「従業員に退職金を払いたいけれど、仕組みを整えるコストが心配」「退職金制度がないと求人で不利になる」——中小企業の経営者からよく聞く悩みです。
そんな中小企業を支援するために、国が退職金制度の掛金を助成する制度があります。それが中小企業退職金共済制度(中退共)の掛金助成です。
新規に加入した場合、加入後4か月目から1年間、掛金月額の1/2(上限5,000円/人)を国が助成します。掛金月額を10,000円に設定した場合、最初の1年間は国から5,000円/月が補助されるため、実質半額で退職金制度を導入できます。
毎年10月は「中退共加入促進強化月間」です。この機会に、制度の仕組みと助成内容をご確認ください。
中小企業退職金共済制度(中退共)とは?
中退共は、退職金制度を単独では持てない中小企業のために国が設けた退職金共済制度です。独立行政法人 勤労者退職金共済機構が運営しており、2026年6月末時点で約55万の中小企業が加入しています。
制度の主な特徴は次の通りです。
- 事業主が毎月掛金を積み立てる(従業員1人ごとに設定)
- 従業員が退職したとき、機構から直接退職金が支払われる
- 掛金は全額損金(経費)扱いになる
- 従業員は退職金の受け取りが保障される
- 加入後4か月目から1年間、掛金の一部を国が助成
社内で退職金の資金を管理する必要がなく、事務負担が少ない点も中小企業に選ばれている理由の一つです。
掛金助成の内容
① 新規加入助成
新しく中退共に加入した中小企業の事業主には、次の助成があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成率 | 掛金月額の2分の1 |
| 上限額 | 1人あたり月額5,000円 |
| 助成期間 | 加入後4か月目から1年間(12か月) |
| 最大助成額 | 5,000円 × 12か月 = 1人あたり年間6万円 |
・加入後1〜3か月目:事業主が10,000円を全額負担
・加入後4〜15か月目(12か月間):国が5,000円を助成 → 事業主の実質負担は5,000円/月
・10人加入の場合:5,000円 × 10人 × 12か月 = 最大60万円の助成
② パートタイマー等短時間労働者への特例
週所定労働時間が30時間未満の短時間労働者(パートタイマー等)の特例掛金月額(4,000円以下)で加入する場合、基本助成に加えて次の上乗せ助成があります。
| 掛金月額 | 通常の助成(1/2) | 上乗せ助成 | 合計助成額 |
|---|---|---|---|
| 2,000円 | 1,000円 | 300円 | 1,300円 |
| 3,000円 | 1,500円 | 400円 | 1,900円 |
| 4,000円 | 2,000円 | 500円 | 2,500円 |
③ 掛金月額変更助成(増額時)
既に加入している事業主が従業員の掛金月額を増額した場合も、助成が受けられます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 掛金月額18,000円以下からの増額 |
| 助成率 | 増額分の3分の1 |
| 助成期間 | 増額した月から1年間(12か月) |
加入できる中小企業の要件
中退共に加入できる「中小企業」の定義は業種によって異なります。常用従業員数または資本金・出資金のいずれかの要件を満たせば加入できます。
| 業種 | 常用従業員数 | または資本金・出資金 |
|---|---|---|
| 一般業種(製造業・建設業など) | 300人以下 | 3億円以下 |
| 卸売業 | 100人以下 | 1億円以下 |
| サービス業 | 100人以下 | 5,000万円以下 |
| 小売業 | 50人以下 | 5,000万円以下 |
なお、同居の親族のみを使用する事業主や、既に他の退職金共済制度(建設業退職金共済等)に加入している場合は、加入できないケースがあります。詳細は中退共の窓口でご確認ください。
掛金月額の種類(16段階)
掛金月額は、従業員1人ごとに5,000円〜30,000円の範囲で16段階から自由に選択できます。途中で増額も可能です(減額は原則不可)。
| 掛金月額の一覧(一般) | |||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 5,000円 | 6,000円 | 7,000円 | 8,000円 | 9,000円 | 10,000円 | 12,000円 | 14,000円 |
| 16,000円 | 18,000円 | 20,000円 | 22,000円 | 24,000円 | 26,000円 | 28,000円 | 30,000円 |
短時間労働者(パートタイマー等)については、2,000円・3,000円・4,000円の特例掛金月額が設定されています。
加入の手続きの流れ
- 申込書の入手:金融機関(銀行・信用金庫等)、商工会議所・商工会、または中退共の支部・窓口で入手
- 掛金月額の決定:従業員ごとに掛金月額を設定(入社時期に関わらず、各自の掛金月額は任意に設定可能)
- 申込書の提出:必要書類(登記事項証明書等)を添付して提出
- 審査・承認:申込内容が確認され、従業員への共済手帳が発行される
- 口座振替開始:毎月の掛金が指定口座から自動引き落とし
- 国からの助成(自動適用):加入後4か月目から自動的に国の助成が適用される
10月は「中退共加入促進強化月間」
毎年10月は、厚生労働省と中退共が「中小企業退職金共済制度加入促進強化月間」として普及促進活動を集中的に実施しています。令和8年(2026年)10月も同様に、ポスターの配布・マスメディアでの広報・事業主団体への周知活動が展開される予定です。
この機会に加入を検討している場合は、10月中に最寄りの金融機関や商工会議所にご相談ください。
中退共のメリット・デメリット
メリット
- 掛金が全額損金(経費)になる:法人税・所得税の節税効果がある
- 国の助成で導入コストを削減:新規加入後1年間、掛金の半額を国が支援
- 退職金の資金管理が不要:機構が管理・支払いを行うため社内の事務負担がゼロ
- 採用力・定着率の向上:退職金制度があることで求職者へのアピールになる
- 手続きが簡単:申込書1枚で加入でき、毎月の事務は口座振替のみ
デメリット・注意点
- 掛金月額の減額は原則不可:一度設定した掛金は、やむを得ない事情がある場合を除き下げられない
- 短期退職では退職金がゼロ:勤続1年未満の従業員には退職金が支払われない
- 中小企業でなくなった場合は継続不可:加入要件を満たさなくなった場合は解約が必要
- 掛金は会社が全額負担:従業員が掛金を負担することはできない
まとめ:10月の強化月間を活用して退職金制度を整備しましょう
中小企業退職金共済制度(中退共)の掛金助成は、中小企業が退職金制度を導入する際のコスト負担を大幅に軽減できる国の支援制度です。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 新規加入助成 | 掛金月額の1/2(上限5,000円/人)× 12か月 |
| 最大助成額 | 1人あたり年間6万円 |
| 10人加入なら | 最大60万円の助成 |
| 節税効果 | 掛金全額が損金処理可能 |
| 10月の強化月間 | 各地の窓口でサポートが充実 |
退職金制度の導入や中退共への加入について、申請手続きの代行や制度選択のアドバイスを含め、西宮市の社会保険労務士にお気軽にご相談ください。

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