2026年8月、厚生労働省がカスタマーハラスメント(カスハラ)に関する重要な法解釈を通知しました。薬局の薬剤師に関するものですが、その内容はすべての業種の事業主にとって大きなヒントになります。
今回は、この通知の内容と、企業が取り組むべきカスハラ対策について、西宮市の社会保険労務士がわかりやすく解説します。
今回の厚生労働省通知の内容
厚生労働省は、薬剤師法が定める「調剤応需義務(薬剤師は処方箋があれば調剤しなければならない義務)」について、次のような法解釈を通知しました。
- カスタマーハラスメントにより患者との信頼関係が破壊された場合は、調剤を拒否できる
- 未払いが続き、再び未払いが生じる可能性が高い「悪意ある未払い」も拒否できる正当な理由に当たる
この背景には、日本薬剤師会の調査(令和7年)があります。薬局スタッフの約半数がカスハラ対応に30分以上を費やしているという現実があり、調剤拒否できる場面の明確化を求める声が高まっていました。
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは?
カスハラとは、顧客・取引先・患者などが行う著しい迷惑行為のことです。具体的には以下のような行為が該当します。
| カスハラの例 | 内容 |
|---|---|
| 不当な要求 | 過剰なクレーム、過剰な謝罪の要求、金品の要求 |
| 暴言・脅迫 | 大声での怒鳴り、侮辱的な言葉、脅迫的な発言 |
| 長時間の拘束 | 長時間にわたるクレーム対応の強要 |
| SNS・ネット投稿 | 事実と異なる悪評の拡散、炎上目的の投稿 |
| ハラスメント的行為 | セクシャルな言動、土下座の強要など |
なぜ今、カスハラ対策が重要なのか
2024年には改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の施行により、職場のハラスメント対策が義務化されました。そして今後は、カスハラについても事業主に対策義務が課される方向で法整備の議論が進んでいます。
すでに東京都では2024年4月から「カスタマーハラスメント防止条例」が施行されており、全国的な流れとなっています。
厚労省が今回薬局向けに示した「信頼関係が破壊されたら拒否できる」という考え方は、他の業種においても同様の考え方が認められていく布石と見ることができます。
事業主がすべきカスハラ対策
従業員をカスハラから守るために、事業主が取り組むべき対策をご紹介します。
① カスハラ対応方針の明文化
「当社はカスハラを容認しない」という姿勢を社内外に明示しましょう。就業規則や顧客向けの掲示物で明確にすることが重要です。
② 相談窓口の設置
従業員がカスハラ被害を報告できる相談窓口を設けましょう。相談しやすい環境を作ることで、被害の早期発見・早期対応が可能になります。
③ 対応マニュアルの整備
カスハラが発生した場合の対応手順を定めたマニュアルを作成しましょう。「誰が対応するか」「どこまで対応するか」「警察・弁護士はいつ呼ぶか」を明確にしておくことが大切です。
④ 従業員への研修
カスハラとは何か、どのように対応するかを従業員に研修しましょう。「カスハラは我慢すべきもの」という意識を変えることが第一歩です。
⑤ 組織的な対応体制
個人でカスハラに対応させるのではなく、組織として対応できる体制を整えましょう。上司や管理職が積極的に介入できるようにすることが重要です。
就業規則への記載も重要
カスハラ対策を実効あるものにするためには、就業規則に明記することも有効です。たとえば、次のような内容を盛り込むことが考えられます。
- 会社はカスタマーハラスメントから従業員を守る義務を負う
- カスタマーハラスメントと認められる場合、会社は業務提供を拒否することができる
- 従業員がカスハラ被害を受けた場合は速やかに報告し、会社は適切に対処する
まとめ
今回の厚生労働省の通知は、カスハラからスタッフを守ることが法的にも認められることを改めて示したものです。従業員を守ることは、離職防止・採用力強化・生産性向上にもつながります。
カスハラ対策は「お客様は神様」という昭和の価値観を見直し、従業員が安心して働ける職場環境を作るための重要な取り組みです。
就業規則の整備やカスハラ対応マニュアルの作成など、お困りのことがあればぜひ西宮の社会保険労務士事務所・SR社労士事務所にご相談ください。
情報元:全国社会保険労務士会連合会 NEWS HEADLINE(2026年8月4日)「カスハラ 信頼破壊は調剤拒否可能――厚労省」(労働新聞社提供)

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