「ストレスチェックは大企業の話だと思っていた」――そう考えている中小企業の事業主の方は多いのではないでしょうか。しかし、2025年5月に改正労働安全衛生法が公布され、従業員50人未満の事業場にも、ストレスチェックの実施が義務化されることが決定しました。施行日は「2028年4月1日」が有力です。
準備期間は今から約2年。「まだ先の話」と感じるかもしれませんが、産業医の確保や実施体制の整備には時間がかかります。この記事では、ストレスチェック制度の基本から今回の法改正の内容、中小企業が今から取り組むべき準備までを、社労士がわかりやすく解説します。
ストレスチェックとは何か?
ストレスチェックとは、労働者のストレスの程度を把握するための検査です。「仕事の量・質」「職場の人間関係」「心身の健康状態」などに関する質問(57問または23問)に答えることで、自分のストレス状態を知ることができます。
目的は大きく2つあります。
- 一次予防:労働者が自分のストレス状態を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐ
- 職場環境の改善:集団分析を行い、職場全体のストレス要因を把握して職場環境を改善する
なお、ストレスチェックの結果は事業者には直接通知されません。あくまで労働者本人への通知であり、高ストレスと判定された労働者が「申し出た場合」にのみ、医師による面接指導を実施する義務が生じます。
これまでの制度:50人未満は「努力義務」だった
ストレスチェックは、2015年(平成27年)12月から義務化されています。ただし、これまでは従業員50人以上の事業場に限られており、50人未満の事業場は「実施するよう努めなければならない」という「努力義務」にとどまっていました。
つまり、日本の企業の約8割を占める従業員50人未満の中小企業は、これまでストレスチェックを義務として実施する必要がありませんでした。しかし、中小企業こそメンタルヘルス対策が不十分なケースが多く、問題が深刻化してから発覚するケースも少なくありません。今回の法改正はこうした課題に対応するものです。
今回の改正内容:50人未満も義務化へ
2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、従業員50人未満の事業場においても、ストレスチェックの実施が義務化されることが決定しました。
施行日は「公布後3年以内に政令で定める日」とされており、2026年5月18日の労働政策審議会・安全衛生分科会において「2028年4月1日」が示されました。最初のストレスチェック完了期限は2029年3月31日となる見込みです。
| 項目 | 改正前(現行) | 改正後(2028年4月以降) |
|---|---|---|
| 義務対象 | 従業員50人以上の事業場 | 全事業場(50人未満も含む) |
| 法的性格 | 50人未満は努力義務 | 50人未満も義務化 |
| 実施頻度 | 年1回以上 | 年1回以上(変更なし) |
| 実施者 | 医師・保健師等 | 医師・保健師等(変更なし) |
義務化の対象となる事業場とは?
「従業員50人未満」の数え方について、注意点があります。ここでいう「従業員数」は「会社全体の従業員数」ではなく、「各事業場(支店・工場・店舗等)に常時使用する労働者数」で判断します。パートタイム労働者・アルバイトも、常時使用していれば含まれます。
例えば、会社全体の従業員が100人でも、各店舗が10人以下の場合、これまでは各店舗単位では「努力義務」でした。改正後は、こうした小規模事業場もすべて義務化の対象となります。
小規模事業場向けマニュアルが公表されています
厚生労働省は2026年2月25日に「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表しました。このマニュアルは、50人未満の事業場が現実的に実施できるよう、プライバシーの保護や効率的な実施体制について詳しく解説されています。特に「誰がやるのか」「費用はいくらかかるのか」「プライバシーは守られるのか」といった中小企業の疑問に対応した内容となっています。
中小企業が今から取り組むべき5つの準備
2028年4月の施行まで約2年ありますが、早めに準備を始めることで余裕を持った対応が可能です。以下の5つのポイントを確認してください。
① 産業医・実施者の確保を検討する
ストレスチェックの実施者は、医師(産業医)・保健師・一定の研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師に限られます。小規模事業場では産業医の選任義務がない場合でも、ストレスチェックの実施のために医師等との契約が必要になります。地域産業保健センター(地さんぽ)を活用すれば、無料または低コストで産業医による面接指導を受けることができます。
② 外部機関への委託を検討する
大企業のように社内に実施体制を整えることが難しい中小企業では、ストレスチェックの外部委託が現実的な選択肢です。多くのストレスチェック実施機関がサービスを提供しており、数百円〜数千円程度の費用で実施できます。費用は事業主が負担するのが原則です。
③ 助成金の活用を検討する
独立行政法人 労働者健康安全機構(JOHAS)では、「小規模事業場産業医活動助成金」を実施しています。50人未満の事業場が産業医と契約して健康管理活動(ストレスチェックを含む)を行った場合、費用の一部が助成されます。ストレスチェックの準備段階から積極的に活用しましょう。
④ メンタルヘルス方針の策定・周知
ストレスチェックを義務として実施するだけでなく、職場のメンタルヘルス対策の方針(セルフケア推進・相談窓口設置等)を整備しておくことが大切です。ストレスチェック結果を職場環境改善につなげる仕組みを事前に検討してください。
⑤ 就業規則への規定も検討する
ストレスチェックの実施に関して、就業規則に規定しておくと従業員への周知がスムーズになります。また、高ストレス者が医師面接指導を申し出た際の取り扱いや、不利益取り扱いの禁止についても規定することが望ましいです。
ストレスチェック結果を理由とした不利益取り扱いは禁止
法律上、事業者はストレスチェックの結果を理由に、労働者を解雇・降格・減給等の不利益取り扱いをすることは禁止されています。また、労働者が検査を受けることを強制することも禁止されています。ストレスチェックはあくまで労働者の「気づき」を促し、職場環境を改善するための制度です。
まとめ:今がまさに準備の開始タイミング
ストレスチェックの50人未満への義務拡大は、日本の職場のメンタルヘルス対策を大きく前進させる改正です。2028年4月の施行に向けて、今から少しずつ準備を進めることが重要です。
- ✅ 自社の各事業場の従業員数を確認する
- ✅ 地域産業保健センターに相談する
- ✅ 外部委託機関の選定を検討する
- ✅ 小規模事業場向けマニュアルを読む(厚生労働省HP)
- ✅ 小規模事業場産業医活動助成金を確認する
「何から始めればいいかわからない」という事業主の方は、ぜひ社会保険労務士にご相談ください。西宮市の社会保険労務士事務所・SR武田では、ストレスチェック義務化への対応支援や就業規則の整備をトータルでサポートいたします。お気軽にお問い合わせください。

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