「能登半島地震の影響でお客さんが激減し、従業員を雇い続けるのが苦しくなってきた」「解雇はしたくないが、仕事がなくて困っている」——被災地域の事業主の方からはこのような声が届きます。
そうした状況の中で活用できるのが、産業雇用安定助成金(災害特例人材確保支援コース)です。令和6年能登半島地震の影響で事業活動を一時的に縮小せざるを得なかった事業主が、従業員を他社に一時的に預ける「在籍型出向」の方式で雇用を維持した場合に、出向元・出向先の双方に対して出向中の賃金の一部を助成してもらえる制度です。
この記事では、助成金の概要・対象者・助成額・申請の流れを、社会保険労務士の視点でわかりやすく解説します。
産業雇用安定助成金(災害特例人材確保支援コース)とは?
産業雇用安定助成金の「災害特例人材確保支援コース」は、令和6年能登半島地震によって事業活動の縮小を余儀なくされた石川県の指定地域の事業主が対象です。
通常の産業雇用安定助成金は、景気変動などで事業縮小した際に従業員を他社に出向させることで雇用を守る制度ですが、この災害特例コースは、能登半島地震という特定の自然災害による影響を受けた事業主専用のコースとして設けられています。
「在籍型出向」とは、元の会社(出向元)に籍を置いたまま、一定期間だけ別の会社(出向先)で働く仕組みです。出向元の事業主は従業員の雇用を守れる一方、出向先の事業主は人手を確保できるというメリットがあります。この制度では、出向元・出向先の両社に対して国が賃金の一部を助成することで、双方が使いやすい仕組みとなっています。
対象となる事業主
出向元事業主(従業員を送り出す側)
以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 石川県の指定地域に雇用保険適用事業所があること
- 令和6年能登半島地震の影響で事業活動が一時的に縮小していること
- 出向により、対象となる従業員の雇用を維持すること
指定地域(石川県内):七尾市、中能登町、羽咋市、志賀町、宝達志水町、輪島市、穴水町、珠洲市、能登町
出向先事業主(従業員を受け入れる側)
- 全国の雇用保険適用事業所(地域制限なし)
- 出向元と資本関係のない独立した事業者であること(親会社・子会社間の出向は対象外)
出向先は全国どこでも可能なため、兵庫県内(西宮市を含む)の事業主が能登の従業員を受け入れる場合にも対象となります。人手不足に悩む企業にとっても、優秀な人材を確保できるチャンスになり得ます。
対象となる労働者
出向の対象となる労働者には、以下の要件があります。
- 出向元で雇用される雇用保険被保険者であること
- 出向開始前に6ヶ月以上継続雇用されていること
- 解雇予告や退職勧奨を受けていないこと
- 日雇労働被保険者でないこと
対象外となるケース:役員・監査役、同居の親族のみを雇用する個人事業主の家族、派遣中の労働者など
助成額・助成率
助成金は、出向元と出向先の双方に支給されます。支給額は出向中に支払った賃金等に基づいて計算されます。
| 区分 | 助成率 | 1日あたりの上限額 |
|---|---|---|
| 中小企業 | 4/5(80%) | 9,110円 |
| 中小企業以外(大企業) | 2/3(約67%) | 9,110円 |
※出向元・出向先の助成を合算した合計での助成率・上限額です。
※助成期間は最長2年間です。
たとえば日給8,000円の従業員を中小企業が出向させた場合、1日あたり最大6,400円(8,000円×4/5)が助成されます。上限の9,110円/日は、日給換算でおよそ11,387円以上の賃金が支払われる場合に上限が適用されます。
出向に関する主な要件
助成対象となる出向には、以下の要件があります。
- 出向開始期間:令和6年12月17日〜令和8年12月31日の間に開始した出向であること
- 出向期間:1ヶ月以上2年以内であること
- 出向終了後は元の事業所(出向元)への復帰が前提であること
- 出向元と出向先の間に親会社・子会社・兄弟会社などの資本関係がないこと
- 出向中は出向先での業務に従事し、一定の指揮命令下に置かれること
令和7年10月1日からは申請手続きが簡素化され、支給申請書の自動入力様式が用意されています。都道府県労働局またはハローワークの窓口でご確認ください。
申請の流れ
- 対象要件の確認:自社(出向元)が指定地域にあるか、出向先との資本関係はないかなどを確認する
- 出向計画書の作成・提出:出向を開始する前に、出向計画書をハローワークまたは都道府県労働局に提出する
- 出向の実施:計画が認定されたら、出向を開始する
- 支給申請:出向期間終了後に支給申請書類をまとめて提出し、審査を受ける
- 助成金の受給:審査通過後に助成金が振り込まれる
重要:助成金は出向計画書の提出・認定を受ける前に出向を開始した場合は対象外になります。「先に出向を始めてから申請しよう」という順番は絶対にNGです。必ず事前に計画書の認定手続きを済ませてから出向を開始してください。
まとめ
産業雇用安定助成金(災害特例人材確保支援コース)のポイントをまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 能登半島地震の影響を受けた石川県指定地域の事業主(出向元)と全国の出向先 |
| 助成率 | 中小企業4/5・大企業2/3(上限9,110円/日) |
| 出向期間 | 1ヶ月以上2年以内(令和8年12月31日開始分まで) |
| 申請先 | 都道府県労働局・ハローワーク |
| 注意点 | 出向前に計画書の提出・認定が必要 |
この助成金は、被災地域の事業主にとっては従業員の雇用を守りながら事業回復を待てる貴重な支援策です。また、人手不足に悩む全国の事業主にとっても、経験豊富な即戦力人材を確保できるチャンスになります。
「自社が対象になるか確認したい」「申請書類の準備をサポートしてほしい」という方は、西宮市の社会保険労務士事務所・SR労務経営たけだ事務所にお気軽にご相談ください。助成金の受給可能性チェックから申請書類の作成・提出サポートまで、丁寧にご支援いたします。
厚生労働省:産業雇用安定助成金(災害特例人材確保支援コース)公式ページ
※本記事の情報は令和8年9月時点のものです。助成金の内容は変更されることがありますので、最新情報は厚生労働省または最寄りのハローワークにてご確認ください。

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