「最低賃金が毎年上がっていくけど、賃上げするお金がない……」
そんな中小企業の経営者の方に知ってほしいのが、業務改善助成金です。
この助成金は、事業場内の最低賃金を30円以上引き上げ、生産性向上のための設備投資を行った中小企業に対し、最大600万円を支給する制度です。
本記事では、業務改善助成金の概要・受給条件・コース区分・申請の流れを、経営者・人事担当者向けにわかりやすく解説します。
業務改善助成金とは?
業務改善助成金は、厚生労働省が実施する助成金制度です。中小企業・小規模事業者が設備投資などを通じて業務を改善し、事業場内で最も賃金の低い労働者の賃金(事業場内最低賃金)を引き上げた場合に、その費用の一部が助成されます。
毎年上昇し続ける最低賃金への対応と、生産性向上の両立を支援する制度として、多くの中小企業に活用されています。
制度のポイント
- 最低賃金を30円以上引き上げることが必要
- 機械設備の導入やPOSシステム・ICT活用など「生産性向上につながる設備投資」が対象
- 最大600万円(一定要件あり)が支給される
- 助成率は賃金水準によって異なり、最大90%が補助される
受給対象となる事業主の条件
業務改善助成金を受け取るためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 中小企業・小規模事業者であること(事業場の使用労働者数が100人以下)
- 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差が50円以内であること
- 解雇・賃金引き下げ等の不交付事由がないこと
- 賃金引上げ計画を策定し、引上げ後の賃金を実際に支払うこと
- 生産性向上につながる機器・設備等を導入して費用を支払うこと
特に「事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差が50円以内」という条件がポイントです。これは、地域の最低賃金水準に近い低賃金の方が多く働いている事業場を対象にした制度であることを示しています。
コース区分と支給上限額
業務改善助成金は、賃金の引き上げ額(30円・45円・60円・90円)と引き上げる労働者の人数によって支給上限額が変わります。
| 引き上げ額 | 1人 | 2〜3人 | 4〜6人 | 7〜10人 | 10人以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 30円 | 30万円 | 50万円 | 70万円 | 100万円 | 120万円 |
| 45円 | 45万円 | 70万円 | 100万円 | 150万円 | 180万円 |
| 60円 | 60万円 | 90万円 | 150万円 | 240万円 | 300万円 |
| 90円 | 90万円 | 150万円 | 270万円 | 450万円 | 600万円 |
※ 10人以上の場合は「生産量要件」または「物価高騰等要件」を満たす特例事業者が対象となります。
助成率について
助成率は、引き上げ前の事業場内最低賃金の水準によって異なります。
- 事業場内最低賃金が920円未満の場合:助成率 9/10(90%)
- 920円以上950円未満の場合:助成率 4/5(80%)
- 950円以上の場合:助成率 3/4(75%)
つまり、現在の賃金水準が低い事業場ほど、より高い補助率で助成されます。
助成の対象となる設備投資の例
業務改善助成金では、生産性向上に資する設備・機器の導入費用が対象になります。具体的な例を紹介します。
飲食業
- 食洗機・食器洗浄機の導入
- 自動調理機器の導入
- セルフオーダーシステム(タブレット注文)の導入
- 配膳ロボットの導入
小売業
- POSレジの導入・刷新
- セルフレジの導入
- 在庫管理システムの導入
介護・医療
- 介護用リフトの導入
- 電子カルテシステムの導入
- 見守りセンサーの導入
製造業・その他
- 生産工程を効率化する機械設備の導入
- 業務用PCやタブレット端末(業務改善目的のもの)
- コンサルティング費用(業務フロー改善など)
- 人材育成・研修費用
ただし、単なる乗用車や汎用PC(業務改善に直接関係しないもの)は対象外となりますのでご注意ください。
申請の流れ
業務改善助成金の申請は、以下のステップで進めます。
- 交付申請書の作成・提出(設備投資の計画書・賃金引上げ計画書を添付)→ 都道府県労働局に提出
- 交付決定の通知を受ける(審査が通ればOK。交付決定前に設備を購入してしまうと対象外になるので注意!)
- 設備の導入・賃金の引き上げを実施
- 実績報告書の提出(設備導入の領収書・賃金台帳などを添付)
- 助成金の受け取り
最大の注意点は、必ず「交付決定後」に設備を購入することです。先に購入してしまうと、助成の対象にならないため、計画的に進めることが重要です。
令和8年度(2026年度)の主な変更点
2026年度(令和8年度)の業務改善助成金では、以下の変更が予定されています。
- 申請受付開始が9月1日からに変更(従来より遅い開始)
- 申請期限は「地域別最低賃金の発効日前日」または「11月末」の早い方
- 賃金引上げコースが3コースに再編される見込み
- 助成率の区分が1,050円を基準に見直し予定
毎年制度の詳細が変更されるため、申請前には必ず最新の厚生労働省の案内を確認するようにしてください。
まとめ:賃上げをお考えの中小企業は活用必須の制度です
業務改善助成金のポイントをまとめます。
- 事業場内最低賃金を30円以上引き上げ、設備投資を行うと最大600万円が支給
- 助成率は最大90%(低賃金事業場ほど手厚い補助)
- POSシステム・調理機器・介護機器など幅広い設備が対象
- 交付決定後に設備を購入することが必須条件
- 2026年度は申請開始が9月からに変更予定
最低賃金の引き上げは避けられない流れですが、業務改善助成金をうまく活用することで、設備投資・生産性向上・賃上げを同時に実現できます。
申請手続きやご不明な点がある場合は、社会保険労務士にご相談ください。当事務所でも申請サポートを承っております。お気軽にお問い合わせください。

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