「在宅勤務制度を導入したいが、コストや手続きが心配」「すでにテレワークを導入しているが、もっと利用者を増やしたい」——そんなお悩みを抱える事業主の方にぜひ知っていただきたいのが、人材確保等支援助成金(テレワークコース)です。
テレワークは、優秀な人材の確保・定着や、育児・介護と仕事の両立にも役立つ重要な施策です。この助成金を活用すれば、テレワーク制度の新規導入はもちろん、令和8年度からは既存のテレワーク制度の実施拡大も助成対象になりました。
この記事では、制度の概要・支給額・申請要件・申請の流れを、社会保険労務士の視点でわかりやすく解説します。
人材確保等支援助成金(テレワークコース)とは?
人材確保等支援助成金(テレワークコース)は、テレワークを制度として整備・実施し、人材確保や雇用管理改善等の効果をあげた中小企業事業主を支援する国の助成金です。厚生労働省が所管し、都道府県労働局が窓口となります。
テレワークには「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライトオフィス勤務」などが含まれます。いずれの形態でも、適切な労務管理を行っていることが前提条件となります。
この助成金の最大の特徴は、「制度導入助成」と「目標達成助成」の2段階で受け取れる点です。まず制度を導入・実施した段階で助成を受け、その後、離職率改善などの目標を達成した段階でさらに上乗せ助成が受けられます。
令和8年度の注目改正:「実施拡大事業主」が新たに対象に
令和8年度の大きな変更点は、すでにテレワークを導入している事業主でも「実施拡大事業主」として申請できるようになったことです。
| 区分 | 対象 | 実績要件(テレワーク実施) |
|---|---|---|
| 新規導入事業主 | テレワークを新たに制度として導入する事業主 | 対象労働者全員が評価期間中に1回以上実施、または週平均1回以上実施 |
| 実施拡大事業主(令和8年度から) | すでにテレワークを導入しており、実施をさらに拡大する事業主 | 上記に加え、評価期間前3ヶ月比でテレワーク実施回数を25%以上増加させること |
これにより、「すでにテレワーク制度はあるが、もっと活用したい」「利用者をもっと増やしたい」という企業にとっても、国の助成を受けながらテレワーク推進できるようになりました。
対象となる事業主
以下の要件を満たす中小企業事業主が対象です。
- 雇用保険適用事業所の事業主であること
- テレワークを新規導入する、またはテレワークの実施をさらに拡大する意向があること
- 適切な労務管理のもとでテレワークを実施できる環境を整備すること
- 支給申請日の前日時点で、過去1年間に労働関係法令違反がないこと
中小企業の定義(産業別)は以下の通りです。
| 業種 | 資本金(または出資額) | 常時使用する労働者数 |
|---|---|---|
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他(製造業・建設業等) | 3億円以下 | 300人以下 |
支給額
支給額は1企業あたりの定額支給です。助成金は2段階で受け取ります。
| 助成の種類 | 支給額 | 備考 |
|---|---|---|
| ①制度導入助成 | 20万円 | 評価期間前3ヶ月の取組実施+テレワーク実績要件を達成した場合 |
| ②目標達成助成 | 10万円 | 離職率要件を達成した場合(基本額) |
| ②目標達成助成(賃金要件加算) | 15万円 | 離職率要件に加え、賃金を5%以上引き上げた場合 |
①と②を合わせた最大支給額は35万円(賃金要件加算の場合)です。まず制度導入助成の20万円を受給し、その後評価期間終了後に目標達成状況を確認して追加で助成を受ける流れとなります。
制度導入助成を受けるための要件
制度導入助成を受けるには、評価期間前3ヶ月間に以下の取組を実施する必要があります。
【必須】職場風土作りの取組
テレワークを推進するための職場の意識・文化づくりとして、以下のような取組が必須です。
- テレワーク推進のための経営トップのメッセージ発信
- 管理職や従業員へのテレワーク推進方針の周知
- テレワーク利用実績の把握・フィードバック
【選択】以下から1つ以上実施
- 就業規則等の拡充:テレワーク勤務規程の整備・改定
- 外部専門家によるコンサルティング:テレワーク導入・運用に関する専門家の活用
- 労務管理担当者に対する研修:管理職や担当者へのテレワーク管理研修の実施
- 労働者に対する研修:従業員向けのテレワーク活用研修の実施
これらの取組を実施した上で、対象労働者がテレワーク実績要件(新規導入:1回以上実施または週平均1回以上、実施拡大:これに加え前3ヶ月比25%以上増加)を満たすことで、制度導入助成の申請が可能となります。
目標達成助成の要件(離職率・賃金)
制度導入助成を受けた後、さらに目標達成助成を受けるには、以下の2つの離職率要件をクリアする必要があります。
- 離職率低下要件:制度導入後の離職率が、制度導入前の離職率以下であること
- 離職率上限要件:評価時の離職率が30%以下であること
さらに、対象労働者の毎月決まって支払われる賃金を5%以上増加させた場合は、目標達成助成が10万円から15万円に引き上げられます。
賃金引上げの判定時期は「評価期間が始まってから1年以内」とされており、テレワーク制度の定着とあわせて賃上げも計画できると、助成額が最大化できます。
申請の流れ
- 対象要件の確認:自社が中小企業事業主に該当するか、支給要件を満たすかを確認する
- テレワーク実施計画の策定:評価期間前3ヶ月間に実施する取組内容(職場風土作り+選択取組)を計画する
- 取組の実施:計画に沿って「職場風土作りの取組」と「選択取組」を実施し、テレワーク実績を積む
- 制度導入助成の申請:実績要件を満たしたら、都道府県労働局に制度導入助成の支給申請を行う(20万円)
- 評価期間中の継続実施:テレワーク制度の利用を継続し、離職率・賃金の状況を管理する
- 目標達成助成の申請:評価期間終了後に、離職率・賃金要件の充足状況を確認して追加申請(10〜15万円)
注意:令和7年度からテレワーク実施計画の事前認定が不要となり、申請手続きが大幅に簡素化されました。ただし、申請時期・書類の提出順序を誤ると受給できなくなる場合があるため、事前に都道府県労働局に確認することを強くおすすめします。兵庫県の場合は兵庫労働局(神戸市)が申請窓口です。
まとめ
人材確保等支援助成金(テレワークコース)のポイントをまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 中小企業事業主(新規導入事業主・実施拡大事業主) |
| 最大支給額 | 35万円(制度導入助成20万円+目標達成助成15万円) |
| 必須取組 | 職場風土作りの取組+選択取組1つ以上 |
| テレワーク実績要件 | 全対象者が1回以上実施(実施拡大は前比25%増も必要) |
| 目標達成条件 | 離職率が制度導入前以下かつ30%以下(賃金5%引上げで加算あり) |
| 申請窓口 | 都道府県労働局(兵庫県→兵庫労働局) |
テレワークは単なる「働き方」の選択肢ではなく、優秀な人材の確保・離職防止・生産性向上に直結する経営戦略です。令和8年度からは既導入企業も「実施拡大事業主」として申請できるようになり、テレワークを積極的に活用したい企業にとって、より使いやすい制度になっています。
「自社がテレワークコースに該当するか確認したい」「申請書類の準備をサポートしてほしい」という場合は、西宮市の社会保険労務士事務所・SR労務経営たけだ事務所にお気軽にご相談ください。助成金の受給可能性の確認から申請書類の作成・提出サポートまで、丁寧にご支援いたします。
厚生労働省:人材確保等支援助成金(テレワークコース)公式ページ
※本記事の情報は令和8年9月時点のものです。助成金の内容は変更されることがありますので、最新情報は厚生労働省または最寄りの都道府県労働局にてご確認ください。

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