「今年の最低賃金はいつから上がるの?」「うちの地域は他と発効日が違うみたいだけど、なぜ?」——最低賃金の改定時期に、こんな疑問を持ったことはありませんか?
2025年(令和7年)の最低賃金改定では、全国的に大幅な引き上げが行われた一方で、発効日(いつから新しい最低賃金が適用されるか)が例年より遅れた地域が目立ちました。
この問題を受けて、中央最低賃金審議会(中賃審)が新たな「考え方」をまとめました。今後は発効日を後ろ倒しにする場合は理由を明示することが求められます。
この記事では、西宮市の社会保険労務士が、地域別最低賃金の仕組みと今回の新たなルールをわかりやすく解説します。
- 地域別最低賃金の発効日(適用開始日)が毎年10月前後に設定されている
- 令和7年度は大幅引き上げの一方、発効日を遅らせる地域が増加した
- 中央最低賃金審議会が「発効日を交渉材料にすべきでない」と指摘
- 今後、発効日を後ろ倒しにする場合は判断理由の明示が必要に
- 事業主は最低賃金の発効日を毎年確認する必要がある
地域別最低賃金とは?
最低賃金制度とは、国が定めた「最低限支払わなければならない賃金の下限額」のことで、すべての労働者に適用されます。パートタイム・アルバイト・正社員など雇用形態に関わらず、この金額を下回る賃金で働かせることは法律違反となります。
最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の2種類があります。
- 地域別最低賃金:都道府県ごとに設定される最低賃金(全国共通ではなく、47都道府県それぞれに金額が異なる)
- 特定最低賃金:特定の産業・職種について設定される最低賃金(地域別最低賃金より高い水準)
両方が適用される場合は、高い方の金額が適用されます。
「発効日」とは何か?
発効日(はっこうび)とは、新しく改定された最低賃金が実際に適用される日(施行日)のことです。最低賃金は毎年見直しが行われ、例年10月1日前後に新しい金額が発効します。
ただし、発効日は全都道府県で一律ではありません。各都道府県の地方最低賃金審議会での議論の結果、都道府県ごとに異なる日付が設定されます。
- 東京都:10月1日
- 大阪府:10月1日
- 一部の地方県:10月8日~10月下旬
※発効日は毎年変わります。実際の発効日は都道府県労働局のウェブサイトで確認してください。
令和7年度の問題:発効日が「後ろ倒し」になった地域が急増
令和7年度(2025年)の最低賃金改定では、全国加重平均で50円程度の大幅な引き上げが実現しました。一方で、従来は10月1日前後が多かった発効日が、例年よりも後ろ倒しになる地域が目立ったのです。
発効日が後ろ倒しになるということは、新しい最低賃金が実際に適用されるのが遅れることを意味します。つまり、
- 労働者にとって:賃上げの恩恵を受けられる時期が遅れる
- 事業主にとって:賃上げのための準備・資金調達の期間が変わる
中央最低賃金審議会は、この問題について調査・検討を行い、今回「発効日に関する考え方」をまとめました。
中央最低賃金審議会とは?
中央最低賃金審議会(中賃審)は、最低賃金の決定に関する重要事項を調査・審議するために厚生労働大臣の諮問機関として設置された機関です。
毎年7月頃に、全国の最低賃金引き上げ額の目安(公・労・使の3者の代表が参加)を示す重要な役割を担っています。
今回の新たな「考え方」:発効日を後ろ倒しにするなら理由を明示せよ
中央最低賃金審議会がまとめた「考え方」の主なポイントは以下のとおりです。
① 発効日を「交渉材料」にしてはいけない
今回の審議会は、「発効日について、大幅な引上げ額を確保するための過度な交渉材料とするべきではない」と明確に指摘しました。
つまり、「賃上げ幅を確保するために発効日を遅らせる取引」は適切ではないという考え方が示されたのです。
② 発効日の判断は影響をよく議論してから
地方最低賃金審議会(各都道府県の審議会)における公益代表・労働者代表・使用者代表(公労使の3者)の委員間で、以下の点について十分に議論して判断するよう求めました。
- 労働者の生活に与える影響
- 企業経営に与える影響
- 地域固有の事情
③ 後ろ倒しにする際は「理由をできるだけ明らかに」する
最も大きなポイントが、この3つ目です。
今後は、発効日を後ろ倒しにする場合、その判断理由をできるだけ明らかにすることとされました。つまり、「なぜ発効日が遅れるのか」を公にする必要が生じます。
- 発効日を大幅な賃上げの「交渉材料」にすることは不適切
- 地方審議会は発効日の設定にあたり、労使双方への影響・地域事情を十分に議論すること
- 発効日を後ろ倒しにする場合は判断理由を公表(明示)すること
事業主への影響・注意点
最低賃金の発効日は毎年確認が必要
今回の新ルールにより、今後は発効日が後ろ倒しになる場合にはその理由が公開されるようになります。ただし、発効日が「必ず10月1日になる」というわけではありません。
事業主は、毎年、自社の所在地の最低賃金と発効日を必ず確認する必要があります。
発効日以降の賃金支払いに注意
発効日を過ぎると、新しい最低賃金が適用されます。発効日前に締結した雇用契約であっても、発効日以降は新しい最低賃金を下回る賃金を支払うことはできません。
最低賃金を下回る賃金を支払った場合、50万円以下の罰金(最低賃金法第40条)が科される可能性があります。パートタイムやアルバイトを多く雇用している事業主は特に注意が必要です。
賃金台帳・給与規程の見直しタイミング
最低賃金改定の際には、以下の点を確認・見直す必要があります。
- 給与規程・雇用契約書:最低賃金以上の賃金が保障されているか確認
- 時間給・日給換算:月給制の場合も時間換算して最低賃金を上回っているか確認
- 各種手当の扱い:最低賃金の計算から除外される手当(通勤手当、精皆勤手当、家族手当など)の取り扱いを正確に把握する
最低賃金の確認方法
地域別最低賃金の最新情報は、以下の機関で確認できます。
- 厚生労働省ウェブサイト:地域別最低賃金の全国一覧が掲載されています
- 都道府県労働局・労働基準監督署:各都道府県の最低賃金と発効日を確認できます
- 厚生労働省の「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」:月給・日給から時間換算する計算方法も解説されています
兵庫県の地域別最低賃金は、令和6年(2024年)10月1日より時間額1,001円に改定されています。令和7年度(2025年)の改定情報は、兵庫労働局の公式ウェブサイトをご確認ください。
まとめ
中央最低賃金審議会が「発効日に関する考え方」をまとめたことで、今後は各地域が最低賃金の発効日を後ろ倒しにする場合にはその理由を公表することが求められます。
事業主の皆様へのお願いは一点:毎年、自社の都道府県の最低賃金とその発効日を早めに確認し、給与計算や人件費計画に反映させてください。
最低賃金のチェックや給与規程の見直し、賃金計算に不安がある場合は、社会保険労務士にご相談ください。
西宮市の社会保険労務士事務所 SR竹田では、最低賃金対応・給与規程の整備・就業規則の作成など、労務管理全般のご相談をお受けしています。お気軽にお問い合わせください。

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