「社員のスキルアップをさせたいが、自社だけでは限界がある」「他社での実務経験を積ませて、復帰後に賃金を上げてあげたい」――そんな経営者・人事担当者の方に知っていただきたいのが、産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)です。
この助成金は、在籍型出向を通じて社員のスキルアップを図り、復帰後に賃金を引き上げた事業主を国が支援するものです。2026年4月8日からは出向先企業も助成対象に加わり、より使いやすくなりました。
今回は、西宮市の社会保険労務士事務所「たけだリフテック社労士事務所」が、この助成金をわかりやすく解説します。
産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)とは?
産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)とは、「在籍型出向」によって労働者のスキルアップを行い、出向から復帰した後に賃金が5%以上向上した場合に、出向中の賃金の一部を国が助成する制度です。
厚生労働省が設けているこの助成金は、企業が社員を他社に送り出すことで専門的なスキルや知識を習得させ、自社に戻ってきたときに戦力として活躍してもらうことを後押しします。
在籍型出向とは?
「在籍型出向」とは、元の会社(出向元)との雇用契約を維持したまま、別の会社(出向先)で業務を行う雇用形態です。一般的な「転籍」(雇用契約を完全に移す)とは異なり、出向元との雇用関係は続いています。
| 比較項目 | 在籍型出向 | 転籍 |
|---|---|---|
| 出向元との雇用契約 | 継続 | 消滅 |
| 出向先との雇用契約 | 新たに締結 | 新たに締結 |
| 元の会社への復帰 | あり(前提) | なし(原則) |
| 本助成金の対象 | ○ 対象 | × 対象外 |
どんな企業・労働者が対象になるの?
出向元企業の要件
- 労働者のスキルアップにより、企業活動の促進・雇用機会の増大を目指している事業主
- 対象労働者が出向復帰後、6ヶ月以上継続して雇用すること
- 職業能力開発推進法第12条に規定する「職業能力開発推進者」を選任していること
- 出向期間が1ヶ月以上2年以内であること
出向先企業の要件(2026年4月8日以降の計画届から対象)
2026年4月8日以降に計画届を提出した場合は、出向先企業も助成対象となりました。ただし以下は対象外です:
- 企業グループ内の出向
- 経営が不安定な企業
- 雇用調整助成金など他の助成金を受給中の企業
- 一定期間内に事業主都合の解雇を行った企業
対象となる労働者
- 出向元と雇用関係を維持したまま出向する労働者
- 出向復帰後、出向前の賃金より5%以上賃金が増加すること(復帰後6ヶ月間の毎月の賃金が条件)
いくら助成される?支給額・助成率の詳細
助成額は、以下のいずれか低い額に、助成率を掛けた金額です。
- ①出向中の賃金のうち出向元が負担した額
- ②出向労働者の出向前の賃金の2分の1
| 企業規模 | 助成率 | 1人1日の上限額 | 1事業所年度あたりの上限 |
|---|---|---|---|
| 中小企業 | 2/3 | 8,870円 | 1,000万円 |
| 中小企業以外 | 1/2 | 8,870円 | 1,000万円 |
具体的な計算例
たとえば、中小企業が月給30万円の従業員を6ヶ月間出向させ、そのうち出向元が月15万円負担した場合:
月15万円 ÷ 30日 × 2/3(助成率)≒ 1日あたり約3,333円 → 6ヶ月で約60万円の助成が見込めます(上限8,870円/日の範囲内)。
2026年4月改正のポイント:出向先も助成対象に!
2026年4月8日以降に計画届を提出した出向から、出向先企業も助成金の対象となりました。これにより、人材育成の場を提供する企業にもメリットが生まれ、在籍型出向を受け入れやすい環境が整いつつあります。
一方、2026年4月7日以前の計画届については、引き続き出向元事業主のみが助成対象です。
申請手続きの流れ
- 計画届の提出:出向開始前に「雇用関係助成金ポータル」から電子申請で提出
- 出向の実施:計画届が承認されたら、計画に基づいて出向を実施
- 出向復帰・賃金確認:出向終了後、復帰から6ヶ月間の賃金が5%以上増加していることを確認
- 支給申請:支給申請書を提出し、審査を経て助成金が支給される
申請窓口:都道府県労働局またはハローワーク(電子申請は「雇用関係助成金ポータル」)
よくある質問
Q. グループ会社への出向でも対象になりますか?
A. なりません。企業グループ内の出向は、この助成金の対象外です。出向元・出向先は、資本関係のない別会社である必要があります。
Q. 出向期間はどれくらい必要ですか?
A. 1ヶ月以上2年以内が要件です。短すぎる出向は対象になりませんのでご注意ください。
Q. 「職業能力開発推進者」とは何ですか?
A. 社員の職業訓練・スキルアップを推進する担当者のことです。事業主自身でもなれますが、氏名等を届け出る必要があります。要件の一つですので、申請前に確認しておきましょう。
Q. 復帰後の賃金が5%上がらなかった場合はどうなりますか?
A. 支給要件を満たさないため、助成金の受給はできません。出向復帰後の賃金設定は事前にしっかり計画しておくことが重要です。
まとめ:在籍型出向を活用してスキルアップ+賃上げを実現しよう
産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)は、自社だけでは難しい人材育成を、他社との協力で実現するための助成金です。
- ✅ 在籍型出向でスキルアップ → 出向元の負担額を助成
- ✅ 中小企業は助成率2/3(上限1,000万円)
- ✅ 復帰後に賃金5%以上アップが条件(賃上げの動機付けにも)
- ✅ 2026年4月8日以降は出向先企業も助成対象に拡大
ただし、申請前の計画届が必須であり、要件も複雑です。「自社が対象になるか判断できない」「手続きが不安」という方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
たけだリフテック社労士事務所にお任せください
西宮市のたけだリフテック社労士事務所では、各種助成金の申請サポートを行っています。産業雇用安定助成金をはじめ、御社の状況に合わせた助成金の活用をご提案します。
初回相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。

コメントを残す