「社員が自分で勉強したいと言っているのに、業務の都合でなかなか休ませてあげられない」「有給教育訓練休暇の制度を作りたいが、コストが心配で踏み出せない」——そんなお悩みを抱える経営者の方はいませんか?
厚生労働省の人材開発支援助成金「教育訓練休暇等付与コース」は、社員が自発的に訓練を受けるための有給休暇制度を新たに導入した事業主に最大36万円を助成する制度です。
さらに令和8年4月の制度改正で、従来は「制度導入から3年後でないと申請できない」という大きなハードルがありましたが、6か月経過後から申請可能に短縮されました。中小企業が挑戦しやすい制度へと大きく生まれ変わっています。
本記事では、教育訓練休暇等付与コースの概要・令和8年度の改正ポイント・対象要件・助成額・申請の流れを西宮の社労士がわかりやすく解説します。
・教育訓練休暇等付与コースの仕組みと目的
・令和8年度の大改正(3年待ち→6か月に短縮)の詳細
・対象事業主・対象労働者の要件
・有給教育訓練休暇制度の導入要件
・助成額(30万円・36万円の違い)
・計画届から支給申請までの流れ
教育訓練休暇等付与コースとは?
教育訓練休暇等付与コースは、労働者が自ら受けたい訓練・学習のために有給で休める制度(有給教育訓練休暇等制度)を新たに就業規則等に規定し、実際に労働者が取得・活用した場合に、事業主に助成金を支給する制度です。
社員の「キャリアアップしたい」「新しいスキルを身につけたい」という自発的な学習意欲を、会社の制度として支援する仕組みを整備する企業を国が後押しするものです。
他の人材開発支援助成金コースとの違い
同じ人材開発支援助成金の中でも、このコースの大きな特徴は「会社が命じる研修(OJT・OFF-JT)」ではなく、「社員が自発的に選ぶ学び」を対象とする点にあります。
| コース | 訓練の主体 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 人材育成支援コース | 事業主が実施するOFF-JT・OJT | 業務命令による訓練費用 |
| 人への投資促進コース | デジタル・グリーン分野などの高度訓練 | 特定技術習得のための長期訓練 |
| 教育訓練休暇等付与コース | 労働者が自発的に選ぶ訓練 | 有給の学び休暇制度の新規導入 |
令和8年度の大改正ポイント
令和8年4月8日の制度改正により、教育訓練休暇等付与コースには大きな変更が加えられました。
【改正前】有給教育訓練休暇制度の導入日から 3年間経過後 でないと支給申請できなかった
【改正後】制度導入日から 6か月経過後 に支給申請が可能になった
これまでこのコースは「3年間制度を維持してはじめて申請できる」という長い待機期間があったため、中小企業にとって取り組みにくい面がありました。改正後はわずか半年で申請できるため、大幅に活用しやすくなっています。
その他の令和8年度改正点
- 年度ごとの被保険者付与要件の廃止:従来は年度ごとに一定人数以上の被保険者が取得していることを確認する必要がありましたが、この要件が廃止されました
- 不正受給の公表強化:支給決定前であっても、自主申告のない不正が判明した場合は原則として氏名等を公表する旨が明確化されました
対象事業主の要件
教育訓練休暇等付与コースを受給するためには、以下の要件を満たす事業主(法人・個人事業主)であることが必要です。
- 雇用保険の適用事業所の事業主であること
- 有給教育訓練休暇等制度を就業規則または労働協約に新たに規定すること(既存の年次有給休暇とは別に設けること)
- 複数の事業所を持つ場合は、すべての事業所に制度を導入すること
- 制度の導入前に所轄の都道府県労働局へ訓練計画届を提出していること
企業規模(中小企業・大企業)を問わず、どの事業主でも対象となります。
対象労働者の要件
休暇を取得して訓練を受けるのは雇用保険の被保険者(雇用保険に加入している労働者)であることが必要です。
また、受ける訓練については以下の条件があります。
- 労働者が自発的に受けるものであること(会社の業務命令による訓練は対象外)
- 事業主以外の者が実施するものであること(自社主催の研修は対象外)
- 年次有給休暇を使って受ける訓練は対象外(有給教育訓練休暇制度として別に付与する必要あり)
つまり、「会社が決めた研修に参加させる」のではなく、「社員が自分で選んだ外部の講座・資格取得・スクールなどに通うための休暇を有給で与える」仕組みの構築が求められます。
有給教育訓練休暇等制度の導入要件
助成を受けるために新たに導入する「有給教育訓練休暇等制度」は、以下の内容を就業規則または労働協約に定める必要があります。
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| 休暇の付与日数 | 3年間に5日以上の有給休暇 |
| 取得単位 | 1日単位で取得できること |
| 既存休暇との関係 | 年次有給休暇等とは別に付与すること |
| 賃金の取り扱い | 有給(休暇取得中も賃金を支払う)であること |
| 最低適用人数 | 100人以上の企業:5人以上 / 100人未満の企業:1人以上 |
「有給」であることが必須要件のため、無給の学習休暇では助成対象になりません。また既存の年次有給休暇に上乗せする形で、教育訓練専用の休暇を別枠で設ける必要があります。
助成額
教育訓練休暇等付与コースの助成は定額制で、1事業主あたり1回限りの支給です。
| 区分 | 助成額 | 主な条件 |
|---|---|---|
| 基本助成 | 30万円 | 有給教育訓練休暇制度の導入・実施 |
| 賃金要件加算 | 36万円 | 下記のいずれかを満たす場合 |
36万円(加算)の条件:
- 賃金要件:支給申請日の前日から1年以内に、対象労働者の賃金を5%以上増加させた場合
- 資格等手当要件:訓練で取得した資格等に対する手当を規定し、かつ3%以上の賃金増加を実施した場合
中小企業・大企業による助成額の差はありません。ただし、賃金を5%以上引き上げると6万円上乗せになるため、賃上げを検討している企業には特にお得な制度です。
申請の流れ
教育訓練休暇等付与コースの申請は、以下のステップで進めます。
| ステップ | 内容 | タイミング |
|---|---|---|
| ① | 訓練計画届の提出(都道府県労働局) | 有給教育訓練休暇制度の施行日の6か月前〜1か月前 |
| ② | 就業規則への規定と届出(労働基準監督署) | 制度施行日までに届出(常時10人以上の場合) |
| ③ | 制度の施行・社員への周知 | 計画届に記載した施行日に制度を開始 |
| ④ | 対象労働者が休暇を取得・訓練受講 | 制度施行後、社員が自発的に訓練を受けて休暇取得 |
| ⑤ | 支給申請書の提出(都道府県労働局) | 制度導入日から6か月経過後(令和8年改正後) |
・計画届を提出しないと助成対象外になります。制度施行の1か月以上前に必ず提出してください。
・申請先は都道府県労働局です(ハローワークではありません)。兵庫県内の企業は兵庫労働局へ提出します。
・1事業主につき1回限りの助成です。
教育訓練休暇等付与コースの活用が向いている企業とは?
このコースは、以下のような企業・状況に特に適しています。
- 社員の自発的なスキルアップ・資格取得を会社として支援したいと考えている
- 人材育成への投資として制度を整備したいが、具体的な制度設計の方法が分からない
- 賃上げと人材育成を同時に実現したい(加算条件を狙える)
- 採用力強化のために「社員が学べる会社」としてのイメージを確立したい
- IT・DX・グリーン等の分野で社員が自発的に学ぶ環境を整えたい
有給教育訓練休暇制度の整備は、直接的な助成金効果に加え、採用・定着・モチベーション向上といった副次的な効果も期待できます。
よくある質問
Q1. 既存の研修制度(業務命令の研修)がある場合でも申請できますか?
はい、できます。ただし教育訓練休暇等付与コースの対象となる「有給教育訓練休暇制度」は、業務命令の研修とは別に、労働者が自発的に選んだ訓練のための休暇として独立して設ける必要があります。
Q2. 社員が取得する訓練の内容に制限はありますか?
「事業主以外の者が実施するもの」であれば、業種・職種・資格取得に限らず幅広い訓練が対象となります。ただし、業務命令で受けさせる訓練や自社主催の研修は対象外です。
Q3. パート・アルバイトも対象になりますか?
雇用保険の被保険者であれば、パートタイム労働者も対象となります。週20時間以上勤務などの雇用保険加入要件を満たしているかどうかを確認してください。
Q4. 100人未満の企業で何人が取得すれば申請できますか?
100人未満の企業では1人以上の被保険者が休暇を取得して訓練を受ければ申請要件を満たします。小規模企業でも活用しやすい設計になっています。
まとめ
人材開発支援助成金「教育訓練休暇等付与コース」は、社員が自分で学ぶための有給休暇制度を新たに整備した事業主に最大36万円を助成する制度です。
令和8年度の改正で申請時期が制度導入から「3年後→6か月後」に大幅短縮されたことにより、中小企業でも取り組みやすい制度となりました。
有給教育訓練休暇制度の整備は、社員のキャリア形成を支援するだけでなく、企業の人材定着・採用力強化にも直結する取り組みです。制度設計や計画届の作成にお悩みの方は、ぜひ社会保険労務士にご相談ください。
社会保険労務士事務所SR武田では、人材開発支援助成金をはじめとする各種助成金の申請サポートを行っています。
「制度を導入したいが、どこから始めればよいかわからない」「計画届の書き方を教えてほしい」など、お気軽にご相談ください。
※本記事は令和8年10月時点の情報に基づいています。制度の詳細や最新情報は、厚生労働省または所轄の都道府県労働局にてご確認ください。

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