「毎年冬になると従業員が離職してしまう…」「通年で安定した雇用を確保したいが、コストが心配」——北海道や東北地方などの積雪・寒冷地域でビジネスを営む経営者の方にとって、季節労働者の雇用安定は長年の課題です。
そんな事業主の方に活用していただきたいのが、「通年雇用助成金」です。この制度は、積雪または寒冷の度が高い指定地域の事業主が、冬期間に離職を余儀なくされる季節労働者を継続して雇用した場合に、賃金の最大2/3(上限71万円)が支給される国の助成金制度です。
この記事では、通年雇用助成金の概要・受給要件・支給額・申請手続きを社会保険労務士がわかりやすく解説します。
1. 通年雇用助成金とは?
通年雇用助成金は、厚生労働省が実施する雇用関係助成金の一つです。平成29年4月に「通年雇用奨励金」から名称変更されました。
制度の目的は、北海道・東北などの積雪寒冷地域において、冬期間に仕事が減少することで離職を余儀なくされる季節労働者の雇用安定を図ることです。事業主が季節労働者を冬も継続雇用するためのコストを国が補助することで、安定した雇用環境の整備を後押しします。
令和6年4月1日付けで支給要領の改正が行われており、現在も受付中の助成金です。
2. 対象となる地域(指定地域)
本助成金は、国が指定した「積雪または寒冷の度が高い地域」の事業主が対象です(一部のコースを除く)。
- 全市町村が対象:北海道、青森県、岩手県、秋田県
- 一部市町村が対象:宮城県、山形県、福島県、新潟県、富山県、石川県、福井県、長野県、岐阜県
なお、季節トライアル雇用コース((7))については、指定地域内の事業所であれば、指定業種以外の事業主でも対象となります。
3. 対象となる業種(指定業種)
コース(1)〜(6)については、指定地域内で以下の指定業種に属する事業を行う事業主が対象です。
- 林業
- 採石業および砂・砂利・玉石の採取業
- 建設業
- 水産食料品製造業
- 野菜缶詰・果実缶詰・農産保存食料品の製造業
- 一般製材業
- セメント製品製造業
- 建設用粘土製品(陶磁器製除く)の製造業
- 特定貨物自動車運送業
- 建設現場での据付作業(造作材製造業、建具製造業、鉄骨製造業 等)
- 農業(畜産農業および畜産サービス業を除く)
4. 助成の種類(7つのコース)
通年雇用助成金には、以下の7種類のコースがあります。事業所の状況に合わせて申請するコースを選択できます。
| コース | 内容 |
|---|---|
| (1) 事業所内就業 | 冬期間も継続して同一事業所で就業させた場合 |
| (2) 事業所外就業 | 他の事業所へ配置転換・派遣・在籍出向させて冬期間も継続雇用した場合 |
| (3) 休業 | 冬期間も継続雇用しつつ、期間中一時的に休業させた場合 |
| (4) 業務転換 | 季節的業務以外の業務に転換して継続雇用した場合 |
| (5) 職業訓練 | コース(1)または(2)に加え、職業訓練を実施した場合 |
| (6) 新分野進出 | 通年雇用のために新分野の事業所を新設・整備した場合 |
| (7) 季節トライアル雇用 | 季節労働者をトライアル雇用後、引き続き常用雇用として雇い入れた場合 |
5. 支給額はいくら?
■ (1)(2) 事業所内就業・事業所外就業の場合(最大3回支給)
対象者1人あたり、下記の金額が1年ごとに最大3回支給されます。
| 区分 | 支給割合 | 上限額 |
|---|---|---|
| 新規継続労働者(1回目) | 対象期間の賃金の 2/3 | 71万円 |
| 継続・再継続労働者(2・3回目) | 対象期間の賃金の 1/2 | 54万円 |
※指定地域外の事業所へ移動就労させた場合は、移動距離に応じた移動費用相当額が別途支給されます。
■ (3) 休業の場合(最大2回支給)
- 1回目:1〜4月の休業手当(最大60日分)+賃金の合計額の 1/2(上限:新規71万円、継続・再継続54万円)
- 2回目:同合計額の 1/3(上限54万円)
■ (4) 業務転換の場合
業務転換開始日から6か月間に支払った賃金の 1/3(上限71万円)
■ (5) 職業訓練(コース(1)(2)に加算)
- 季節的業務の場合:訓練費用の 1/2(上限3万円)
- 季節的業務以外の場合:訓練費用の 2/3(上限4万円)
■ (6) 新分野進出の場合(最大3回支給)
事業所の設置・整備に要した費用の 1/10(上限500万円)が1年ごとに最大3回支給されます。
■ (7) 季節トライアル雇用の場合
常用雇用移行後6か月間に支払った賃金の 1/2 からトライアル雇用助成金の支給額を差し引いた額(上限71万円)
6. 受給要件のポイント
- 雇用保険の適用事業主であること
- 指定地域内の指定業種に属する事業所の事業主であること(コース(7)を除く)
- 「通年雇用届」を所定の期間内にハローワークまたは都道府県労働局へ提出すること
- 対象となる季節労働者を継続して雇用したことが確認できること
- 雇用関係助成金に共通の要件(労働関係法令の遵守・未払い賃金なし 等)を満たすこと
7. 申請の流れ
- 通年雇用届の提出(通様式第1号・第2号):雇用開始前または雇用開始後の所定期間内に、管轄のハローワークまたは労働局へ提出します。
- 対象期間の雇用実施:冬期間も継続して雇用します。
- 支給申請書の提出(通様式第4号・第5号):対象期間終了後、所定の期限内に支給申請します。
- 審査・支給決定:労働局による審査を経て支給されます。
申請書類にはチェックリストが用意されています。書類の不備があると受理されませんので、事前に確認してから提出してください。電子申請にも対応しています。
8. まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成金名 | 通年雇用助成金 |
| 対象地域 | 北海道・東北・北陸等の積雪寒冷地域(指定地域) |
| 対象業種 | 建設業・林業・農業・水産食料品製造業 等(指定業種) |
| 主な支給額 | 賃金の2/3(1回目、上限71万円)、最大3回支給 |
| 申請窓口 | 管轄のハローワーク・都道府県労働局(電子申請可) |
通年雇用助成金は、積雪・寒冷地域の事業主が冬期間に季節労働者の雇用を維持するために活用できる、実務的・経済的なメリットの大きな制度です。最大3回の支給を受けられるため、継続的な雇用安定施策として長期的に活用できます。
「自社が対象地域・対象業種に該当するか確認したい」「申請書類の作成をサポートしてほしい」という方は、ぜひ専門家(社会保険労務士)にご相談ください。
西宮市・阪神エリアの中小企業の経営者・人事担当者の皆様、助成金の活用・労務管理に関するご相談は、たけだリフテック社労士事務所(西宮市)までお気軽にどうぞ。初回相談は無料です。

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