組む事業主を支援します。育児休業や介護休業の取得促進に特に積極的な事業主に対して手厚い助成が用意されています。
- 出生時両立支援コース:男性従業員が産後パパ育休を取得すると最大77万円
- 介護離職防止支援コース:介護を理由とした離職防止の取り組みに最大60万円
- 育児休業等支援コース:育休取得・職場復帰を支援する制度整備に最大64万円
- 育休中等業務代替支援コース:育休中の業務代替要員の確保に係る費用を助成
- 柔軟な働き方選択制度等支援コース:フレックスタイム・テレワーク等2制度の導入に最大40万円
- 事業所内保育施設コース:社内保育所の設置費の2/3(最大3,000万円)
- 不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース:不妊治療・月経困難症等に関する休暇制度等の整備に最大30万円
カテゴリ⑧:人材開発支援助成金(6コース)
従業員に教育訓練・スキルアップの機会を提供する事業主を支援します。OFF-JT(外部研修等)やOJTの費用・賃金の一部が助成されます。
- 人材育成支援コース:業務外の教育訓練(研修・資格取得等)の費用と賃金を助成
- 教育訓練休暇等付与コース:有給の教育訓練休暇制度を整備した場合に30万円
- 人への投資促進コース:デジタル人材・高度人材育成、定額制eラーニング等に最大75%助成
- 事業展開等リスキリング支援コース:新規事業展開等に伴う人材のリスキリングに最大75%助成
- 建設労働者認定訓練コース:建設業の認定職業訓練実施に費用+賃金を助成
- 建設労働者技能実習コース:建設業の技能実習(玉掛け・フルハーネス等)に費用+賃金を助成
カテゴリ⑨:障害者雇用納付金制度の助成金(JEEDが窓口)
障害者を雇用する事業主の費用を支援します。申請窓口は独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)です。
- 障害者作業施設設置等助成金:作業設備の設置・整備に費用の3/4(最大4,500万円)
- 障害者福祉施設設置等助成金:休憩室・食堂等の整備に費用の1/3
- 障害者介助等助成金:介助者・手話通訳者等の配置に月額助成
- 職場適応援助者助成金(訪問型・企業在籍型):ジョブコーチ(職場適応援助者)の活用を支援
- 重度障害者等通勤対策助成金:送迎バス等の通勤支援に費用の3/4
- 障害者雇用相談援助助成金:専門家のコンサルティング(採用〜定着)を無償支援
- 障害者能力開発助成金:職業訓練施設の運営に費用の4/5
申請に共通する重要ポイント
雇用関係助成金には、すべてのコースに共通する申請上のポイントがあります。
助成金の多くは「取り組みを開始する前に申請・認定を受けること」が条件です。先に取り組みを実施してから申請しても、対象外になるケースがあります。申請のタイミングには十分ご注意ください。
共通の受給要件(主なもの)
- 雇用保険の適用事業所であること
- 支給要件確認申立書(共通様式第1号)の要件を満たすこと
- 直近2年間に労働関係法令の違反がないこと
- 不正受給を行ってから5年以内でないこと
- 支払方法・受取人住所届を提出していること
必要な共通書類
- 支給要件確認申立書(様式第1号)
- 支払方法・受取人住所届(別添様式)
- 与信情報承諾書(様式第3号)
- 各助成金固有の申請書類
なお、生産性要件は令和5年3月31日をもって廃止されています。
どの助成金を選ぶか?目的別の早見表
| お悩み・目的 | おすすめカテゴリ・コース |
|---|---|
| パート・アルバイトを正社員にしたい | キャリアアップ助成金(正社員化コース) |
| 非正規の賃金を上げたい | キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース) |
| 育児休業を取りやすくしたい | 両立支援等助成金(出生時両立支援・育児休業等支援コース) |
| 高齢者を長く働かせたい | 65歳超雇用推進助成金 |
| 社員教育・資格取得を支援したい | 人材開発支援助成金 |
| 障害者を雇用したい | 特定求職者雇用開発助成金・障害者雇用納付金制度の助成金 |
| テレワークを導入・拡大したい | 人材確保等支援助成金(テレワークコース) |
| 試しに人を雇いたい(リスクを減らしたい) | トライアル雇用助成金 |
| 退職金制度を整えたい | 中小企業退職金共済(中退共)掛金助成 |
まとめ
令和8年度(2026年度)に受付中の雇用関係助成金は、大きく9つのカテゴリに分類できます。それぞれの助成金には固有の要件・金額・申請手続きがあり、自社の状況や課題に合ったコースを選ぶことが重要です。
| カテゴリ | コース数 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 雇用維持・雇用安定 | 4コース | 雇用維持・人材シェア |
| 採用支援(求職者の雇い入れ) | 12コース | 新規雇用・試行雇用 |
| 地域雇用・通年雇用 | 3コース | 地域振興・季節業種 |
| 人材確保等支援 | 7コース | 定着率向上・テレワーク等 |
| 65歳超雇用推進 | 3コース | 高年齢者の活躍推進 |
| キャリアアップ | 7コース | 非正規労働者の待遇改善 |
| 両立支援等 | 7コース | 育児・介護との両立 |
| 人材開発支援 | 6コース | 従業員教育・スキルアップ |
| 障害者雇用(JEED) | 9コース | 障害者の雇用・定着支援 |
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